コスプレで銃刀法違反に!? カッターや包丁を持ち歩くのもNG? 弁護士が解説
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令和元年4月、福岡中央署は、福岡地方裁判所合同庁舎内で正当な理由なく刃物を持っていたとして、福岡市在住の男性を銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕しました。この男性は福岡簡易裁判所で略式起訴され、同日に罰金10万円の略式命令が下されています。
もちろん、日常生活上必要とされる場面でカッターや包丁を使うことに違法性はありません。しかしながら、刃物によって人を脅したり、傷害事件や殺人を犯したりする人間がいることも事実です。したがって、市民生活の治安維持のため、刃物の所持は銃刀法により取り締まりの対象となっています。
また、刃渡りによっては、単純所持だけでも銃刀法違反として逮捕される可能性もありますので、注意が必要です。銃刀法の規制について、福岡オフィスの弁護士が詳しく解説します。
1、銃刀法とは?
日本の治安が良いとされている理由のひとつに、銃刀法によって銃や刀剣の所持が厳しく規制されていることも挙げられるでしょう。
銃刀法の正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」です。この法律は「銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めるもの」として制定されています。
今回は銃刀法のうち、刃物に関係する規制を解説します。
日用品としてのカッターや包丁などの刃物は利便性の高いものです。他方、使い方によっては危害を加えてしまう可能性があるものでもあります。
そこで、所持する際に取り締まり対象となる刃渡りなどに一定の基準が設けられているのです。
2、銃刀法で規制対象となる基準と罰則
まずは、銃刀法の規定と罰則を確認してみましょう。
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(1)銃刀法第2条における規定:「刀剣類」の基準
銃刀法第2条2号において、以下のように「刀剣類」の規定が定められています。
刀剣類の規定
- 刃渡り15センチメートル以上の刀
- やりおよびなぎなた
- 刃渡り5.5センチメートル以上の剣
- あいくち、ならびに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ
これらの刀剣類は、法令に基づき職務のため所持する場合などを除き、所持することが禁じられています。
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(2)銃刀法第22条における規定:刃体の長さ6cm以上の刃物
銃刀法第22条では、携帯を禁じる刃物とその刃渡りについて以下のとおり定められています。
銃刀法第22条
何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。
このように、銃刀法第2条で定める「刀剣類」にあたらない刃物でも、刃渡り6センチメートル以上の刃物を「業務上の必要性」や「正当な理由なく」持っていた場合は銃刀法違反となります。
銃刀法違反の罰則
銃刀法違反に問われ有罪となれば、銃刀法第31条の18第3項により「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されることになります。 -
(3)銃刀法で規制される刃渡り以下でも、軽犯罪法違反になることも
刃渡り6センチメートル以下の刃物であっても、場合によっては軽犯罪法違反で逮捕されるケースもあります。
軽犯罪法第1条2号により、以下は処罰の対象とされています。軽犯罪法第1条2号
正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
キャンプなどで使用するツールナイフなども該当する可能性があります。
けんかをしていると市民から通報があったり、パトロール中に挙動不審であったり、市民に危害を加えるおそれがあるとして警察から職務質問などを受けた際に、これらを隠して所持していると、検挙対象となるケースもありうるでしょう。軽犯罪法違反の罰則
軽犯罪法違反に問われ、有罪となれば「1日以上30日未満の拘留(こうりゅう)または1000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収する科料(かりょう)」が科されることになります。 -
(4)コスプレで使う模造刀剣類も銃刀法違反!?
実は、おもちゃであっても、模造刀剣を持つことは規制対象とされています(銃刀法第22条の4)。
規制対象となる要件は以下のとおりです。金属で作られ、かつ、刀剣類に著しく類似する形状物で、内閣府令で定めた模造刀剣類を携帯すること
なお、本項においても業務その他正当な理由による場合を除きます。
もし、所持していた模造刀剣類が紙ややわらかいプラスチックなどの素材で、あきらかに人を傷つける力がないものであれば、検挙は行き過ぎであると主張することができるかもしれません。
3、「正当な理由」とは? どのような所持理由なら銃刀法違反にならないのか?
6センチメートル以上の刃渡りがある刃物を所持するだけで、だれもが銃刀法違反として取り締まりを受けるわけではありません。
銃刀法では「業務その他正当な理由による場合」は除外されることが明記されているためです。
「業務」がどの範囲を指すかといえば、社会生活上の地位に基づいて、刃物を反復継続して携帯することとなります。
たとえば、板前が店舗間を移動する際、出刃包丁を持ち歩くことは不自然ではないでしょう。つまり、習慣的に仕事や生活上の必要性があって使用するものと判断されれば、「正当な理由」と認められるということになります。
万が一、銃刀法違反や軽犯罪法違反であるとの嫌疑がかかったのであれば、「正当な理由」があることを立証しなければなりません。
そのようなときには、すぐに弁護士に相談してください。立証のためのアドバイスを得られるでしょう。
4、銃刀法違反で逮捕された後の流れは?
銃刀法違反は、街中で警官に見とがめられ現行犯逮捕となるケースも多いものです。
もしも銃刀法違反で逮捕されてしまった場合、どのような処遇を受けるのでしょうか。
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(1)逮捕後48時間は警察で取り調べ
逮捕されると、警察署に連行され取り調べを受けることになります。
警察での取り調べは刑事訴訟法で身柄拘束後48時間以内と定められています。その間は、証拠隠滅をさけるために原則として家族であっても面会することはできません。
逮捕された後も、弁護士を呼ぶ権利は認められています。
また、弁護士であれば、逮捕後であってもいつでも接見することができるのです。
弁護士は取り調べに同席することはできませんが、取り調べでの受け答えについてのアドバイスが行えます。逮捕され動揺し、筋道を立てて説明することができなかった場合、弁護士の助けを得て、状況を整理していくことができるでしょう。
そのようなサポートがないと、検挙したいと考えている警察に言われるままに罪を認めてしまいかねません。
警察は、逮捕から48時間までに被疑者と事件を検察へ送致するかどうかを決定します。この時点で、嫌疑不十分として釈放されるケースもあります。
また、捜査書類のみ検察に送致する「在宅事件扱い」となるケースも考えられます。在宅事件扱いになったときは、自宅に帰ることができるでしょう。 -
(2)検察に送致後24時間に勾留の有無が決定
身柄ごと検察に送られた場合は、引き続き検察でも24時間以内で取り調べを受けることとなります。
この時点でも、捜査や弁護士からの意見書などで、正当な理由が認められれば、すぐに釈放されるでしょう。
検察は送致後24時間以内に、引き続き身柄拘束して取り調べる「勾留(こうりゅう)」を請求するか決定します。 -
(3)勾留されると最長20日間の身柄拘束
検察が裁判所に勾留請求をして、それが認められた場合、被疑者は10日間から最大20日間(逮捕からは最大で23日間)自宅に帰ることができません。
このように身柄拘束が長期化すれば、仕事や学業に影響が出て、社会的に多大なダメージを負うことも免れないでしょう。勾留期間内に、検察は起訴か不起訴かを決定します。
弁護士に依頼すれば、被疑者に代わってさまざまな証拠を集めたり、勾留取り消しや勾留延長をしないよう意見書を提出したりするなどの弁護活動を行います。
不起訴、処分保留、起訴猶予となれば釈放されますので、一刻も早い釈放を目指し活動します。 -
(4)銃刀法違反を裁判で争う
起訴された場合は、裁判となります。罪を認めると、たとえ刑務所に収監されることはない罰金刑であっても有罪となれば前科がついてしまいます。
もしいわれのない容疑で逮捕されたのならば、弁護士はあなたとともに無罪を主張することが可能です。
銃刀法違反として裁判で争うことになっても、無罪もしくは少しでも減刑されるように、あなたの主張を法的にアピールしていきます。
5、まとめ
警察に銃刀法違反の疑いをかけられたのなら、早めに弁護士にご相談ください。銃刀法は「危害予防上」の法律です。つまり、実際に被害がなくとも検挙対象となりえる犯罪です。
偶然所持していただけの刃物で、思わぬ逮捕となった場合であっても、所持の必要性がうまく伝わらなければ、身柄拘束が長期に及ぶ危険性もあります。
お困りのときは、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士にご連絡ください。
あなたやご家族に代わって、警察や検察に刃物所持の正当性を伝えるため、あらゆる角度からサポートいたします。
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