もしも家族が痴漢の再犯で逮捕されたら!? 逮捕後の流れを福岡市の弁護士が解説
- 性・風俗事件
- 家族
- 痴漢
- 再犯
夫や息子が痴漢容疑で逮捕されたとき、妻や母は動揺で頭が真っ白になってしまうことでしょう。
ましてやそれが再犯の場合は、「いったい前回の反省はなんだったのか……」と裏切られたような気持ちでいっぱいになるかもしれません。また同時に、「前回逮捕のときよりも量刑が重くなるのか、息子が未成年の場合はどうなるのか、家族として何をすればよいのかなど、不安も大きくなると思います。
今回のコラムでは、夫や息子が痴漢の再犯で逮捕された場合の量刑や家族がおこなうべきことなどについて、福岡市の弁護士が解説します。
1、痴漢再犯における量刑の重さはどうなるのか
再犯の場合に量刑が重くなるかについては、事件内容や前回の量刑、状況などによっても変わってきます。
以下で、再犯の量刑の重さがどうなるのかについて見ていきましょう。
-
(1)痴漢の罰則は?
まずは痴漢で逮捕された場合の罰則を確認します。
福岡県の迷惑行為防止条例違反による痴漢の罰則は、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められており、常習の場合には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」となっています。
痴漢でも悪質性が高いものは迷惑防止条例違反ではなく強制わいせつ罪となり、「6ヶ月以上10年以下の懲役」と、懲役刑のみの重い量刑になります。
どちらの罪になるかは個別の状況によって判断されるものの、おおまかには以下のような基準です。- 強制わいせつ:暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすること。 例えば、服の中に無理やり手を入れて直接性器を触るなどです。
- 迷惑防止条例違反:公共の場所で人を著しく羞恥させる行為。 例えば、電車やバスの中で服の上からお尻や胸などを触るなどです。
ただし、被害者が13未満の場合は、わいせつな行為をするだけで強制わいせつ罪が成立します。
なお、刑法第57条では「再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とする」と定められていますので、再犯の場合は前回の痴漢より刑罰が重くなる可能性が高まります。
-
(2)前回痴漢で逮捕されたが不起訴となっているケース
以前に痴漢容疑で逮捕されていても、不起訴となっていれば、裁判も開かれず、前科もつくことなく釈放されていたかと思います。
そのため、今回痴漢容疑で逮捕されても再犯として扱われるわけではありません。前回の痴漢で不起訴処分を得た意味は大きいといえます。
ただし次の項で解説するように、今回の量刑に影響を与える可能性はあります。
一方、前科と似た言葉に「前歴」というものがあります。
逮捕や捜査対象となった事実が捜査機関のデータベースに残ります。履歴が消えることはありませんが、前科ほどの重みはなく、再度痴漢行為を犯しても、直ちに実刑となる可能性は低いでしょう。
しかし、同種の前歴があることを裁判所が問題視し、判決に影響を与える可能性はあります。 -
(3)不起訴の内容によって影響が異なる
不起訴にも種類があり、前回の不起訴処分が「罪とならず」「嫌疑なし」といった理由でそもそも痴漢をしていなければ、今回の痴漢は完全に初犯ということになります。
ただし、前回の痴漢で示談が成立して不起訴処分を得たようなケースでは、痴漢の事実自体は認められているため、今回の量刑に影響を与える可能性はあります。
前回不起訴だからといって、今回の痴漢が必ずしも軽い量刑になるとは限らないということです。 -
(4)前回が執行猶予つき判決や実刑のケース
前回おこなった痴漢で執行猶予つき判決や実刑判決を受けており、再度痴漢をおこなった場合はどうでしょうか。
執行猶予期間中の再犯では、今回の痴漢で禁錮以上の刑となれば前回の執行猶予が取り消されるとともに、今回の痴漢に対しての処罰も受けることになります。
今回の痴漢で罰金刑となった場合でも、前回の執行猶予が取り消される可能性があります。
また、前回実刑判決だった場合は、刑期が終わっていたとしても、更生の見込みが低いと判断され、今回の刑が重くなる可能性が高まります。 -
(5)未成年が痴漢再犯で逮捕されたケース
未成年が痴漢の再犯で逮捕された場合でも、14歳以上であれば逮捕から勾留までの基本的な流れは成人と大差はありません。
ただし、留置場ではなく鑑別所へ送られることも多く、最終的な処分は家庭裁判所の判断にゆだねられます。
未成年は処罰よりも、本人の矯正、更生が目的とされていますが、再犯となれば更生の見込みが低いとされ、以前より重い処分(少年院送致など)となる可能性はでてきます。
2、加害者の家族としておこなうべきことや、知っておくべきこと
夫や息子が痴漢で逮捕されたら、加害者の家族として何をすべきでしょうか。
特に再犯の場合には、本人の更生のためにも家族が担う役割は非常に大きいといえます。
以下に、家族としておこなうべきこと、また知っておくべきことをいくつか挙げてみます。
-
(1)弁護士に相談して早期の身柄釈放を目指す
痴漢事件では、犯罪行為を否認していたり、逃亡や証拠隠滅の恐れがあったりすれば長期間にわたって身柄が拘束されることもあます。身体拘束が長期間にわたれば日常生活への影響も大きいため(解雇、退学など)、早期の身柄釈放を目指すことが重要です。
そのために、逮捕後はなるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すると以下のような点で有利になります。
- 接見禁止中でも、弁護士を通じて本人の様子や状況を確認できる
- 勾留請求をしないようにするため、または勾留請求を却下するために動いてもらえる
- 被害者との示談交渉がしやすくなる
- 身柄の解放に向けて家族ができることを相談できる
- 依存症対策について相談できる
-
(2)国選弁護士、当番弁護士、私選弁護士について
弁護士にも国選弁護士、当番弁護士、私選弁護士の3つの選択肢があります。
① 国選弁護士
痴漢で国選弁護士を選任するには、私選弁護士に依頼するお金がない(現金預金などが50万円以下)ことや、強制わいせつ罪で勾留された、同罪で起訴されたなどの条件があります。
② 当番弁護士
当番弁護士は逮捕後1回に限り利用できる制度で、資産状況なども関係なく、家族が依頼することもできます。ただし、あくまでも逮捕後の初期対応や今後の見込みを相談できる相手であり、依頼しない限り今後の弁護や示談交渉などまではしてもらえません。
③ 私選弁護士
痴漢の再犯では、前回より量刑が重くなる可能性が高いことから、逮捕から解決まで継続して弁護してもらったり、相談に乗ってもらったりできるように、条件や対応面での制約がない、私選弁護士への依頼を検討するメリットは大きいといえます。 -
(3)被害者女性との示談
痴漢事件においては、被害者との示談成立が不起訴処分を得るための大きなポイントとなりますが、再犯の場合は常習性が認められ、示談が成立していても起訴される可能性が極めて高くなります。
被害者は再犯であることを警察などから聞いていることが多いため、示談の金額も大きくなりやすいといえるでしょう。
しかし、示談の成立があれば再犯でも情状を考慮されて量刑に影響を与える可能性はありますので、家族が弁護士を通じて示談交渉することは大きな意味があります。 -
(4)再犯なら依存症の可能性も。治療方法は?
痴漢は再犯率が高い犯罪であることでも知られており、中には痴漢が悪いことだと分かっていながらしてしまう、依存症の方もいます。
依存症の場合は罰を受けても再犯する可能性が高いため、根本的な再犯防止策を講じる必要があります。具体的には、医師のカウンセリングを受ける、依存症の自助グループや施設に入会するといった方法が考えられます。
福岡県には依存症治療ができる病院や自助グループ、施設などもありますし、保健所や精神保健福祉センターなどで相談することも可能です。
痴漢事件の対応経験が豊富な弁護士であれば、治療施設や相談先、監督方法についてのアドバイスをもらうこともできます。
3、まとめ
今回は、痴漢再犯で逮捕された場合の量刑や家族がおこなうべきことなどについてご紹介しました。
痴漢の再犯では、初犯と同様に、まずは早期の身柄釈放を目指して本人の生活を守ることがポイントといえます。さらに、2度と同じ過ちをしないために再犯防止対策を講じることが大切です。
痴漢再犯から更生するためには家族の協力が必要不可欠となりますが、具体的に何をすべきか分からないことも多いかもしれません。
夫や息子など、ご家族が痴漢を再犯してしまい逮捕された場合には、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスまでご相談ください。大切なご家族の弁護活動をはじめ、再犯防止に向けた支援など、親身になって対応いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています