身内が投資詐欺で逮捕されたとき、家族がすべきこととは?

2019年09月20日
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身内が投資詐欺で逮捕されたとき、家族がすべきこととは?

平成31年3月、全国規模で投資詐欺を行った詐欺グループの首謀者らが逮捕されました。架空の投資話で合計460億円も集めていた容疑で、逮捕者の中には福岡在住の男性も含まれていたと報道されています。

投資詐欺が発覚し逮捕されて有罪になると、重い処罰を受ける可能性があります。そこで今回は、投資詐欺の概要、対応の方法、弁護士の活動などを、福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、投資詐欺とは何か

まずは、投資詐欺の概要についてわかりやすく説明します。

  1. (1)投資詐欺の概要と主な手口

    投資詐欺とは、「誰でも絶対に利益を出せる」などと言い切って投資のための資金を募集する詐欺行為を指します。
    そもそも、投資にはリスクがあるものです。単純に一般的な投資商品をすすめて、損をさせてしまった、元本割れしてしまったとしても「投資詐欺」にはなりません。

    たとえば、実際に運用する予定がないのに「年利10%」などとかたる行為が投資詐欺とみなされます。
    そのほかにも以下のような行為が投資詐欺の手口とされています。

    投資詐欺の手口の例

    • 架空の事業の投資話を持ちかけ、出資させる
    • 高額なセミナーに勧誘し、お金を支払わせる
    • 架空の最先端技術への投資を持ちかけ、出資させる
    • ギャンブルの必ずもうかる方法だと偽り、その情報を販売する
  2. (2)投資詐欺が詐欺罪として成立するための要件

    刑法には投資詐欺という罪名は存在しません。
    投資詐欺で逮捕されるときには、刑法第246条において「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と規定されている「詐欺罪」が適用されます。

    詐欺罪が成立するためには以下の要件を満たす必要があります。

    詐欺罪が成立する要件

    • 故意にだますこと
    • だまされたことによって、被害者が真実と異なる認識をすること
    • だまされたことでお金や不動産などの財産を渡すこと
    • 加害者が財産を手にすること


    簡単に言うと、「だまして財産などを自分のものにする」と詐欺罪が成立し、逮捕される可能性があります。

    なお、詐欺罪は罰金刑の設定がありません
    したがって、有罪になり執行猶予付き判決が下されない限り、刑務所で服役しなければなりません

    また、もしだました後に財産を受け取ることができなくても、詐欺未遂罪として10年以下の懲役に処される可能性があります。

  3. (3)組織的な投資詐欺は厳罰化の傾向に

    投資詐欺やオレオレ詐欺に代表されるような「特殊詐欺」は近年増加しており、高齢者が被害者の中心であることから、厳罰化の傾向にあります。
    中でも、組織的に巨額の費用をだまし取る投資詐欺は、厳しく罰せられるケースが多いでしょう。

    また、組織的に詐欺を行った場合は、詐欺罪ではなく「組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律第3条第1項第13号」によって「1年以上の有期懲役」に処される可能性があります。

    さらに、複数の詐欺をはたらいた場合は「併合罪」といって、懲役が1.5倍になる措置がとられます。過去に、詐欺罪で有罪となっていた場合は、刑期が2倍になってしまう可能性もあるでしょう。

2、投資詐欺で逮捕された場合の流れと弁護士に相談するメリット

投資詐欺で逮捕された場合の流れと弁護士に相談した際に受けられる恩恵について解説します。
ご家族が逮捕されて、この後どうなるのか不安なときは、逮捕後の処遇を確認してください。

  1. (1)逮捕後72時間は家族も面会できない

    逮捕後は、警察署内の留置所に身柄が拘束されて、捜査官による取り調べを受けます。警察での取り調べは最長48時間です。その後、嫌疑が晴れなければ検察に事件と身柄が引き渡され、検察官によって取り調べが行われます。検察による取り調べの上限は24時間です。

    この期間中は家族も面会することはできないことが多いです
    つまり、72時間も社会と断絶した状態で取り調べを受けることになるのです。本人は非常に孤独になります。閉ざされた空間で厳しい取り調べが行われるため、不利な自白をしてしまうことも少なくありません。

    ところが、弁護士に弁護を依頼すると、本人が求めるときにいつでも「接見」が可能になります。
    取り調べの進行状況や本人の状況を確認しながら、今後の対応について随時アドバイスを受けることができますので、不利な証言や自白をするリスクが低くなります。

  2. (2)最長20日間の勾留と勾留回避のための弁護

    警察から送致を受けた検察官は、本人の言い分や状況などを加味した上で24時間以内に勾留するかどうかを決定します。 「勾留(こうりゅう)」とは、留置所や拘置所に身柄を拘束したまま取り調べを行う処置のことです。「逃亡の可能性」や「証拠隠滅の恐れ」がある際に、この措置が適用されます。組織的な詐欺事件で、共犯などが捕まっていない場合は勾留されてしまう可能性が高いでしょう。

    検察官が、勾留が必要と判断すると、裁判所に対して勾留請求を行います。
    勾留は、裁判所の許可がなければ行うことはできません。
    しかし、勾留が認められれば、逮捕から1度も自宅に帰れないまま「勾留」されてしまいます

    勾留は通常は10日間、必要に応じてさらに10日延長されます。つまり、最大20日間も身柄が拘束され続けるのです。
    逮捕からカウントすると最大23日も自宅に帰れませんので、仕事や学校へ影響が出てしまう可能性は否定できないでしょう

    しかし、早い段階で弁護士に依頼することで検察官や裁判官に向けて「勾留回避」のための弁護活動を行うことができます。

    逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを客観的資料に基づき主張することで、身柄拘束を伴わない「在宅事件扱い」とできる可能性があるのです。

    在宅事件扱いになれば、会社や学校を休み続ける必要はありません
    警察や検察の求めに応じて、捜査や取り調べに協力することになり、社会的な影響を最小限に抑えることができます。

  3. (3)起訴不起訴の判断、不起訴に持ち込むための示談交渉

    勾留された場合はもちろん、在宅事件扱いになった場合も、捜査機関による所定の捜査が完了すると「起訴するかどうか」が判断されます。
    起訴されると刑事裁判が開かれ、不起訴になれば刑事裁判は開かれず前科もつかずに身柄が解放されます

    日本の刑事裁判での有罪率は約99%以上ともいわれています。
    つまり、起訴されたらほぼ有罪になるといってよいでしょう。
    特に詐欺罪の場合は、罰金刑の設定がなく懲役刑のみなので、執行猶予がつかなければ刑務所に服役しなければなりません。

    服役を避けるためには、詐欺被害者との示談成立が非常に重要となります。示談とは、当事者同士で話し合いを行うことで事件を解決しようとすることを指します。

    刑事事件における示談では、被害者に対して謝罪とともに賠償金を支払うことによって、民事責任を果たすとともに、被害者に許してもらうことを目指します。
    示談が成立し、被害者には処罰感情がないと捜査機関へ伝えることができれば、情状が酌量されて減刑される可能性が生まれます。

    なお、詐欺罪は親告罪ではないため、被害届を取り下げてもらったとしても必ず不起訴にできるとは限りません

    しかし、示談が成立していない場合と比較すると、起訴を回避できる可能性は高まります。特に勾留されている場合は、逮捕から23日以内に示談を完了させなければならないため、時間との戦いです。

    不当に重い処罰を受けてしまう事態を避けるためにも、逮捕後早い段階で弁護士に依頼して、被害者との示談を急ぐことをおすすめします。

  4. (4)裁判における弁護

    投資詐欺を行ったことが事実であれば、刑事裁判では非常に高い確率で有罪となるでしょう。そのため、刑事裁判では情状酌量を受けるための弁護が必要不可欠となります。

    まず、詐欺罪では懲役刑のみなので、服役を回避するためには執行猶予付き判決を目指さなければなりません。
    しかし、執行猶予付き判決を勝ち取るための条件は「懲役3年以下の判決であること」とされています。

    そのためにも、弁護士による弁護が必須です。
    本人が反省していること、再犯しないためのサポート体制が整っていること、犯行に及んだやむを得ない事情などを主張しなければなりません。

    もし、執行猶予付き判決が下されたら、執行猶予期間中に何らかの犯罪で逮捕されて有罪にならない限り、刑務所に服役せずに済みます。家族や本人にとっても、投資詐欺で逮捕された影響を最小限に抑えることができるでしょう。

3、投資詐欺で身内が逮捕された場合にとるべき行動

あなたの身内が詐欺罪で逮捕されたとき、ご家族ができることはさほど多くはありません。すみやかに刑事事件を取り扱っている弁護士に相談してください。早期に依頼を受ければ、勾留や起訴の回避を目指す、弁護活動に着手することができるためです。

逮捕された本人は身柄が拘束されているため、事件化前から弁護士に相談していない限り、弁護士を選ぶことができません。逮捕されると当番弁護士を呼ぶことはできますが、弁護活動をしてもらうためにはやはり依頼が必要です。

しかし、名指しできるわけではないため、刑事事件が専門外の弁護士がきてしまう可能性があります。弁護士費用を支払うのであれば、刑事事件を取り扱っている弁護士に依頼したほうがよいでしょう。きちんと刑事事件を専門としている弁護士に依頼するためには、家族のサポートが重要です。

投資詐欺であなたの身内が逮捕されたら、まずは弁護士を探してなるべく早く接見してもらい、勾留回避のための弁護活動と、示談交渉を同時並行で進めてもらうことをおすすめします。

4、まとめ

投資詐欺をはたらき有罪になれば、10年の懲役に処される可能性があります。しかし、早急に弁護士に依頼することによって、長期にわたる身柄拘束や過剰に重い処罰を受けないよう、手を尽くすことが可能です。

家族は「逮捕されてしまった本人のかわりに弁護士を選任する」というサポートを行うことをおすすめします

ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスでは、早急に投資詐欺を始めとした刑事事件の弁護活動を行います。
刑事事件は時間との戦いなので、なるべく早くご連絡ください。

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