家族が逮捕されたらどうすればいい? 逮捕後の流れや社会生活への影響について
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家族が逮捕されたらどうすればよいのでしょうか。福岡県警が公表するデータによれば、平成30年中の刑法犯の検挙件数は1万5114件、検挙人員は9906人となっており、年間1万人近くの人が検挙されていることがわかります。
これは任意同行や書類送検も含めた数なので実際に逮捕された人数はもう少し減りますが、それでも相当数の被逮捕者がいるといえるでしょう。何らかの容疑で逮捕されることは、必ずしも珍しくはありません。
今回は、家族が逮捕された場合の流れや社会生活上の影響などについて、福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、逮捕された人はどうなるのか
逮捕された人の境遇については、漠然と「牢屋(ろうや)に入れられる」といったイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、逮捕されたらどこで誰にどのような取り扱いをされるのか、またどのくらいで戻ってこられるのか、といった点についてご説明します。
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(1)逮捕と取り調べ
逮捕されると警察署内にある取調室で取り調べが行われます。ここでの身体拘束期間は丸2日間、つまり48時間を上限とするものです。
1日で取り調べが終わらなければ留置場に入れられ、そこで夜を明かすことになります。ひげそりや爪切りが可能で、冊数は限られますが書籍も持ち込みできます。運動や入浴は、不可能ではありませんが制限を受けます。
警察による取り調べで、無実と判明したり微罪処分とされたりして釈放されることもありますが、そうでなければ事件は検察へと送られます(送致)。
検察では丸1日、つまり24時間の期間内に取り調べが行われます。ここでは警察の取り調べも踏まえて、起訴(刑事裁判の提起)をすべきか否かが判断されます。
24時間以内に取り調べが終わらなければ、在宅事件扱いに切り替えて釈放されるか、勾留(身柄拘束)されます。 -
(2)勾留から起訴まで
検察での取り調べの結果、勾留が必要と判断されたのち裁判官による勾留決定がなされると、まずは10日間、延長されると最長20日間の勾留が行われます。検察での取り調べは起訴・不起訴を判断する重要なものであり、24時間以内に終わることはあまり多くありません。
そこで、多くの事件では被疑者の勾留、もしくは在宅事件扱いへ切り替えられることになります。なお、勾留は「住居不定」「証拠隠滅の可能性がある」「逃亡の危険性がある」などの理由がなければ行うことはできません。この時点で弁護士を依頼していれば、勾留をしないように働きかけることができます。
勾留が決定すると、拘置所又は警察署の留置場で寝泊まりしながら取り調べを受けることになります。また、勾留は必要性に応じて1回の延長が認められるため、身柄拘束期間は逮捕からの3日間を合わせ、最大で23日間まで延びる可能性があります。
取り調べの結果、起訴相当と判断されれば、刑事裁判手続きへと移ります。 このとき、被疑者は「被告人」と呼ばれるようになります。 -
(3)起訴されてから
起訴には、「公判請求」と「略式請求」があります。
① 略式請求
略式請求は、100万円以下の罰金、科料に相当する事件で、本人も罪を認めている場合に行われる裁判手続きです。法廷に立つ必要はなく、非公開の書類審査だけで処分が決定されます。
反論の機会はありませんが、2週間以内に処分内容が決定するため、早期に釈放されるという大きなメリットがあります。
ただし、必ず有罪になるため前科がつくことになります。
② 公判請求
他方、公判請求になると、公開された刑事裁判で罪を裁かれることになります。しかし、公判請求されたとしても、すぐに刑事裁判が行われるわけではありません。
裁判所の処理できる事件件数には限界があり、また取り調べも引き続き行われることがあるためです。通常、起訴から刑事裁判までは約1ヶ月かかります。
事件が複雑だったり規模が大きかったりすると、さらに待たされることもあります。その間、多くの被告人は勾留された状態が続くため、社会生活上の影響も大きなものとなるでしょう。その場合、保釈申請をして認められると帰宅が可能となります。
刑事裁判では、無罪の判決が出れば釈放となりますが、日本では統計上、起訴された場合の有罪率は99%であり、なかなか無罪とならないのが現実です。
裁判で有罪となれば、執行猶予とならない限り、懲役刑や罰金刑などが科されます。
2、今後の生活に対する逮捕や有罪判決の影響
逮捕されて身柄拘束期間が長引くと、社会生活上のさまざまな影響も生じてきます。
以下では、具体的にどのような問題が生じる可能性があるのかについて解説します。
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(1)会社や学校への影響
身柄拘束期間が長引くことで、会社員であれば無断欠勤、学生であれば無断欠席の状態が続くことになります。警察が勤務先や通学先に「この人物を逮捕しました」という連絡を入れることも少なく、逮捕されると証拠隠滅の防止などの理由で外部との連絡も自由にはできなくなるため、自分で連絡することもできないためです。
無断欠勤が続けば解雇される可能性が生じ、無断欠席が続けば留年や退学のおそれもあります。
ただし、家族などが連絡をとれれば、無断欠勤状態となる事態は防ぐことはできるでしょう。それでも、解雇や退学までには至らなかったとしても、逮捕された事実が知られると居づらくなり、結果として退職や自主退学を余儀なくされる可能性は否定できません。 -
(2)家庭への影響
仕事や学業だけでなく、たとえば幼い子どもの面倒を見ている親が逮捕され、身柄拘束が続く場合、子どもを親族や施設に預けなければならなくなります。
配偶者や義両親との関係の悪化や、親と引き離されることによる子どもの発育上の影響など、多くの問題が考えられます。 -
(3)有罪判決を受けた場合
逮捕された場合につくのが「前歴」、有罪判決を受けた場合につくのが「前科」です。
「前歴」については、法律上における制限などを受けることはなく悪影響は少ないといえますが、逮捕された事実を実名報道されてしまうと社会生活に影響を及ぼす可能性はあります。
他方、「前科」がついた場合は履歴書の賞罰欄に記載しなければなりません。就ける職業や渡航先にも一定の制限がかかるため、就職などが困難になる可能性が生じます。
加えて、事件や有罪判決を受けた事実が報道された場合には、周囲からの偏見や好奇の目にさらされることもあるでしょう。また、執行猶予がつかずに懲役刑を科された場合は、一定期間、刑事収容施設(刑務所など)にいかなければならず、経歴上も空白となります。
このように、逮捕や有罪判決による社会生活上の影響は大きなものと言えます。
3、逮捕されたら速やかに弁護士へ相談すべき理由とは
逮捕による影響は、主に身柄拘束期間が長引くことによって生じます。
そこで、弁護士は早期の身柄解放や不起訴処分の獲得に向けた活動を行います。
以下では、被疑者・被告人やその家族から依頼された弁護士の取り組みについてご説明します。
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(1)早期の身柄解放へ向けた活動
弁護士は、警察での取り調べ段階では微罪処分や在宅事件扱いとすることを求め、検察での取り調べ段階では勾留しないよう求め、起訴された場合は保釈請求をするなど、身柄の早期解放に向けた活動を行います。
警察・検察の取り調べに対する受け答えの仕方をアドバイスすることで、身柄拘束の必要性が少ないことを捜査機関側にアピールするといった間接的な活動も行います。 -
(2)不起訴処分獲得へ向けた活動
仮に罪となる事実があったとしても、被害者に処罰感情がないなど状況によっては不起訴と判断されることもあります。
弁護士は、罪の軽さや本人の反省などを訴え、不起訴処分の獲得を目指します。
特に、被害者がいる場合、被害者と示談して「宥恕(ゆうじょ)意思(許すという意思)」を示してもらうのもその一環です。身柄拘束をされている本人は示談交渉の場に赴けないため、弁護士に代行してもらうことになります。
不起訴となれば有罪判決も受けず、今後の生活への影響を最小限にとどめることができます。 -
(3)執行猶予に向けた活動
起訴されてしまったとしても、執行猶予処分に向けた主張を繰り広げることで、刑務所にいかないで済ませる状況を目指します。
ただし、前科がなく、下される刑罰が3年以下の懲役や禁錮、または50万円以下の罰金が言い渡される範囲の事件でなければ、執行猶予付き判決が出ることはありません。
そこで弁護士は、科される刑罰自体を少しでも重すぎるものとならないように弁論を行います。
4、まとめ
今回は逮捕された場合の流れや社会生活上の影響などについて説明しました。
逮捕され、取り調べに対して反抗的な態度をとるなどした場合、身柄拘束期間は長引くことが予想されます。その結果、会社や学校、家庭に対してさまざまな悪影響が及ぶ可能性は否定できないでしょう。
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