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加害者からの逆恨み! 被害者ができる対策は? 弁護士が対応を解説

2022年07月21日
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加害者からの逆恨み! 被害者ができる対策は? 弁護士が対応を解説

令和2年5月、福岡市内の商業施設で少年が女性を殺害した事件が起きました。動機は自首を勧められたことに対する逆ギレ、いわば突発的に逆恨みをしていたことが裁判で明らかになったことが報道されています。このような事件が起きると、犯罪の被害に遭ってしまったとしても、注意したり被害届を出したり告訴したりすることによって加害者から逆恨みされてしまうのではないかと懸念を持つ方は少なくないでしょう。

特に、性犯罪の被害者となってしまった方や、そのご家族の方は、安心して街を歩くことができなくなってしまうかもしれません。加害者に逆恨みされて、再び怖い思いをすることがないよう、どのような対策をすることができるのか、福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、逆恨み行為を規制する法律

さて、初めにお伝えしなければいけないのは、残念ながら、逆恨み自体を禁止したり処罰したりする法律はないということです。加害者が被害者に対して復讐したいと考えているだけでは処罰することはできません。

ところが、だからといって被害者は泣き寝入りするしかないのかといえば、そうではない、といえます。なぜなら、逆恨みによる行為が何らかの法律に抵触すれば、規制することは可能となるためです。ここでは、そのいくつかを紹介します。

  1. (1)刑法

    たとえば、加害者から被害者宅に脅迫文が届いたり、脅迫電話がかかってきたりした場合は、刑法222条1項の脅迫罪に該当します。

    刑法222条(脅迫)
    1 生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する。


    このほか、被害者に関する個人情報や侮辱的な事柄をインターネットに書き込むなどして誹謗中傷した場合、名誉毀損罪(刑法230条1項)や侮辱罪(刑法231条)に該当します。

    刑法230条(名誉毀損)
    1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する。

    刑法231条(侮辱)
    事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処する。

    なお、刑法231条の侮辱罪については、令和4年6月に法改正され、厳罰化されました。厳罰化した侮辱罪は令和4年7月7日から施行されています。したがって、令和4年7月6日までに受けた被害により、加害者が有罪になった場合は改正前に規定されていた刑罰「拘留または科料」のいずれかが科されることになります。

    他方で、加害者が自宅にやってきて、「帰ってください」と言っても帰らない場合は、刑法130条後段の不退去罪に該当します。

    刑法130条(住居侵入等)
    正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入し、または要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処する。
  2. (2)ストーカー規制法

    逆恨みによる行為で非常に多いのが、ストーカー(つきまとい)ではないかと考えられます。

    これを取り締まるのが、ストーカー規制法(正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」)です。この法律が禁止している行為は、①「つきまとい等」と②「ストーカー行為」の2つが挙げられます。

    具体的には以下のとおりです。

    ①「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者またはその配偶者、直系もしくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること」(同法2条1項)です。そして、各号に掲げられているのが、次のような行為(一例)です。

    • つきまとい、待ち伏せ、見張り
    • 住居や職場に押しかけたり、周辺をうろついたりすること
    • 面会、交際等の要求
    • 無言電話
    • 汚物や動物の死体の送付
    • 性的羞恥心を害する文書・図画の送付
    • 拒んでいるのに連続して文章を送るなどの行動(SNSなど含む)
    • GPS機器などを用いて許可を得ずに位置情報を取得する行為など


    そして、①「つきまとい等」を同一人物に対して反復してすることを②「ストーカー行為」と呼びます(同法2条3項)。

    ここで定義される「ストーカー行為」を行い、有罪になった者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることになるでしょう(同法18条)。

    ストーカー行為やつきまとい等の行為をした場合、警察は加害者に対して「警告」(同法4条)や「禁止命令等」(同法5条)を出すことができます。それでも、警告に違反してストーカー行為やつきまとい等を続けた場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます(同法19条)。

    しかし、ここで、注意すべき点があります。実は、これらの好意が恋愛感情等の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的でなされていないと、この法律で規制(処罰)することができません(上記の下線部をご参照ください)。

    したがって、好意の感情とは無関係の「よくもあのときは…」というような、逆恨みの感情によって、上記のような行為をしていた場合、ストーカー規制法で取り締まることができるかどうかは、かなり微妙な面があるともいえます。

    もし、ストーカー規制法の適用が難しい場合には、軽犯罪法1条28号の「他人の進路に立ちふさがって、もしくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、または不安もしくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者」として取り締まることは可能です。しかし、もし軽犯罪法違反として罪に問うことができ、有罪になったとしても、刑罰は拘留(1日以上30日未満の刑事施設での拘置)または科料(1000円以上1万円未満のお金の没収)となっており、非常に軽い処罰で済まされてしまうことになります。

  3. (3)DV防止法

    DV被害に遭い、加害者から逆恨みをされているのであれば、DV防止法(正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)の規定が使える場合があります

    裁判所に申し立てをしてDV防止法に基づいて接近禁止命令を出してもらうことができ、命令に違反した場合は刑事罰もあります。

2、逆恨みの心配があるとき相談できる場所

この章では、逆恨みされる、あるいはされているおそれのある場合に、相談できる場所をご紹介します。

  1. (1)警察

    まずは、警察に相談することを検討しましょう。上記で挙げたものを含む、犯罪に該当する行為が行われているおそれがあれば、警察に告訴状または被害届を提出して、警察に刑事事件として動いてもらうことで、被害を食い止めることができるかもしれません。直接、告訴せずとも、警察の相談窓口に相談することも可能です。

  2. (2)被害者支援センター

    逆恨みを含む、被害者が不安に思うさまざまなことについて相談することのできる民間の窓口です。電話相談や面接相談をすることができます。福岡県では、「公益社団法人 犯罪被害者支援センター」という団体が、県内各地にサポートセンターを置いています。

  3. (3)弁護士

    逆恨みに悩まれている方は、弁護士に相談することもぜひ検討してください。警察や裁判所に対して働きかけたい場合に、その手続きをお手伝いすることができます

    また、加害者に対して、当該行為をやめること、それを続けるとどのような結末になるのかということを通知することも可能です。さらに、警察に告訴する場合に必要となる証拠の収集についてもアドバイスすることができます。

3、犯罪の被害者になってしまったら

実は、逆恨みを受けないようにするためには、犯罪の被害に遭ってから、事件が解決するまでの間が非常に大切です。ここでは、どうすれば逆恨みによって二次的な被害に遭うことを未然に防ぐことができるかについて解説します。

  1. (1)個人情報の保護

    見ず知らずの人から危害を加えられた場合(痴漢、盗撮等)、もっとも有効な逆恨み防止対策は、相手に自分の名前や住所を知られないということです。被害者の名前や住所、職場等の情報を知らなければ、加害者は何もしようがありません。したがって、いかに個人情報を知られないかというのがとても大切なポイントになります。

  2. (2)示談交渉

    示談をする場合、被害者自らが加害者本人や加害者の関係者と直接交渉するのは危険です。特に、加害者側が代理人の弁護士ではなく本人が登場する場合は、絶対に被害者自身が交渉に立ち会ってはいけません。

    必ず、代理人の弁護士を立てて、弁護人に交渉してもらうようにしましょう。また、示談書には双方の名前が書かれています。示談書は2通作成して、双方が1通ずつを持って帰りますが、加害者が持ち帰る方は被害者に関する情報が黒塗り等ですべて隠されているか、被害者側・加害者側の両弁護人にしっかりと確認しましょう。

    示談交渉の中身にも注意が必要です。示談交渉といえば、示談金の額が気になるところだとは思いますが、今後加害者は被害者に故意に近づかないこと、偶然にも鉢合わせした場合は、すぐにその場を離れること、といった条項も加えてもらうようにしましょう。

    また、示談交渉時には、加害者はこれからどこの地域に住むのか、どういった仕事をして暮らしていくのか、といったことも加害者側の弁護人に確認したほうがよいでしょう。被害者側の安心材料として、加害者のプライバシーを過度に害さない程度に教えてもらえるかもしれません。

  3. (3)被害者参加制度での出廷

    さらに、刑事裁判に被害者自身が参加して意見を述べることのできる、被害者参加制度(刑事訴訟法316条の33以下)というものがあります。厳罰を求めて自ら意見陳述をするのですが、顔が見えないように裁判所についたてを用意してもらうことができます。対応する場合は、検察官や被害者側の弁護人と相談してください。

4、まとめ

本稿では、犯罪の被害者となってしまった方に向けて、加害者からの逆恨みへの対処法について解説しました。

逆恨みされてしまう可能性にお悩みであれば、ぜひ、弁護士にご相談ください。報復という2回目の被害に遭うのは、とてもつらく苦しいことです。安心して過ごせる日常を取り戻せるよう、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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