未成年の子どもが暴力! 小中学生でも暴行罪や傷害罪で逮捕されるか

2024年04月16日
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未成年の子どもが暴力! 小中学生でも暴行罪や傷害罪で逮捕されるか

福岡県が公表する「令和4年度公立小・中学校の生徒指導上の諸課題の現状について」によると、令和4年度に公立の小学校で起きた暴力行為件数は869件、中学校は865件あったようです。

全国と比較すると少ない傾向があるものの、わが子が学校で暴力事件を起こしたという報告を受けたら、親としてはどうしたらよいのかわからず戸惑われることでしょう。結論から言えば、14歳未満の未成年の子どもであれば、逮捕という措置は取られません。

では、小中学生など未成年の子どもが暴力事件を起こしたときどのような対応がとられるのか、逮捕されるのかどうかから手続きの流れについて、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、暴行罪に該当する具体例とは

暴行罪は、他人に暴行を加えた時点で成立する犯罪です。刑法208条に定められていて、ここで示す「暴行」とは、「他人に対する不法な有形力の行使」を指します。

具体的には、ケンカなどで他人を殴ったり蹴ったりする行為のほか、髪を切る、水をかける、フラッシュなどによる目くらましや、石を投げる(当たらなくても)などの行為も「暴行」に該当するとみなされたケースもあります

なお暴行罪は、「暴行を加えても被害者がケガを負わなかった」場合のみ成立します。
暴行を加えてケガを負った場合は「傷害」罪となりますし、死亡させてしまった場合は、傷害致死罪という重大な犯罪に該当してしまいます。この場合、「ケガを負わせるつもりはなかった」と弁明しても認められません。

14歳以上の未成年者が暴行罪にあたる行為をしたケースでは、基本的に成人と同じように暴行罪として逮捕されます。未成年者ですから、逮捕にあたって考慮される要素がありますが、刑事事件として捜査を受ける点に変わりはありません。子ども同士のケンカだから……では済まされないのです。
もし、子どもがだれかに暴力をふるったとして警察から連絡が来たら、弁護士に相談することをおすすめします。

2、暴行罪の刑罰と未成年者の関係は?

暴行罪の具体的な刑罰についても、刑法第208条で定められています。
成人している者が暴行罪に問われたとき、状況に応じて以下のいずれかの刑罰に処せられることになります。

  • 懲役(ちょうえき):2年以下の間、刑務所で服役する
  • 罰金(ばっきん):1万円以上、30万円以下の罰金を払う
  • 拘留(こうりゅう):1日から30日の間、拘置所などで拘束される。
  • 科料(かりょう):1円から1万円以下の罰金を支払う


暴行行為といっても、口論の末カッとなってケンカとなった事件から、道ですれ違った人を殴ったなど、行為態様が異なります。何度も暴行行為によって、警察で捜査を受けているケースや、行為の悪質度が高いと判断されたときは、量刑が重くなります。

14歳以上の未成年者が、刑法犯に該当する事件の「被疑者」となったときは、「少年事件」として捜査の対象となります。しかし少年事件では、捜査は行われますが、原則的には加害者となった子どもの更生を主目的とした対策が採られていきます。
つまり、殺人などの凶悪事件でない限り、最終的に刑罰が下されることはほとんどないと考えてよいでしょう

ただし、「処分」という形で、家庭裁判所の裁判官によって、当事者が更生するためにもっとも効果的な結論が下されることになります。

3、暴行罪の証拠となるもの

暴行行為は、公道などオープンな場所で行われるケースもありますし、自室や学校の教室など、プライベートな場所で行われるケースもあります。
ただし、ケガをしていないことが第1条件となるため、診断書などの「暴行を加えられた証拠」が残るケースはほぼありません。目撃者の証言、被害者の証言などの状況証拠をもとに、暴行罪が認定されるのが一般的です。
防犯カメラなど、暴行を加えている姿が映りこんだ動画や写真などは重要な証拠となります。

また、冒頭の例のように、近年スマートフォンのカメラ機能の向上により、さっと取り出して撮影できるようになったため、それらが証拠となるケースも多くなりつつあります。直接の被害者ではなくても、暴行行為を目撃したり、現場に居合わせたりした人が撮影することが可能となっているためです。

4、暴行罪で逮捕されたあとのプロセスは?

暴行罪で未成年の子どもが逮捕されてしまったあと、日常生活に戻るまでは、どのようなプロセスをたどることになるのかについて解説します。

  1. (1)未成年でも逮捕されるとき

    前述しましたが、基本的に、未成年者は逮捕されても処罰を目的に、裁かれることはほとんどありません。しかし、暴行のように刑法に触れる行動をすれば、逮捕されることもあります。

    逮捕されるタイミングは、状況によって異なります。
    殺人などの凶悪事件ではない限り、犯行中や犯行直後に「現行犯逮捕」されるか、犯行の後日、証拠がそろえられてから逮捕状が提示されて逮捕される「通常逮捕」のいずれかとなるでしょう。

  2. (2)親でも面会できない

    逮捕されて、警察で取り調べを受けている期間中は、原則として保護者でも面会が禁じられます。もちろん、本人の友人知人と連絡を取ることもできません。

    そんな中、逮捕された子どもと会って話をする「接見」を自由に行えるのは、依頼された弁護士のみとなります。

    保護者が弁護士を依頼することによって、法的なアドバイスを受けることや、弁護士を介して家族の思いを伝えてもらうことができます。
    暴行を加えた当人とはいえ、見知らぬ大人に囲まれて事件について問われ続けるわけですから、不安でいっぱいになっていることでしょう。弁護士の存在が、子どもの心の支えとなるはずです

  3. (3)刑事手続きは成人の場合とほぼ同じ

    暴行の疑いで被疑者を逮捕した警察は、捜査を通じて48時間以内に検察に事件と被疑者の身柄を送る「送致」をするか、家庭裁判所に送致するかどうかを検討します。

    もし検察に送致されたときは、検察が、引き続き捜査のために身柄を拘束する「勾留(こうりゅう)」を行うかどうかを、24時間以内に決定します。勾留が必要だと判断した場合は裁判所へ「勾留請求」することも、勾留が認められた場合は最大20日間身柄を拘束され続けることになる点も、成人と同じプロセスです。

    しかし、成人の場合は捜査の目的が刑罰を決めることにあることに反して、少年事件における最終目的は、教育的観点から指導するための処分を決めることにあります。未成年者は、犯罪行為を悪いことだときちんと認識しきれていないため、罪を犯したと考えられるためです。

    そこで、検察による捜査が終わると、成人による刑事事件では起訴か不起訴が決定しますが、少年事件では、事件内容と被疑者の身柄が家庭裁判所へ送致されることになります

    家庭裁判所では、捜査結果や家庭環境、本人の状態などが調査されます。
    最終的には「審判」を行う必要性が判断され、結論を出します。「審判不開始」となれば、審判を行う必要なしと判断したことになり、その時点で日常に戻ることができます

  4. (4)家庭裁判所の審判手続き

    審判とは、裁判官と調査官、弁護士が協力し合って、本人にとってもっともよい道を考え、決めていく手続きと考えてください。便宜上、決定された内容は「処分」と呼ばれますが、断罪する場所でも、本人を責めたてる場所でもありません。

    審判では、未成年者の更生や矯正の観点から、どのような「処分」が妥当か検討していきます。調査官から保護者に対して聞き取りがあったり、被害者が事件に対して意見を述べる機会が設けられたりします。
    付添人として弁護士を依頼していれば、担当弁護士が意見を述べる機会が与えられます。子ども本人の主張を適切に反映させることができるでしょう

  5. (5)未成年者が受ける処罰とは

    審判を経て下される処分は以下のとおりです。

    • 不処分
    • 非行事実がない、もしくは保護処分を検討する必要がないと判断。

    • 保護処分決定
    • 少年院・児童支援施設・児童養護施設などに送致すること。少年院送致の場合は、身柄は引き続き拘束されるが、その他施設では開放施設で生活するよう判断。

    • 都道府県または児童相談所長送致
    • 18歳未満の子どもが対象。家庭環境に問題があると判断された際などに受ける判断。

    • 保護観察処分
    • 月に1、2回保護司と面談を行いつつ、通常の生活へ戻る。

    • 検察官送致(逆送)
    • 殺人など刑事事件として起訴して、罪を裁く必要があると判断。前科がつく可能性がある。


    犯した罪の内容はもちろん、個々の性格や事件の内容、家庭環境などによっても処分が大きく異なります。

5、暴行罪で逮捕された子どものために保護者ができること

前述のとおり、未成年者の刑事事件に関する手続きは、基本的には少年法に基づき、家庭裁判所の審判手続きを経て処分が決定されます。繰り返しになりますが、もっとも重要視されるのは、子どもの更生です。

罪を犯した子どもが更生するためにも、保護者としては、いち早く自由の身にしてあげたいと考えるでしょう。その気持ちはとても理解できます。
しかし、保護者だけが行動してできることについては、実のところあまり多くはありません

  1. (1)被害者との示談を早期に成立させる

    刑事事件において、警察や検察は、被害者との示談が成立しているかどうかを重視します。示談が成立していれば、早期に身柄拘束から解放されたり、起訴を回避したりする可能性が高まるのです。もし、あなたの子どもが逆送され、起訴されたケースであれば、同様の期待ができるでしょう。

    ただし、更生が目的であることから、示談が成立したとしても早期に釈放されるケースは多くはありません。それでも、家庭裁判所で行われる審判手続きで、被害者が事件に対して事件を述べる機会が与えられています。よって、被害者感情は処分内容を左右する要因のひとつとなっていることがわかるでしょう。

    被害者と示談を早期に成立させることは、少年事件においても重大なポイントになります。ただし、加害者の保護者が示談交渉を行っても、事態がこじれてしまうケースは少なくありません。スムーズな示談成立を目指すのであれば、少年事件や示談の経験が豊富な弁護士に頼ることをおすすめします。

  2. (2)弁護士を依頼する

    少年事件において、弁護士ができることは、示談だけではありません。
    以下のシーンで力になり、心の支えになることができます。

    • 捜査中
    • 特に勾留が決まるまでは、原則として弁護士以外との面会が禁じられることとから、本人と会話し、励ましたり更生の決意を固めるようサポートしたりできます
      また、検察に対して意見書を提出するなどの弁護活動を通じ、早期釈放を求めることも可能です。

    • 家庭裁判所に送られてから
    • 依頼を受けた弁護士は、少年の付添人になることができます。
      鑑別所や少年院に送られないよう、裁判官などに意見書を提出します

    • 審判を受けるとき
    • 反省していることを伝えるためにはどうしたらいいのか、本人にアドバイスを継続して行い、更生しようとする本人を精神面でサポートします。
      また、本人の意見を審判の内容に反映させることができます。

6、まとめ

小中学生など未成年者が暴力をふるうと少年事件として扱われます。捜査そのものは成人が起こした刑事事件とほぼ変わらないプロセスをたどりますが、最終的に下される処分などに異なる部分が多々あります。また、一般的な刑事事件同様、被害者との示談成立は重大な要素となるでしょう。

ただし、たとえ加害者と被害者が子ども同士だろうと、被害者が大人だろうと、当事者同士では、示談交渉をスムーズに行うことは難しくなります。逆の立場であれば、どうだろうかと考えれば、ご理解いただけるかもしれません。

しかし、本人同士の示談交渉がうまくいかなくても、第三者の弁護士が間に入ることであっさり示談が成立するケースは少なくありません。また、弁護士を依頼することで示談交渉を代理で行うだけでなく、逮捕されてしまった本人のサポートを行えます。きっと、心身共に力強い味方となることでしょう。

未成年の子どもが暴行罪で逮捕されてしまってお困りなら、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスまでご連絡ください。少年事件、刑事事件の対応経験が豊富な福岡オフィスの弁護士が、力を尽くします。

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