福岡市内の祭りで逮捕! その原因は公務執行妨害罪!?
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平成30年9月、福岡市東区で行われていた、福岡三大祭りとも称される筥崎宮の祭り「放生会(ほうじょうえ)」の会場で、男3人が現行犯逮捕される事件がありました。逮捕された原因は、もめごとを起こしていた男らを止めようとした警官が所持していた停止灯を折るなど、公務執行妨害罪にあたる行為をしたためと報道されています。
祭りやイベントなどでは、酒が入ることもあり、もめごとが起きやすいものです。頭に血が上っていると、ケンカを止めようとした他人の腕を振り払うなど、刑法上における「暴行」行為をしてしまう可能性もあるかもしれません。冒頭の事件のように、その相手が警官であれば、暴行罪だけでなく公務執行妨害罪として逮捕されてしまうこともありえます。
万が一、家族や友人が事件を起こしてしまえば、何とかしたいと考えるのは当然のことです。そこで今回は、公務執行妨害罪にあたるケースを説明するとともに、また、公務執行妨害罪で逮捕されてしまったらどうすればよいかなどを、福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、公務執行妨害罪とは
公務執行妨害罪とは、刑法第95条第1項に規定された、公務員が職務を執行する際に、暴行または脅迫を加えた場合に成立する犯罪です。
ここで示す「公務員」とは、警官だけではなく、国や地方公共団体の職員をはじめ、法令により公務に従事する者すべてを指します。市役所や県庁などの役所の職員や、公立学校の教員、警察官、消防士、自衛隊員、議員などが含まれます。
相手が公務員であっても、休暇中など、プライベートであれば、公務執行妨害罪にはなりません。あくまで、仕事中の公務員に対して、暴行または脅迫を行うのが公務執行妨害罪なのです。
2、公務執行妨害罪のよくある事例
公務執行妨害罪としてテレビなどでよく見聞きする事例は、警察官に対する暴行でしょう。刑事ドラマなどでも、捜査の対象となった被疑者が刑事に対して激しい抵抗をするなど、暴行をはたらいたために、公務執行妨害罪で逮捕されてしまうシーンを見たことがある方は多いのではないでしょうか。
このように、他の犯罪の容疑で取り調べや事情聴取を受けているような状況で、警察官と口論になり、ついかっとなって手が出てしまった……というのはよくあるケースです。結果、公務執行妨害罪で逮捕されることになります。
なお、公務執行妨害罪における「暴行」は人に向けられたものに限らず、物に向けられたものでも成立します。たとえば、冒頭の事件のように警官が所持する停止灯を折ったり、パトカーを蹴ったりしたケースでも、公務執行妨害罪に該当する可能性があります。
3、公務執行妨害罪の量刑
公務執行妨害罪で有罪となったときに科せられる罰則は、「3年以下の懲役」もしくは「禁錮」または「50万円以下の罰金」と定められています。
「懲役(ちょうえき)」は、刑事施設で身柄を拘束され、労働を課される刑です。「禁錮(きんこ)」は、おなじく刑事施設に身柄を拘束されますが、ただ監禁される刑となります。いずれも、自由を拘束するため、自由刑と呼ばれています。
罰金刑は、国へ一括でお金を納める財産刑です。科された罰金を支払えないときは、労役場へ留置され、日給5000円の労務に服する必要があります。
罰金だけでなく、懲役刑も定められている、それなりに重大な犯罪と考えられています。
4、執行妨害罪と他の犯罪との関係
公務執行妨害罪は、暴行罪や脅迫罪など、他の犯罪にも該当することがあります。このように、ひとつの行為が2種以上の犯罪にあてはまるものは「観念的競合」と呼ばれています。刑法上、「観念的競合」となったケースでは、法定刑の重い罰則で処罰されます。
公務執行妨害罪と同時に成立しやすい犯罪についても知っておきましょう。
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(1)傷害罪
警察官など、職務を行う公務員に対して暴行を加えた結果、相手がケガをしたときは、「傷害罪」が成立します。
傷害罪は、公務執行妨害罪よりも法定刑が重く、「15年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」です。
公務執行妨害罪で逮捕されたとしても、相手がケガをしてしまったときには、途中から傷害罪に切り替えられ、その罪が問われることになります。 -
(2)器物損壊罪
警察官など公務員が職務を行う際、相手が所有していた物を壊したときには、「器物損壊罪」が成立する可能性があります。冒頭の事件や、怒りにまかせてパトカーのサイドミラーをたたいて壊してしまったり、役所の備品を投げて壊してしまったりしたような場合が該当すると考えられるでしょう。
ただし、器物損壊罪は公務執行妨害罪よりも法定刑が軽く、「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」もしくは「科料」です。そのため、通常は、公務執行妨害罪として捜査が進められ、法定刑が適用されます。
5、公務執行妨害罪で逮捕された場合の流れ
もし、家族や友人が公務執行妨害罪の被疑者として逮捕されたときは、暴行罪や傷害罪など、そのほかの刑法犯として逮捕されたケースと同様のプロセスで、刑事手続きが行われることになります。
まず、逮捕から48時間までの間に警察で取り調べを受けます。その後、罪を問う必要があると警察が判断したときは、検察に身柄と事件を送致されます。
送致を受けた検察官は、逮捕から72時間の間に、引き続き身柄を拘束したまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」が必要かどうかを判断します。必要なときは、裁判所へ「勾留請求」を行い、許可された場合は、最大20日間身柄を拘束されることになります。
起訴するかどうかの最終決定も、検察官が行います。起訴・不起訴の決定は、勾留しているときは勾留期間中になされますが、在宅事件扱いとして身柄拘束が解かれているケースでは、捜査が終わり次第決定されます。
なお、ついかっとなって手を出してしまったようなときや、不注意で手があたってしまったなどのケースでは、本人がきちんと反省しており、前科もなければ、逮捕されても勾留までには至らずに釈放されるケースもあるでしょう。
一方で、相手がケガをしたときや、そもそも反省もなく、本人が罪を認めていないケース、同種の前科があるときは、身柄拘束が長期間にわたる可能性が高くなります。
6、公務執行妨害罪と暴行罪や傷害罪との違い
暴行罪や傷害罪など、被害者がいる事件で逮捕されたケースでは、警察や検察は被害者の心情を大変重要視します。そこで、被害者との示談が成立し、被害者からの「罪は問わない」などの意思を表明してもらうことで、早期に釈放されたり、起訴を回避できたりすることが可能になります。
しかし、公務執行妨害は、公務員個人を守るための法律ではなく、公務を守るために規定されている法律です。そのため、一般的な暴行罪などとは異なり、示談ができないという点に注意が必要です。
7、公務執行妨害罪で逮捕されたときの対処法
前述のとおり、公務執行妨害罪においては、示談交渉ができません。
そのため、家族や友人が公務執行妨害罪で逮捕されてしまったときに周囲ができることは、事実関係に間違いがなければ、いち早く罪を認め、反省の意を示すようアドバイスすることが、まずひとつあげられるでしょう。
ただし、逮捕から勾留が決まる最大72時間の間は、本人と連絡を取ることも面会することもできません。逮捕された本人と、顔を合わせて対話できるのは、弁護士のみとなります。
そこで、いち早く弁護士を依頼することが、もっとも本人のためになる行動ともいえるでしょう。
弁護士であれば、実際に罪を犯していれば、直接話をして反省するように促すこともできますし、万が一、警察の捜査そのものに問題があったときなども、素早く対応が可能です。
たとえば、警察官が職務質問を行う際、本来、職務質問は任意であるにもかかわらず、腕をつかむなどして強制的に職務質問を行おうとした結果、腕を振り払ったため、公務執行妨害として逮捕されたケースがあったとしましょう。
そのような場合には、そもそも、その職務自体が違法だった可能性があるため、公務執行妨害罪は成立しない可能性があります。
もし、家族や友人の行為が、そばで目撃していたにもかかわらず、公務執行妨害罪に該当するのかどうかわからないときや、警官の行為に納得がいかない場合は、特にいち早く弁護士を依頼すべきでしょう。
罪を認める調書を取られる前に、直接本人に、アドバイスを行えます。
また、公務執行妨害罪の成立は免れないケースでも、傷害罪が成立するときは、該当の警察官などの公務員は「傷害罪の被害者」でもあります。そこで、相手と示談をすることも可能になります。ただし、相手が警察官で全く示談に応じないケースも考えられます。
その際は、贖罪(しょくざい)寄付(反省や謝罪の意を示すために公益団体などに寄付をすること)をすることで、反省の態度を示す方法もあります。
いずれにしても、家族や友人が公務執行妨害罪で逮捕されてしまったときには、個人だけで対応することは大変難しいと考えたほうがよいでしょう。
できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することをおすすめします。
8、まとめ
ついかっとなってしまう方もいるようですが、決して褒められたことではありません。
その結果、公務執行妨害罪で逮捕されてしまえば、暴行罪や脅迫罪よりも法定刑が重くなるだけでなく、早期の釈放や不起訴を目指すのが難しくなる可能性が高まります。
それでも、万が一のときは、弁護士がつくことで、早期の釈放や不起訴を目指すことは可能です。
家族や友人が公務執行妨害罪で逮捕されてお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が相談に応じ、状況に適した弁護活動により、早期解決を目指します。お気軽にお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています