日常で起きうる大事件! 夫が大麻所持で逮捕されたとき、家族ができることは?
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福岡県福岡市のサイトには、大麻に関する注意喚起のページが存在します。大麻で逮捕されたというニュースを見聞きすることは、さほど珍しいことではないかもしれません。福岡県警博多署では、平成29年の1年間で過去最多となる186人を大麻事件で検挙していると公表しています。
「わが家にはありえない!」と思う方も多いはずです。大麻は海外では合法としている国もあることや、有害ではないという誤った知識が拡散されていることから、ほんの弾みで大麻に手を染める機会が増加しつつあるのかもしれません。
当然のことですが、いきなり夫が逮捕されたという連絡が警察から来たら、大変うろたえることでしょう。そのような事態に陥ったとき、家族はどのように対処していくべきなのでしょうか。家族ができることや重要なポイントを、福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、「大麻で逮捕される」とは?
平成29年の薬物事犯検挙人員は1万3542人の内、大麻事犯検挙人員は3008人と、警察庁が発表した「平成29年における組織犯罪の情勢」で明らかになっています。このうちのひとりが、もしもご家族だったら大変混乱することでしょう。
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(1)大麻での逮捕容疑となる種類
「大麻で逮捕」といっても、ひとつの容疑だけで逮捕されるわけではありません。大麻の事件においては、大麻取締法によって主に以下のように分けられています。
- 大麻の所持
- 大麻の譲渡
- 大麻の譲り受け
- 大麻の栽培
- 大麻の輸入
- 大麻の輸出
ただし、覚せい剤とは異なり、大麻使用のみでは処罰はされません。
これは麻を仕事として使用している方がいるための措置です。それでも、尿検査などの簡易鑑定で使用の有無は調べられることになるでしょう。 -
(2)大麻での逮捕のパターン
大麻で逮捕されるときは、主に「通常逮捕」と「現行犯逮捕」で逮捕されることになります。
「通常逮捕」とは、日本において原則的な刑事訴訟法上の「逮捕」です。
一方、「現行犯逮捕」は、刑事訴訟法第213条で規定されている、今まさに犯行が行われている、もしくは犯行が終わった直後に行う逮捕を指します。なかには、麻薬所持・使用の嫌疑がかけられ、家宅捜索をされて、麻薬を発見されたあと、逮捕されるというケースもあるでしょう。
2、逮捕されたらどうなるのか?
「家族が逮捕された」という事態にそのものが、初めての経験という方がほとんどのはずです。そのとき、身柄はどうなるのか、どのように罪が裁かれるのか? など、不安でいっぱいとなるのは当然といえます。
逮捕後の流れがイメージできれば、不安も少しはやわらぐかもしれません。
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(1)「大麻で逮捕」後の流れ
警察に逮捕されると、あなたの家族は「被疑者」と呼ばれる立場となります。まずは警察で身柄を拘束されたまま取り調べを受け、48時間以内に事件が検察官に送られます。検察は、送致後は24時間以内に、「勾留請求」か「釈放」の判断を検察が行うことになります。もし、引き続き身柄を拘束したまま捜査を行う「勾留」の必要があると判断され、裁判所に認められれば、最大20日間、身柄が拘束されたまま取り調べを受けることになります。
検察は、勾留期間中に起訴か不起訴かを決定します。もし、起訴が決定したら、「被疑者」は「被告人」と呼ばれる立場となり、次は公開された裁判所での審理に移ります。最終的には、裁判で有罪か無罪かが言い渡されます。 -
(2)大麻の刑罰について
もしも有罪判決を受けたときの刑罰についても気になることでしょう。前項で述べたとおり、「大麻での逮捕」といっても、状況によって問われる罪が異なります。
大麻の所持・譲渡・譲り受け自己使用目的の場合 5年以下の懲役刑
(大麻取締法24条の2第1項)営利目的の場合 7年以下の懲役、情状により200万円以下の罰金刑を併科
(大麻取締法24条の2第2項)
大麻の栽培・輸出入自己使用目的の場合 7年以下の懲役刑
(大麻取締法24条1項)営利目的の場合 7年以下の懲役、情状により200万円以下の罰金刑を併科
(大麻取締法24条の2第2項)
初めて大麻で逮捕されたケースなどで、弁護活動を通じて反省が見られるなどと判断されたときなどは、執行猶予付きの判決が下りることもあります。
執行猶予とは、実際の刑罰を下すまで、猶予の時間を与えられる措置です。
たとえば、「懲役1年、執行猶予2年」という判決が下りたら、2年間、何の罪も犯さず平穏無事に生活したら、懲役刑に処されることはありません。
ただし、犯行が悪質と判断された場合は執行猶予がつかず、実刑になる可能性もあります。特に営利目的だったケースは、社会に広く違法薬物を広げる行為となるため、個人使用目的による所持などに比べて、より量刑が重くなります。
3、大麻での逮捕と家族
家族が逮捕された時点で、絶望してしまう方もいるでしょう。
しかし、逮捕されたからといって、即座にすべてが終了するというわけではありません。
逮捕されたあとでも、家族だからこそできることが多々あります。特に、大麻などの薬物犯罪においては、再犯率がかなり高いことが知られています。そのため、再犯を防ぐ環境をいかに整えることができるかが量刑に直接響く傾向があります。
逮捕されてしまった家族のためにできることを、具体的に解説します。
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(1)逮捕後、家族ができること
警察から連絡が来たら、まずは深呼吸して、状況を確認しましょう。まず、警察に対して、具体的な状況を確認する必要があるでしょう。被疑者は、逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間は、弁護士以外の人物との接見ができません。
つまり、直接家族と連絡を取って状況を聞くことはできなくなります。
しかし、弁護士であれば、被疑者との自由な接見が許可されています。取り調べのアドバイスをしたり、弁護活動したりするだけではなく、家族の気持ちを伝える、差し入れを渡すなど、家族からのサポートの橋渡しも可能となります。
弁護士に依頼するメリットは、自由な接見だけではありません。
次のような活動を通じて、あなたとあなたの家族が受ける不利益をできる限り阻止します。
① 勾留を阻止する活動
逮捕から勾留決定までは最大72時間あり、その間に弁護士が接見すれば、逮捕手続きに不備がないかのチェックを入れることができます。その過程で長期にわたる身柄拘束を回避するための対抗措置が取れる可能性もあるでしょう。
② 被疑者を安心させられる
弁護士に依頼することで、今までの経験から先行きの見通しや対応策についてのアドバイスを受けられます。豊富な現場経験からフォローできるはずです。
メンタル的にも弁護士という不安なことを相談できる相手がいることは、気持ちを落ち着き、冷静になる可能性が高まります。
③ 虚偽の自白防止
何かの手違いなどで、あなたの家族のものではないのに、大麻を理由に逮捕されてしまったケースもあるかもしれません。
そのときは、まずは早急に弁護士に相談して、対応を依頼することをおすすめします。
少しでも早く帰宅したい一心で「うその自白」をしてしまうことがあれば、あなたとあなたの家族にとって、将来にわたる不利益となってしまう可能性があります。万が一、不適切な取り調べが行われた際には、弁護士名で抗議することもできるのです。
④ 検察官に不起訴処分を促す
弁護士に依頼した際に大きいアドバンテージとなるのは、被疑者にとっての有利な事情や証拠を集めることができる点にあります。集めた証拠などを駆使して、弁護士は検察に対して不起訴に関する意見書を提出します。
つまり、検察官に不起訴処分を求めていくことも可能です。
「不起訴」だからといって犯罪行為に及んでいないということになるとは限りません。
不起訴には、「起訴猶予」と呼ばれるケースがあるためです。具体的には、大麻を所持していた事実がであっても、所持量が極めて少なく、家族のサポートなどが十分に受けられるなど、社会に戻ったときの環境が整っていると判断されたケースが含まれます。
罪を犯したことが確定していても、弁護士による心強いサポートによって、早期の社会復帰が可能となることもあります。 -
(2)家族ができる薬物問題対策とは
大麻で逮捕され、罪を裁かれるとき、家族の協力が執行猶予に結び付きやすい傾向があります。そのためにも、本人が大麻を2度と使用しないための治療・更生プログラムに参加したり、回復施設に入所させたりすることを裁判官に対して、主張・立証することが必要です。
その過程において、ご家族のサポートもあるという主張をつけることでも、裁判官の印象を左右するでしょう。
また、起訴されたあと開かれる刑事裁判で、家族が情状証人として出廷することも、本人のためにできることのひとつです。情状証人とは刑事事件の裁判で、被告人の刑が少しでも軽くなるように、被告人の人となりや生活状況、今後の更生に向けてどのようにサポートをしていくのかなどについて証言する証人を指します。
ここで何を訴えればいいのかなども、弁護士がアドバイスします。 -
(3)未成年だったらどうなる?
ここまでは、大麻で逮捕されたあなたの家族が成人だったケースを前提に、解説しました。もしも、逮捕された本人が未成年だったときは、刑事事件ではなく少年事件として、事件が進むことになります。
裁判は刑事裁判ではなく、家庭裁判所による少年審判が行われることになりますし、刑務所ではなく、少年院に入るかもしれない事態となるでしょう。
いずれにせよ、成人が事件を起こしたときは、刑罰を処することを目的に取り調べや裁判が進みますが、少年事件では、未成年の子ども本人の反省と更生を目的に処遇が決定していきます。
しかし、家族にとっては、わからないことも多く、すべてが不安要素となるのは当然のことです。もし、被疑者が未成年であっても、弁護士は身元引受書、誓約書の準備から、家庭裁判所への意見書提出など、大麻で逮捕された本人の将来に影響が出ないよう、さまざまな側面から弁護活動を行っていきます。
4、まとめ
家族が大麻で逮捕される事態となれば、右も左もわからずに戸惑うばかりでしょう。動揺のあまり、すべてを諦めてしまおうと思う方もいるかもしれません。
しかし、まずはベリーベスト法律事務所・福岡オフィスにご相談ください。
できるだけ早いタイミングで弁護士に相談する以外にも、家族にできることがあります。家族だからこそ、できることともいえるでしょう。
もし、何ができるのか、どうすべきかわからないときは、弁護士がアドバイスを行います。大麻関連事件に対応した経験が豊富な弁護士であれば、これからどうすればいいかなど、状況に適したアドバイスをします。動揺していた気持ちも、逮捕後の対応が明確になれば、落ち着きを取り戻すことができるでしょう。
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