感染症法の罰則とは? 入院などの勧告に応じなかったらどうなる?
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新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大を受けて、福岡県では、令和4年1月27日から2月20日までまん延防止等重点措置が実施されることになりました。
まん延防止等重点措置が実施されると、飲食店の出入り、外出・県外移動、会食時の人数など制限を受けることになりますので、仕事や日常生活でも大きな影響が生じることになります。まん延防止等重点措置は、令和3年2月に改正された特措法によって新たに導入された制度です。
新型コロナウイルスに関しては、感染症法や特措法によってさまざまな制度が定められておりますので、国や地方自治体からの要請に従わなかった場合には、法律に基づいて罰則が適用される可能性があります。「コロナはただの風邪」などと考えて安易な行動をとってしまうと、周囲の方々に迷惑をかけるだけでなく、ご自身も罰則の適用を受ける可能性があるのです。
本コラムでは、新型コロナウイルスに関する感染症法や特措法の罰則について、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、感染症法とは? 特措法との違いは?
まず、感染症法とはどのような法律であるか、感染症法と特措法にはどのような違いがあるのかについて、解説します。
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(1)感染症法の概要
感染症法の正式名称は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」といいます。感染症法は、平成10年に、従来あった伝染病予防法、性病予防法、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律を統廃合して制定された法律です。
この法律では、感染症の発生の予防、まん延の防止を図ることを目的として、各感染症を1類から5類までの感染症に分類するとともに、現在感染症に位置付けられていない感染症について新たに措置を講じる必要が生じた場合には、政令で「指定感染症」とすることによって、具体的な措置を講じることが可能になります。
現在、大流行している新型コロナウイルスについても、感染症法上の「指定感染症」に指定されていました。
しかし、指定感染症は時限的な適用にすぎないものであったため、改正感染症法によって、指定感染症ではなく新型インフルエンザ等感染症の一類型として法律上明確に定義されるようになったのです。
これによって、新型コロナウイルスに対しても恒久的に感染症法が適用されることになります。
感染症法では、以下のような措置を講じることが認められています。- 積極的疫学調査の実施
- 健康診断受診の勧告・実施
- 就業制限
- 入院の勧告、措置
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(2)感染症法と特措法との違い
特措法とは、正式名称を「新型インフルエンザ等対策特別措置法」といいます。
報道などでは「コロナ特措法」、「コロナ対策特措法」などと表現されていることもありますが、すべて同じものを指しています。
特措法は、新型インフルエンザに対する対策強化を図ることを目的として平成24年に制定された法律です。令和2年に、新型コロナウイルスの急速な感染拡大を受けて、新型コロナウイルスが暫定的に追加されることになりました。そして、令和3年の改正によって、新型コロナウイルスも定義上「新型インフルエンザ等」に含まれることとすることによって、恒久的に特措法を適用することができるようになったのです。
感染症法と特措法は、いずれも新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的としている点で共通していますが、それを実現するための具体的な感染症対策の措置という点で違いがあります。
特措法では、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出によって、事業者への営業時間短縮、外出自粛、学校・興行場などの施設の利用制限、イベントの開催制限などを要請することができます。
2、感染症法や特措法を違反したら処罰される?
感染症法や特措法に基づく要請や命令に違反したとき、違反を理由に処罰されることはあるのかどうかについて解説します。
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(1)積極的疫学調査への協力拒否
積極的疫学調査とは、新型コロナウイルスの陽性と診断された患者に対して、濃厚接触者や感染源の特定のために発症日2週間前の行動歴を調査することをいいます。いわゆるクラスターを発見するのも、この調査の役割です。
積極的疫学調査の対象者に対しては、調査協力に応じるように求めることができますが、患者が調査協力を拒否した場合は、協力に応じるよう命令することができます(感染症法15条8項)。
また、積極的疫学調査への協力命令を受けた患者が正当な理由なく調査を拒否した場合には、30万円以下の過料が課されることになります(感染症法81条)。 -
(2)入院勧告の拒否
新型コロナウイルスの感染者のうち、65歳以上の方や呼吸器疾患を有する方など省令で重症化のおそれがあると定められている患者については、入院を勧告することができるとされています(感染症法26条2項、19条1項、施行規則第23条の6)。
入院勧告を拒否したとしてもそれに対する罰則はありませんが、後述するように、入院措置を命じられる可能性があるのです。 -
(3)宿泊療養・自宅療養の協力要請の拒否
入院勧告の対象とはならない患者に対しては、宿泊療養や自宅療養の協力要請をすることができます(感染症法44条の3第2項)。
ただし、宿泊療養や自宅療養の協力要請に従わなかったとしても、それに対する罰則はありません。しかし、後述するように、入院措置を命じられる可能性があります。 -
(4)入院措置の拒否・入院中の逃亡
入院勧告を拒否したり、宿泊療養・自宅療養の協力要請を拒否したりした場合には、入院措置を命じることができるとされています(感染症法26条2項、19条3項)。
入院措置を受けたにもかかわらず、正当な理由なく入院をしなかったような場合や入院期間中に逃げた場合には、50万円以下の過料が課せられます(感染症法80条)。
3、入院を拒否したり逃げたりしたら逮捕される?
入院を拒否したり、逃げたりした場合に逮捕される可能性があるのかどうかについて、解説します。
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(1)逮捕とは
逮捕とは、捜査機関によって犯罪の嫌疑を受けて捜査対象となっている被疑者の身体を拘束して、それを短期間継続することをいいます。
また、逮捕には「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」や「逃亡または罪証隠滅のおそれがあること」などの要件が存在します(刑事訴訟法第199条、刑事訴訟規則第143条の3)。原則としては、これらの要件を満たさないと、逮捕されることはありません。
逮捕は、身体拘束という重大な権利侵害を伴いますので、その手続きについては厳格な時間制限が定められています。
逮捕によって身柄拘束をすることができるのは、最大で72時間であり(刑事訴訟法第203条、204条、205条)、引き続き身柄拘束をする場合には、勾留という手続きをとらなければなりません。勾留された場合は、さらに最大で20日間の身柄拘束を受けることになります(刑事訴訟法第208条)。 -
(2)逮捕される可能性はゼロではない
逮捕の対象となるのは、あくまで、犯罪の嫌疑を受けている「被疑者」です。
感染症法や特措法による罰則は、基本的には「過料」というものであり、国や地方公共団体が課す金銭納付命令です。これは刑罰ではなく行政命令にすぎないため、過料の対象となる行為をしたからといって、原則として、逮捕されることはないのです。
したがって、入院を拒否したり、逃げたりしたとしても基本的には、逮捕までされることはありません。
ただし、入院措置を命じられている状態とは、本人が新型コロナウイルスに感染している状態ということになります。このような状態でお店などを利用して感染を拡大させた場合には、業務妨害罪(刑法233条)に該当して、ひいては逮捕されるリスクも存在することに注意が必要です。
なお、過料と似たような言葉に「科料」というものがあります。これも過料と同様に金銭の納付を命じる罰則ですが、行政罰ではなく刑事罰になります。つまり、科料の対象となる行為をした場合には、逮捕される可能性があるのです。
4、保健所の対応に納得できないときの相談先
保健所による対応に納得ができない場合には、専用の窓口や弁護士にまでご相談ください。
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(1)新型コロナウイルス感染症相談窓口
福岡県と福岡市では、新型コロナウイルス感染症に関する一般的な相談窓口として、24時間対応可能な電話相談窓口を設置しています。
新型コロナウイルスに関する保健所の対応に納得ができない場合や新型コロナウイルスに感染した疑いがある場合には、相談窓口に連絡をして、具体的な対応をアドバイスしてもらうとよいでしょう。 -
(2)弁護士
新型コロナウイルスに関する国や地方自治体の対応は、基本的には感染症法や特措法などの法律上の根拠に基づいてなされるものです。
そのため、保健所の対応に納得できない場合には、弁護士に相談をすることによって、保健所の対応が法的に適切なものであったのかについてアドバイスを受けることができます。もし違法であると判断された場合には、法的な対応についても、弁護士とともに検討することができるでしょう。
5、まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、感染症法や特措法が改正され、感染拡大防止に向けたさまざまな措置を行うことができるようになりました。
国や地方自治体が行う措置や命令の中には罰則を伴うものもありますので、措置や命令を受けた場合には慎重に対応する必要があります。
感染症法や特措法に基づく行政の対応に納得できないことがありましたら、弁護士が具体的な対応についてアドバイスすることができます。福岡市にご在住の方であれば、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスにまでご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています