アフィリエイターが警察などの取り締まりを受けたらすべきこと

2022年01月11日
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アフィリエイターが警察などの取り締まりを受けたらすべきこと

令和2年7月、大阪府警が福岡市内の健康食品通販会社の従業員や広告代理店の関係者ら6人を逮捕したと報じられました。同社が販売している健康食品について、医薬品・薬剤師の資格がないにもかかわらず広告収入を得る「アフィリエイト広告」で、まるで第三者が語ったような記事広告を掲載・宣伝していた容疑での逮捕です。

本コラムでは、アフィリエイトに取り組むアフィリエイターが警察の取り締まりを受けるケースや問われるおそれのある罪、警察から「事情を聞きたい」という連絡がきた場合に取るべき対応について、福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、アフィリエイターが取り締まりを受けるケース

個人の収入増加を目指して副業として「アフィリエイト」を始める方が増えています。
一方で、不正事案も多く消費者被害につながるケースも少なくないため、令和2年12月には消費者庁が広告主・広告作成者・仲介会社を対象とした大規模の実態調査に乗り出すと報じられました。

アフィリエイトの仕組みやアフィリエイターが取り締まりを受ける典型的なケースを確認しておきましょう。

  1. (1)アフィリエイト・アフィリエイターとは?

    「アフィリエイト」とは、インターネット広告手法のひとつです。
    成果報酬型広告とも呼ばれており、自身のサイトやブログに他社商品・サービスの広告を掲載することで、その広告を経由した購入や申し込みに応じて売り上げの一部が報酬として支払われます。

    広告主との直接契約も可能ですが、多くのユーザーが「ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)」と呼ばれる仲介業者を利用しています。
    アフィリエイトに特化したASPのほかにも、アマゾン・楽天といった通販サイトが提供するプログラムも存在しており、ユーザーの間では「ASP選び」も重要となっているようです。

    アフィリエイト広告を自身のサイトやブログに掲載して報酬を得る人のことを「アフィリエイター」と呼びます。副業がブームとなるなかで、自宅にいながらパソコンなどの端末とインターネットさえあればチャレンジできるアフィリエイトにも注目が集まっているようです。詳細な実数は定かではありませんが、消費者庁の調査では400~500万人の個人アフィリエイターが存在しており、市場規模も3000億円に拡大していると報道されています。

    ただし、アフィリエイトは各業界の広告規制の影響を受けるほか、インターネットの利用におけるルールを守らないと逮捕されてしまう危険もあります業界の規制や法律の知識をもたないままアフィリエイトに取り組んでいるアフィリエイターも多いので、消費者トラブルにつながる事例も急増しています

    違法行為をはたらいたアフィリエイターが逮捕・摘発される実例もあるので注意が必要です。

  2. (2)広告規制を設ける法律に違反したケース

    商品やサービスのなかには、無制限な広告を防ぐために法律が一定の規制を設けられているものがあります。

    代表的なものが医薬品や健康食品などです。国民生活センターがまとめている商品・役務等別相談件数によると、健康食品関連だけで令和2年中におよそ6万件ものトラブル相談が寄せられています。

    法律による広告規制に違反する行為は犯罪なので、捜査の対象となって逮捕・処罰される危険があります

  3. (3)消費者被害を発生させたケース

    誇大広告によって、消費者に商品・役務の内容が著しく優良であると誤認させるケースも少なくありません。

    特に個人の収入増大を目的としたアフィリエイトでASPを介している場合は、広告主による審査が行き届かないことも多いので、誇大広告による消費者被害につながる事例も多数です。

    消費者被害につながる不当な広告を表示した事業者が摘発されたケースもあります

  4. (4)他人の知的財産権を侵害したケース

    アフィリエイトを目的としたサイト・ブログのなかには、他社サイトの画像や文章を無断で掲載したり、検査データなどを無断転載したりしているケースがあるようです。

    他人の知的財産権を侵害する行為は、それぞれを保護する法律に反する犯罪であり、被害者からの申告を受けて摘発されるおそれがあります。実際に逮捕、送致を受けた実例は少なからず存在します。

2、アフィリエイターが問われるおそれのある罪

アフィリエイトを目的としたサイト・ブログに違法行為があった場合は、内容に応じた法律の適用を受けて罪に問われ、刑罰を受けるおそれがあります。

  1. (1)薬機法違反・健康増進法違反

    健康をうたう商品は、法律によって強い広告規制が設けられています。
    実際の効果や性能に反した誇大広告だけでなく、そもそも広告自体が禁じられているものもあるので要注意です

    ● 薬機法違反
    以前は「薬事法」と呼ばれていた法律で、正しくは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という名称です。医薬品や医薬部外品の効能・効果・性能などに虚偽または誇大な記事を広告・記述する行為は同法第66条の違反となります。また、未承認・未認証の医薬品などについては、虚偽・誇大な広告記事でなくても同法第68条の違反です。

    ● 健康増進法違反
    サプリメントなどの健康食品に関する広告ついて、著しく事実に相違する表示をし、または著しく人を誤認させるような表示をした場合は、健康増進法第65条1項「誇大表示の禁止」に違反します。

  2. (2)景品表示法違反

    景品表示法は、正しくは「不当景品類及び不当表示防止法」という名称の法律です。同法第5条では、商品や役務について、一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると示して不当に顧客を誘引する行為を禁じています。一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるからです。

    ただし、この規定は「自己の供給する商品または役務の取引」に限られています。問題となるのは、アフィリエイターが不当な広告の表示内容の決定にどのくらい関与していたのかです。

    たとえば、ASPを介して自身のサイト・ブログに不当な広告を掲載しても、広告の表示内容の決定には関与していないので、アフィリエイターは罪に問われません一方で、アフィリエイターと広告主が直接契約を交わし、共同して積極的に表示内容を決定したといったケースでは、アフィリエイターも罪に問われる危険があります

    とはいえ、アフィリエイターの存在がなければ不当表示が蔓延することはありません。この点について、令和3年3月には伊藤明子長官が記者会見で「消費者庁としても関心をもっている」とコメントしています。

    同月、消費者庁は消費者安全法にもとづいて消費者に対する「虚偽・誇大なアフィリエイト広告に関する注意喚起」を実施しました。アフィリエイターは法改正を含めて消費者庁の見解にも注意を払っておくべきでしょう

  3. (3)著作権侵害

    アフィリエイターが特に罪に問われやすいのが「著作権法」に違反する著作権侵害です。他社サイトに掲載されている画像や文章などを無断で転載した場合は、他人がもつ著作権を侵したことになるため処罰の対象となります

    素材の入手にかける時間や経費を惜しむと著作権の侵害につながりやすいといえるかもしれません。

3、不正アフィリエイト容疑は逮捕されるのか?

各種の法律に違反する不正アフィリエイト事案では、アフィリエイターが逮捕されてしまう危険があります。

  1. (1)逮捕の要件

    「逮捕」とは、犯罪の容疑をかけられている被疑者の身柄を拘束する強制処分のひとつです。日本国憲法第33条は、誰であっても現行犯として逮捕される場合を除き、裁判官が発付する逮捕状によらなければ逮捕されない旨を明記しています。これを「令状主義」といいます。

    「罪を犯せば逮捕される」という誤解が多いのですが、法律に定められている罪を犯したからといって、必ず逮捕されるわけではありません

    犯罪の捜査には「任意捜査の原則」が存在します。できる限り任意の方法によって捜査を進めて、任意の方法では捜査が遂げられない場合に限り強制捜査が許されるのです。

    犯罪の事実があったとしても、逮捕の要件を満たしていない場合は逮捕されず、在宅事件として捜査を受けることになるでしょう

  2. (2)逮捕されやすいケース

    不正アフィリエイト事案で逮捕されやすいのは、逃亡・証拠隠滅のおそれが高いケースです。

    • 「事情を聞きたい」という要請を拒否し、任意の事情聴取に応じない
    • 消費者庁など関係省庁からの行政指導に応じない
    • 証拠が明らかなのに、任意の事情聴取で犯行を否定している
    • 過去にも厳しい処分や多額の賠償をしており、重責を逃れようとする危険が高い
    • 甚大な消費者被害が発生しており、重責は免れられない状態である
    • アフィリエイターが積極的に虚偽・誇大広告に関与している など


    これらのケースでは、任意の在宅事件として捜査を遂げるのは難しいと判断されやすいため、逮捕による強制捜査が行われる可能性が高いでしょう。

  3. (3)逮捕されにくいケース

    たとえ不正アフィリエイト事案に関与していたことが事実でも、必ず逮捕されるわけではありません。

    • 任意の事情聴取に素直に応じている
    • 証拠品の提出にも応じており、証拠隠滅のおそれが低い
    • 不正があったことを素直に認めており、事実をありのまま供述している
    • すでに損害を与えた消費者との示談が成立しており、賠償を尽くしている など


    ただし、これらのケースにあたる場合でも、必ず逮捕を回避できるわけではないので注意が必要です。

    容疑をかけられている本人が「逃亡するつもりはない」「証拠はすべて提出した」と主張しても、捜査機関がこれを信用するとは限りません逮捕を回避するには、主張を裏付ける具体的な証拠を示す必要があります

    個人のアフィリエイターでは対応が難しいので、弁護士にサポートを依頼したほうが賢明でしょう。

4、警察から「事情を聞きたい」という連絡を受けたときの対処法

不正アフィリエイトに関与して警察から「事情を聞きたい」という連絡を受けた場合の正しい対処法を確認しておきましょう。

  1. (1)どのような容疑なのかをできるだけ詳しく教えてもらう

    警察からの連絡を受けた際は、まずどのような用件なのか、容疑をかけられているならどのサイト・ブログに関するものなのかといった情報を、できるだけ詳しく尋ねて教えてもらいましょう。

    事前にどのような容疑なのかを知っておくことで、事情聴取に先立って要点や証拠を整理できます

  2. (2)任意で出頭して逮捕を防ぐ

    警察からの出頭要請に応じないと「任意では取り調べができない」と判断されやすく、逮捕の危険を高めてしまいます。

    任意での出頭要請を受けている時点で素直に応じておけば、たとえ犯罪が成立する場合でも任意の在宅捜査として処理される可能性が高いでしょう。

  3. (3)弁護士に相談する

    警察からの出頭要請を受けたら、直ちにインターネットトラブルや刑事事件の解決実績が豊富な弁護士への相談をおすすめします。

    弁護士に相談すれば、アフィリエイト広告を掲載している自身のサイト・ブログに違法が存在するのか、逮捕される危険があるのかといった点を正確に確認できるでしょう。また、犯罪の事実がある場合は、逮捕の回避や処分の軽減を図るための弁護活動も依頼できます。

    出頭要請に応じる際には、前もって弁護士のアドバイスを受けておくことで積極的に供述すべき主張と積極的に供述する必要のない情報の仕分けも可能です

5、まとめ

アフィリエイトによる収益アップだけに気を取られていると、広告規制や知的財産保護に関する法律に違反してしまう危険があります。罪に問われて逮捕されるだけでなく、厳しい刑罰や多額の賠償責任を負うこともあるので注意が必要です。

アフィリエイターとして副収入を目指していたところ、突然警察から「事情を聞きたい」という連絡を受けた場合は、何らかの容疑をかけられているものと考えられます。直ちに弁護士に相談してアドバイスを受けたうえで対策を講じましょう。

不正アフィリエイトを疑われてしまい、逮捕や刑罰に不安を感じているなら、インターネットトラブルや刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 福岡オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています