居酒屋で強制わいせつ行為をしてしまったら? 被害者との示談交渉の方法を解説

2018年10月02日
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居酒屋で強制わいせつ行為をしてしまったら? 被害者との示談交渉の方法を解説

中洲の個室居酒屋で知り合いの女性と飲んでいた際に、冗談のつもりで無理やり抱きつき、下着の中に手を入れてしまった……という行為は、罪に問われるのでしょうか。もちろん、この行為は強制わいせつ罪に問われる可能性があります。

こうした事実を知ると、心当たりがある方にとって「どのような犯罪になるのだろうか?」「被害届を出されるかも?」「逮捕されるのではないか?」と、大変不安になるのではないでしょうか。

万が一、強制わいせつ罪に問われるような行為をしてしまった場合、逮捕を避けるためには、できるだけ早い段階で被害者との示談を成立させておくことが大切です。そこで、強制わいせつ罪における示談の効果や示談金、交渉のポイントについて、福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、強制わいせつとはどんな犯罪?

まずは、強制わいせつ罪の概要を解説しましょう。心当たりのある行為が強制わいせつに当たるのか、もし有罪判決が下るのであればどのような刑罰が科せられるのかについて知っておきましょう。

  1. (1)強制わいせつの定義と具体的行為

    「強制わいせつ」とは、刑法176条で定められている刑罰のひとつで、端的にいえば、「相手の同意なくわいせつな行為をすること」です。

    なお、相手が13歳以上かどうかによって犯罪の成立条件が異なります
    強制わいせつ罪は、13歳以上の男女に対して「暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をしたとき」、もしくは手段や同意の有無を問わず、13歳未満の男女に「わいせつな行為をしたとき」、罪に問われることになります。

    強制わいせつの具体的な行為には、胸や性器を触る、服を脱がせる、無理やりキスするなどが挙げられます。また、無理やりわいせつな行為をすることそのものが「暴行または脅迫」に該当すると考えられているため、居酒屋で女性に抱きつき下着の中に手を入れてしまった場合は、強制わいせつ罪に問われる可能性が高いといえるでしょう。

  2. (2)強制わいせつ罪の刑罰

    強制わいせつ罪の刑罰は「6ヶ月以上10年以下の懲役(ちょうえき)」です。罰金刑の設定はありません。
    よって、起訴されれば必ず公開される刑事裁判にかけられますし、執行猶予のつかない有罪判決を受ければ刑務所で服役することになります

    ただし、量刑相場は事件の悪質性や被害の状況などによって異なります。
    たとえば、むやみに触る、抱きつくなどのケースでは、相手との示談が成立していれば執行猶予がつくこともある一方で、凶器の使用や計画性が認められるケースでは悪質性が高いと判断され、初犯でも実刑判決となり得ます

  3. (3)酔った勢いでも逮捕されるのか

    冒頭の例のように、わいせつ行為をした際に泥酔していたのであれば「故意ではなかった」として、相手から許しを得られるケースもあるかもしれません。

    しかし、逆に、被害者の怒りを増幅させてしまう可能性もあるでしょう。
    もっといえば、警察による捜査が開始された際の反論としては、かなり弱いでしょう。なぜなら、泥酔していたとしても「責任能力がない」とは見なされないためです。

    実際に泥酔状態で強制わいせつ行為をして、逮捕・起訴されるケースは珍しくありません。「酒は飲んでも飲まれるな」を守ることは、社会生活を送るうえで忘れてはならない、先人の知恵なのです。

2、強制わいせつ事件における示談の効果

強制わいせつ事件で逮捕や起訴を回避するためには、「示談(じだん)」が重要な役割を果たします。強制わいせつは被害者が被害届を出しているかどうか、示談が成立しているかどうかが、逮捕、勾留や量刑の決定に影響するケースが多々あるためです

まずは、強制わいせつ事件における示談の効果を見ていきましょう。

  1. (1)強制わいせつ事件の示談とは

    「示談」とは、被害者と加害者の当事者同士が話し合って事件を解決させることを指します。

    示談が成立したとき、加害者は被害者に対して、示談金の支払いやその他の条件を履行する必要があります。しかし、強制わいせつ事件において示談のメリットは非常に大きいものです。これまで築き上げ、これから歩んでいくだろう社会的地位を少しでも損なわないためにも、できる限り早く示談を成立させておくことが望ましいといえます

  2. (2)示談の効果はタイミングにより異なる

    強制わいせつ事件では、いつ示談が成立するのかによって、その効果が異なります。当然ながら、早ければ早いほどメリットが大きくなります

    ① 逮捕前に示談が成立した場合
    被害者が被害届を提出しないよう約束できるため、逮捕される可能性そのものを回避できる可能性が高まります
    ただし、強制わいせつ罪は証拠がそろえば警察が捜査できる非親告罪になったため、被害者が被害届を提出していなくても、防犯カメラの映像などで犯行を特定され、逮捕される可能性が消えたわけではありません

    ② 逮捕後に示談が成立した場合
    起訴までに示談を成立させることができれば、不起訴処分を狙うことができます
    同時に、「勾留(こうりゅう)」と呼ばれる、最大20日間の身柄拘束も回避できる可能性が高まります。不起訴処分になれば、勾留中でも即日釈放され、前科もつきません。

    ③ 起訴後、示談が成立した場合
    裁判が開かれて有罪判決が下ったとしても、示談が成立していれば執行猶予つき判決を獲得できるかもしれません
    執行猶予がつけば、その期間中に罪を犯さない限りは刑務所へ収監されず、日常生活を送ることができます。実刑判決が下った場合でも、示談が成立している事実によって刑期が短くなる可能性が残ります。


    なお、示談を行わない場合は、逮捕から起訴まで、最大23日間身柄を拘束され、さらに起訴されれば裁判まで引き続き、拘束され続けます。起訴から初回の裁判が行われるまではおよそ1ヶ月かかりますが、その間も社会に戻ることはできません

    裁判が終了しても、強制わいせつ罪では懲役刑のみが設定されているため、今度は刑務所で服役することになるでしょう。当然前科もつきますので、仕事や学校など、これまでの日常に何事もなく戻ることはより難しくなることが考えられます

3、強制わいせつ事件の示談金

前述のとおり、強制わいせつ事件では示談が重要なカギを握ります。その示談を成立させるためには、どれくらいの示談金が必要になるのかも気になるところですが、示談金の額は事件の様態や交渉の内容によって決まるため、一概にいくらとはいえません。 ただし、以下のケースでは比較的示談金が高額になると考えられます。

① 起訴前に示談するケース
起訴されると高い確率で有罪となるため、被疑者にとっては、起訴前に示談を成立することが非常に重要です。そのため、起訴後より起訴前の示談のほうが、示談金が高額になる傾向があります。
ただし、起訴前に示談が成立したからといって、必ず不起訴を勝ち取れるわけではない点に注意が必要です。

② 被害者の処罰感情が大きいケース
事件による被害者の苦しみを、一律に決めることはできません。被害者にとっては、わいせつな行為を受けたこと自体が苦痛ですし、恐怖や不安なども大きいと考えられます。
そのため、被害者が被疑者に対して強い処罰感情がある場合は、示談金が高額になりやすいと考えられます。

③ 被疑者に経済力があるケース
経済力が大きい、社会的立場が高い方が加害者となった場合、示談金は高額になりやすいでしょう。経済力に見合った反省の意を示し、事件の早期解決を図るためにはやむを得ない部分でもあります。


その他、わいせつ行為の悪質性、被害者家族の怒り、被害者の精神的負担、年齢などによっても示談金の額が変わります

4、強制わいせつ事件で示談する方法

逮捕や起訴を避け、起訴後の量刑を少しでも軽くするためには示談をどのように進めればいいのでしょうか。

  1. (1)示談交渉の流れと問題点

    一般的に示談交渉は、話し合いによって示談条件を決定した後、示談書を作成し、示談金を支払うという流れで進みます
    示談交渉を始めるためには被害者と連絡を取り、話し合いの場を設ける必要がありますが、強制わいせつのような性犯罪が起きたケースでは、被疑者やその関係者が被害者に直接連絡することは好ましくありません。

    被害者は被疑者やその関係者に対する嫌悪感情から連絡に応じない可能性が高く、何度も連絡することで余計に恐怖心を与えてしまう可能性があります。

  2. (2)弁護士への依頼が示談交渉の第1歩

    示談交渉を進めるにあたって、まずは弁護士に示談交渉を依頼することが示談成立への第1歩となるでしょう。
    示談交渉の代理人として弁護士が適任とされているのは、事件の当事者ではないことはもちろん、法律の専門家であり、守秘義務があるためです。
    実際に、これまで連絡を拒否していた被害者も、改めて弁護士が示談交渉を持ちかけたところ、応じてくれたというケースが少なくありません

    示談では、逮捕や起訴の回避や処分の軽減、被害者との賠償金トラブルを防ぐなど、被疑者にとって重要な目的を達成する必要があります。そのためには、専門家である弁護士に依頼し、円満な示談成立を目指したほうが、より安心できる結果を得られるでしょう

  3. (3)早期の交渉開始がポイント

    弁護士への示談交渉依頼は、できるだけ早い段階で行うことが大切です。

    逮捕前に示談を成立させることで逮捕を回避することができますし、万が一逮捕されてしまっても起訴前に示談が成立すれば不起訴処分の可能性もあるためです。刑事事件では、逮捕から起訴までに最長で23日しか猶予がありません。その間、加害者自身は被疑者として、身柄を拘束され続けることになります。

    また、被害者出来る限り早く謝罪の意思を伝えることで、被害者の処罰感情が軽くなり、示談が成立しやすくなるというメリットもあります。

    強制わいせつ事件を起こしてしまったのであれば、速やかに弁護士に依頼して、被害者との示談交渉を進めるようにしましょう

5、まとめ

今回は、強制わいせつ事件における示談の効果や示談金、示談交渉のポイントについて紹介しました。示談には、相手への謝罪と反省の意を示す役割のほかにも、逮捕の回避や不起訴の獲得、被害者との間に生じる可能性がある、賠償金トラブルの解決などの効果が期待できます。

逮捕されてしまった場合は特に、起訴までに示談を成立させておくことが好ましいでしょうただし、逮捕されてしまえば、加害者自身が動くことはできませんできるだけ早くに弁護士に事情を説明して示談成立に向けた対応をしてもらうようにしましょう

強制わいせつ容疑で逮捕されるかもしれないと不安を感じている方や、被害者と円満な示談成立を考えている方はベリーベスト法律事務所 福岡オフィスにご相談ください。福岡オフィスの弁護士が示談交渉をサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています