自転車で飲酒運転したら逮捕される? 法改正前後の違いと科される罰則

2024年12月16日
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自転車で飲酒運転したら逮捕される? 法改正前後の違いと科される罰則

福岡県警察が公表する交通事故統計によると、自転車事故は令和5年中に福岡市内だけで1386 件も起きていたことがわかっています。

令和6年11月1日に施行された道路交通法改正により自転車の飲酒運転が取り締まりの対象となったと話題になっています。しかし、かねてより、自転車は自動車と同様に道路交通法による規制を受ける対象となる乗り物です。もちろん、飲酒運転は違反にあたる行為のひとつであり、場合によっては逮捕されてしまう可能性があったことはあまり知られていなかったのかもしれません。

では、逮捕されたあとはどのような処分を受けるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が自転車による飲酒運転で逮捕されるケースや処分の内容、逮捕されたあとの流れについて解説します。


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1、自転車でも飲酒運転は法改正前からNG! その根拠とは

冒頭のとおり、令和6年11月1日に施行した改正道路交通法により、自転車の飲酒運転がより厳しく規制されることになりました。しかしそれ以前から、道路交通法では、自動車だけではなく自転車でも飲酒運転を禁止しています

たとえば福岡県では、令和2年4月1日、「福岡県自転車の安全で適正な利用の促進及び活用の推進に関する条例」が施行しています。全国的に、自転車が加害者となる重大事故が発生していることなどを踏まえたもので、自転車利用者の責務として、飲酒運転や傘差し運転しないことなどが挙げられているものです。さらにその後、18歳以上の者へ自転車損害賠償保険等の加入義務などが追加される形で改正され、令和4年10月1日に施行されていました。

お酒を飲んだあと自転車に乗ったという話を聞くことがあるかもしれませんが、実は、法改正がされる前から、その行為をしていた方全員が道路交通法に違反していたといえるでしょう。

では道路交通法の条文で、飲酒運転を禁じている部分を確認してみましょう。

道路交通法第65条
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。


この一文は以前より変わっていません。つまり、酒気を帯びた状態で車両を運転することは法改正が行われる前から禁じられていました。

さらに本条の2から4項にかけて、飲んでいる人に車両を貸すことから、運転の予定がある人にアルコールを飲ませることも、運転手が酒気を帯びていることを知りつつ運転させることも禁じられています。

2、そもそも自転車は車?

先ほど道路交通法では「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と規定されていることを確認しました。ここには「車両等」と記載されていますね。
実は道路交通法上では「車両等」に自転車も含まれています

早速、車両等について定義している部分を確認してみましょう。
道路交通法第2条第8項「車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトローリーバスをいう」

ここには、自転車は明記されていません。
しかし、「軽車両」について説明する道路交通法第2条11項の条文に自転車が登場します。

道路交通法第2条11項の2
自転車 ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であつて、身体障害者用の車、小児用の車及び歩行補助車等以外のもの(原動機を用いるものにあつては、人の力を補うため原動機を用いるものであつて内閣府令で定める基準に該当するものを含み、移動用小型車及び遠隔操作により通行させることができるものを除く。)をいう。


長く難しい文章が続いていますが、ここで自転車が道路交通法上の「軽車両」に該当し、軽車両は「車両等」に分類されていることがわかるでしょう。なお、いわゆる「電動アシスト自転車」についても、自転車として扱われます。

つまり、同法第65条で「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」の一文で明記されているとおり、軽車両である自転車の飲酒運転も明確に禁止されているのです。

しかし、お酒を飲んでいても、自転車に乗らずに押していれば道路交通法違反には問われません。「お酒を飲んだら自転車は押す」ことを心がけると、自転車の飲酒運転を理由に処罰されることはないでしょう。

すでに飲酒運転をしてしまった、警察官に呼び止められたのに逃げてしまったという方は、次の項目で罰則等について解説してありますので、読み進めてください。

ただし、時速20キロメートルを超える速度を出せる電動アシスト自転車モードがある「ペダル付き原動機付自転車」は、軽車両ではなく原動機付自転車に分類されるため、「バイク」と同じ扱いとなる点に注意が必要です。

3、改正前後比較! 自転車の飲酒運転で処される罰則

前述のとおり、自転車でも自動車同様に飲酒運転が禁じられています。
本項では、自転車の飲酒運転で逮捕された場合の罰則について、改正前と改正後の違いについて確認しましょう。

  1. (1)道路交通法改正で自転車の飲酒運転はさらに厳しく

    前述のとおり、これまでも自転車での飲酒運転は取り締まりの対象でした。しかし、令和6年11月1日に施行された道路交通法改正により、自電車の飲酒運転が厳罰化されています。

    酒気帯び運転
    <法改正前>
    旧道路交通法第117条で規定されていた「酒気帯び運転」の罰則を示した条文には、「軽車両を除く」と明記されていました。つまり、自動車での酒気帯び運転では罰則が規定されていましたが、自転車の酒気帯び運転では、取り締まりを受けることはあっても処罰されることはありませんでした。


    <法改正後>
    法改正により、前述の酒気帯び運転の規定が「自転車以外の軽車両を除く」と変更されました。したがって、自転車であっても酒気帯び運転をすると「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されることになります(同法第117条の2の2第1項第3号)。また、一定の違反行為(危険行為)を3年以内に2回以上行うと、自転車運転者講習制度の対象となります。


    酒酔い運転
    <法改正の前後で変更なし>
    「アルコールの影響により正常な運転ができない恐れがある状態」で運転する「酒酔い運転」の罰則について定められているのは、道路交通法第117条の2です。ここには、軽車両も含まれます。したがって、自転車で酒酔い運転をした場合は、法改正の前後関係なく、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます
  2. (2)酒酔い運転と酒気帯び運転の違いとは

    自転車が酒酔い運転のみしか、処罰されないということは「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の差が重要になります。

    酒気帯び運転と酒酔い運転の違いは、以下のとおりです。

    酒気帯び運転
    呼気1リットルあたりのアルコール量が0.15mg以上、もしくは血液1ml以上が検出されたとき


    酒酔い運転
    アルコールの影響により正常な運転ができない恐れがある状態
    酒酔い運転には明確な数値条の基準はなく、本人の状態によって「酒気帯び」なのか「酒酔い」なのかを判断します。具体的には「会話が成立するか」、「まっすぐ歩けるのか」などのテストが行われます。


    警察庁が発表しているデータによると、令和5年に自転車の酒酔い運転によって検挙された件数は101件でした。以前より取り締まりされていた者ではありますが、法改正もあったことから、警察では悪質で危険な交通違反に対しては厳正な対処をすることを明言しています。

    つまり、飲酒して自転車を運転すると逮捕される可能性があるといえるでしょう。

  3. (3)飲酒運転しそうな人に行うと罪に問われうる行動

    令和6年11月1日に施行された道路交通法改正による厳罰化で影響を受けるのは、自転車で飲酒運転する本人だけではありません。お酒を飲んでから自転車に乗りそうな人に以下の行為をすると、罪に問われる可能性がありえます。

    • 飲酒運転となる可能性がある方に自転車を貸す
    • 車両提供罪に問われ、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

    • 自転車で飲酒運転しそうな方にお酒を出す、飲酒を勧める
    • 酒類提供罪に問われ、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に科されます。

    • お酒を飲んでいる方に運転をさせた自転車に同乗する
    • 同乗罪に問われ、罰則は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

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4、逮捕された場合に弁護士に依頼したほうがよい理由

事故を起こした場合も、起こしていない場合でも、逮捕されてしまったときは、弁護士に相談した上でしかるべき対策を行うことをおすすめします。

  1. (1)交通事故を起こした場合は示談を含めて弁護士に依頼すべき

    自転車の飲酒運転で交通事故を起こした場合は、飲酒運転による罰則だけでなく、他の道路交通法違反にも問われます。また、警察などの捜査機関から逃亡や証拠隠滅の危険があると判断されてしまうと、逮捕や勾留など、身柄の拘束を受けてしまう可能性があるでしょう。

    また、被害者の損害を賠償した上で示談交渉を行わなければなりません。示談交渉付きの自転車保険に入っている場合や、自動車保険等の「個人賠償責任保険」があれば、被害者との交渉を保険会社に任せることができます。
    しかし、保険に加入していなければ、自分で交渉しなければなりません

    飲酒運転が原因で交通事故になった場合、自転車でも自動車でも変わりなく飲酒運転をした者に対する処罰感情が強い傾向があると考えられます。
    したがって、当事者同士の示談交渉は難しいでしょう。

    しかし、早急に示談することで、早期の釈放や処罰が軽減される可能性がでてきます。
    そこで、早期に示談交渉の対応を弁護士に依頼することをおすすめします。

  2. (2)自転車の飲酒運転で逮捕されたあとの流れと弁護士の役割

    たとえ事故を起こしていない飲酒運転でも、現行犯で逮捕されたら警察署に身柄が拘束されてしまいます。警察署内の留置所で48時間におよび取り調べを受けた上で、検察に送致されて、検察官によってさらに24時間を上限に取り調べが行われます。
    この最長72時間のあいだ、家族とも面会することができないことが多いでしょう

    しかし、面会の制限を受けている期間であっても弁護士であれば接見可能です。弁護士が接見することで、取り調べの際に不利な自白をしてしまうリスクが軽減します。

    検察官による24時間の捜査や取り調べが行われたのちに「勾留」が必要かどうかを判断されます。勾留とは留置所もしくは拘置所に最大20日間身柄が拘束される措置です。

    勾留されてしまうと、会社や学校に行くことができず職や学席を失う可能性は否定できません。できる限り勾留は回避したいところです。

    弁護士に依頼することによって、勾留回避するための弁護活動が可能になります。
    なるべく早く弁護士に依頼することが大切です

    検察による所定の捜査が完了もしくは、勾留期間が満了すると「起訴・不起訴」が判断されます。起訴されると刑事事件がひらかれます。不起訴になると前科がつくことなく元の生活に戻ることができます。しかし起訴されてしまうと、約99%が有罪となります。
    つまり、前科がついてしまうということです。

    ただし、自転車の飲酒運転では、通常の刑事裁判ではなく「略式起訴」になるケースが多いでしょう。重大な交通事故を起こしている場合は公開された刑事裁判になることもあります。いずれにしても有罪になれば前科がつく点は共通です。

    できるだけ早期から弁護士による対応を依頼したほうがよいでしょう

5、まとめ

自転車の飲酒運転は、法改正により「酒酔い運転」はもちろん「酒気帯び運転」であっても逮捕・処罰される可能性があります。すでに自転車で飲酒運転をしてしまった方のうち、令和6年10月31日までの行為で「酒気帯び運転」だった場合は、処罰を受けることはありません。しかし、特に交通事故を起こした場合は、逮捕されたり取り締まりを受ける可能性が高いといえるでしょう。

自転車で飲酒運転をしてしまった、飲酒運転の末、交通事故を起こしてしまった方はすみやかに弁護士に相談することをおすすめします。ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスでも相談をお伺いします。気軽にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています