痴漢容疑をかけられた…! 弁護士が解説する痴漢事件の対処法
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ある日突然、通勤電車で痴漢容疑をかけられて逮捕されてしまった…!
そんなことが、明日あなたの身に起こらないとも限りません。自分は痴漢なんてしないから大丈夫と思っていても、誤って痴漢容疑をかけられたときは、自力で痴漢容疑を晴らさなければなりませんし、逮捕されてしまうと一定期間身柄を拘束され、様々な不利益が発生します。
そのようなことにならないためには、事件発生直後の対応が最も重要です。痴漢容疑をかけられたときには自分で自分の身を守るしかありません。ここでは痴漢の疑いで逮捕された場合の対処法について、ベリーベスト法律事務 福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、痴漢容疑をかけられた場合の対処法
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(1)実際に痴漢をした場合
もし、本当に痴漢をしてしまっていたのであれば、正直に認めるしかありません。
痴漢をやってしまったことは正直に認めつつ、あなたが、弁護士に相談して次に考えなければならないことは、「逮捕されないようにすること」と、「起訴されないようにすること」です。 -
(2)痴漢容疑で逮捕されないために
痴漢容疑で逮捕されてしまうと少なくとも72時間、その後勾留されてしまうと最大20日間、自由を奪われ、身柄を拘束されてしまいます。
ただ、痴漢容疑で捕まった場合であっても、全ての事案において逮捕されるわけではなく、在宅で(逮捕されることなく)取調べを受けることになる場合もあります。逮捕されて長期間身柄を拘束されてしまうと様々な不利益がありますから、まずは、逮捕されないようにしなければなりません。
逮捕されないためにやってはいけないことは、その場から逃走することです。
逮捕されるかどうかのポイントは、「逃亡のおそれがあるか」「罪証隠滅のおそれがあるか」、という観点から判断されます。 ですから、その場から逃走しようとすると、逮捕される理由を作ってしまうことになります。
逃亡のおそれも罪証隠滅のおそれもないことを示すためには
① 痴漢をしたことを認める
② 謝罪をし、同時に身分証明書等を提示して身分を明かす
③ 捜査機関に呼び出されたときは、出頭する旨を約束する
ことが大切です。 -
(3)痴漢容疑で起訴されないために
次に、逮捕を免れた後は、起訴されないようにしなければなりません。
起訴されてしまうと、たとえ執行猶予が付いたとしても99%が前科となってしまいます。
(起訴されずに、不起訴になった場合は、捜査機関に記録が残るという意味で前歴にはなりますが、法律上、前科にはなりません。)
起訴されないためには、被害者との間で示談を成立させることが大切です。
示談が成立すれば不起訴になる可能性が高くなります。被害者にきちんと謝罪をするとともに、慰謝料の支払い等を通じて示談を成立させることが必要です。
そのためには、弁護士に示談交渉の依頼をすることも検討する必要があります。
なお、もし逮捕された場合であっても、示談が成立すれば不起訴となる可能性がないわけではありません。
ただ、逮捕・勾留された場合、逮捕から23日以内に検察官が起訴するかどうかを判断するため、それまでに示談を成立させる必要があるという点で、時間的な余裕は少ないといえます。
逮捕された場合は、自分自身で被害者と示談交渉することができませんから、早急に弁護士に依頼をすることが求められます。
2、痴漢冤罪の場合
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(1)「逃亡のおそれ」がないことを示す
もしあなたが、痴漢行為をしていないのに、痴漢の容疑をかけられた場合も、まずは逮捕されないこと、そして起訴されないことに重点を置かなければなりません。
また、痴漢をしたことを認めるようは発言をしてはいけません。
痴漢冤罪で逮捕されないためには、身分や連絡先を明らかにして、「逃亡のおそれ」がないことを示すことが重要です。
痴漢冤罪で逮捕をされないために、逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれがないことをしっかりとその場で示す必要があります。 まずは、逃亡の恐れがないことを示すために、身分証明書等で身分や連絡先を明らかにしましょう。
なお、この点について、刑事訴訟法217条を根拠に、「犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合」しか逮捕はできないから、住所や氏名を明らかにすることで逮捕を免れることができる、といった主張をする方も見られますが、これは誤りです。 刑事訴訟法217条は、法定刑が罰金30万円以下の軽微な罪の場合にしか適用されませんから、懲役刑が規定されている痴漢(迷惑防止条例違反または強制わいせつ罪)の場合には適用がありません。
また、痴漢容疑をかけられた場合に、駆け付けた駅員等から、ここでは通行の邪魔になるなどといって駅員室に来るように言われる場合があります。
しかし、痴漢をしていない場合は、駅員室に行く必要はありません。
その場で痴漢行為をしていないことをしっかりと告げて、駅員室に行く必要のないこと、また、弁護士を呼ぶことを駅員にきちんと告げることが大切です。
周りの目が気になるかもしれませんが、逆に駅員の目の前で周りの方に自分は痴漢でないことをアピールすることも重要です。
もし、本当に痴漢をしてしまっていたのであれば、正直に認めるしかありません。
痴漢をやってしまったことは正直に認めつつ、あなたが、弁護士に相談して次に考えなければならないことは、「逮捕されないようにすること」と、「起訴されないようにすること」です。 -
(2)「罪証隠滅のおそれ」がないこと示す
捜査機関に、手のひらの線維片の採取を依頼して「罪証隠滅のおそれ」がないことを示しましょう。
罪証隠滅のおそれについては、捜査機関は、痴漢行為を否定していること自体(犯罪行為を否認していること)をもって罪証隠滅のおそれがあると判断する傾向にあります。
そうは言ってもやっていないものを認めてしまうと、後述のとおり後で撤回することが困難ですから、やっていないものはやっていないと否認しつつ、自分の手のひらの線維片(痴漢をした場合、被害女性の着衣の線維片が手のひらに残っている場合が多いので、それが無いことは痴漢をやっていない証拠となりえます)の採取を捜査機関に依頼し、積極的に捜査に協力する旨(証拠を隠滅する気がないこと)を明らかにすることが大切です。 -
(3)不起訴になることの重要性
前述のように、痴漢容疑をかけられた場合、起訴されるか不起訴になるかによって、大きな違いがあります。
もしあなたが痴漢行為をしてしまった場合は、とにかく被害者との間で示談を成立させて不起訴処分を得ることが最優先なのですが、痴漢行為をしていないときは難しい判断を迫られます。
不起訴になるためには、被害者との示談が最も近道なのですが、被害者との間で示談を成立させるということは痴漢行為を認めることになってしまいます。
とはいえ、痴漢行為を否認していると、それだけで起訴されてしまう場合があります。
我が国の裁判において、起訴されてから無罪を勝ち取るのは非常に困難ですし、仮に身柄拘束されたまま起訴されてしまうと、身柄拘束がさらに1カ月以上続く場合があります。
ですから、痴漢行為をしていない場合であっても、起訴されてしまうことの様々な不利益を考慮して、被害者との間で示談をするという選択肢も検討する必要があるのです。
この点については、非常に難しい判断になるので、信頼できる弁護士に相談して決めることが大切です。 -
(4)圧力をかけられても自白をしてはいけない
痴漢行為をしていない場合であっても、起訴を免れるために被害者と示談をする場合があることは前述のとおりですが、その場合であっても捜査機関に対して、「痴漢行為をした」という自白は絶対にしてはなりません。
警察等の捜査機関から「お前は痴漢をしただろう!早く認めないと罪が重くなるぞ」などと圧力をかけられる場合もあるかもしれませんが、一度自白してしまうと、その自白は、裁判になったときに有罪となってしまう有力な証拠となってしまうからです。
万が一、起訴された場合に、自白があるかないかでは裁判に大きく影響することから、もし痴漢行為をしていないのであれば、どんなに圧力をかけられても捜査機関に対して自白をしてはいけません。
3、弁護士へ依頼するタイミング(警察署へ連れて行かれる前に弁護士に電話しよう)
痴漢容疑をかけられた場合は、なるべく早く弁護士に依頼することが重要です。
特に、駅で痴漢に間違われたときは、逮捕されてしまわないようにすることが重要ですから、その時点で弁護士に依頼して対処してもらうと良いでしょう。
また、その時点で弁護士に依頼することができない場合であっても、なるべく早く弁護士に依頼する必要があります。
痴漢に間違われた場合、ご本人がその場ですぐに弁護士に電話できれば一番ですが、状況によってはご本人が弁護士に依頼することは中々難しいかもしれません。
そのような場合は、痴漢に間違われた時点で家族等に連絡し、弁護士を依頼して現場に来てもらうように頼んでおく必要があります。
警察署へ連れて行かれてしまうと、所持品を押収され、外部と連絡を取ることも禁じられてしまい、弁護士に依頼をするまで時間がかかってしまうからです。
万が一、逮捕されて警察署へ連れて行かれた場合には警察署の留置係に直ちに弁護士を呼んでほしいということを明確に告げることが重要です。
4、痴漢容疑で逮捕されてしまった! 逮捕後の流れ
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(1)痴漢容疑で逮捕
痴漢容疑で逮捕されてしまった場合、警察署で被疑者として取調べを受けることになります。ここで、痴漢容疑に対して弁解をする機会が設けられます(弁解録取書という調書が作成されます)。
もし痴漢をしていないのであれば、この時点で明確に否定をしておくことが重要です。
また、逮捕された場合、1回に限り無料で当番弁護士を呼ぶことができますから、警察署の留置係に対し、弁護士を呼んでほしい旨を伝えて、一刻も早く弁護士と相談することが大切です。 もし、本当に痴漢をしてしまっていたのであれば、正直に認めるしかありません。
痴漢をやってしまったことは正直に認めつつ、あなたが、弁護士に相談して次に考えなければならないことは、「逮捕されないようにすること」と、「起訴されないようにすること」です。 -
(2)勾留・勾留質問
逮捕されてから72時間以内に、検察官が勾留請求をするかどうかの判断をします。
逮捕によって身柄拘束できるのは72時間までですが、勾留が認められるとさらに10日間(最大20日間)、身柄拘束が継続することになります。
検察官が勾留請求をした場合、裁判所で勾留質問が行われ、裁判所が勾留するかどうかの判断を行いますが、裁判所が勾留を認めないケースの方が圧倒的に少ないといえます。 -
(3)起訴
勾留は最大20日間で、その間に検察官が起訴するかどうかと判断します。
この段階で被害者との示談が成立している場合や、痴漢を立証する証拠が足りないと検察官が判断した場合、不起訴になる可能性が高くなります。 -
(4)裁判
検察官が起訴した場合、起訴から約1カ月後に、第1回の裁判が開かれます。
なお痴漢の場合、迷惑防止条例違反か強制わいせつ罪で起訴されることになりますが、いずれの場合であっても、裁判員裁判にはならず、1か月に1回の頻度で裁判が開かれることになります。
5、刑事事件はスピード勝負! 弁護士へ依頼するメリット
刑事事件で逮捕されてしまった場合は、一刻も早く身柄を解放してもらうことが大切です。そのためには、痴漢であるという容疑をかけられた段階で、逮捕されないようにするのが一番ですが、仮に逮捕されてしまった場合、勾留されないようにしなければなりません。勾留されるかどうかで、身柄拘束が72時間で済むか、最大23日間に及ぶかという大きな違いが生じるからです。
また、最終的に検察官に事件を不起訴にしてもらうように働きかけることも重要です。
不起訴になれば前科もつきませんが、起訴されてしまうと、無罪を争うことが非常に困難になり、有罪となって前科がついてしまう可能性が高くなります。
このように、刑事事件においては、それぞれの段階において、素早く適切な対応をすることが求められます。特に警察や検察といった捜査機関と交渉をするためには、専門家である弁護士の力が欠かせません。
刑事事件で逮捕されてしまった場合、もしくは逮捕されそうになった場合には、少しでも早く弁護士に依頼することをおすすめします。
6、国選弁護士と私選弁護士の違い
痴漢容疑をかけられた場合、特に身柄を拘束されてしまった場合は、一刻も早く弁護士に依頼する必要があります。
逮捕された容疑が、迷惑防止条例違反ではなく強制わいせつ罪であった場合、勾留段階から国選弁護士制度が利用できます。
国選弁護士制度とは、被疑者・被告人が貧困等の理由で弁護士に依頼することが難しい場合、国が弁護人をつけることによって、被疑者・被告人の権利を守る制度です。
これに対し、被疑者・被告人(またはそのご家族)の意思で依頼する弁護士は「私選弁護士」と呼ばれます。
国選弁護を利用した場合は、ほとんどの場合費用は発生しません。
ただし、国選弁護士制度では、被疑者側で弁護士を選ぶことはできず、対応のスピードも私選弁護士に比べて遅くなりがちになるというデメリットがあります。
痴漢容疑で逮捕された場合は、検察官との交渉や被害者との示談交渉を短い時間で的確に行う必要があり、刑事事件を専門に扱っている弁護士やフットワークの軽い弁護士に依頼した方がよいのは明白です。
費用をかけてでも国選弁護士ではなく、刑事事件に強く対応スピードが早い私選弁護士をつけることをおすすめします。
7、痴漢冤罪で逮捕されないための対策方法
痴漢冤罪で逮捕されないための方法は、まずは、痴漢容疑をかけられないこと、つまり痴漢に間違われないようにすることです。満員電車では女性の後ろには立たない、つり革をつかむ等して手を上にあげておくといったことを日頃から心がけることが大切です。
痴漢容疑をかけられた現場で逮捕されないよう、以下の行動をとることを忘れないようにしましょう。
② 身分を明らかにする
③ 駅員室には行かない
④ 痴漢行為をしていないことを明確に告げる
⑤ 逮捕されそうな場合には弁護士を呼ぶ(家族に連絡して弁護士を呼んでもらう)
さらに、万一痴漢に間違われたときのために、すぐに相談できる弁護士を作っておくと、より安心できます。
携帯電話に弁護士事務所の番号を登録しておくだけでも、痴漢容疑で逮捕されそうになったときにすぐに電話できるというメリットがありますから、普段から万が一のことを考えて準備をしておいた方が良いといえます。
ベリーベスト法理事務所では、刑事担当弁護士が即時に電話でアドバイスを行い、状況によっては現場に急行する「痴漢冤罪顧問弁護士 緊急ダイヤル」サービスをご提供しております。
実際に本サービスをご利用されて、痴漢冤罪を防ぐことができたケースもございます。
詳しくは痴漢冤罪顧問弁護士 緊急ダイヤルをご覧ください。
8、痴漢容疑で逮捕されてしまったときのまとめ
「それでもボクはやってない」という映画でも取り上げられたように、痴漢容疑をかけられた場合に、否認し続けてしまったために、長期間身柄を拘束され、やってもいないのに、様々な不利益を被ってしまうというケースは実際にも少なくありません。
だからといって、やってもいないものを認めて(自白して)しまうと、その自白は後で撤回するのは相当困難になります。
このように、痴漢容疑で逮捕されると、認めるかどうか非常に難しい判断を迫られることから、専門家である弁護士のアドバイスが欠かせません。
また、捜査機関や被害女性との交渉を素早く行う必要があるという観点からも、弁護士に依頼する必要があります。
いざという時にすぐに弁護士に相談できるよう、普段から相談できる弁護士をつくっておくことが、自分の身を守るためには欠かせません。
ぜひ、痴漢冤罪対策には弁護士をご活用ください。
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