家族が公然わいせつ罪で逮捕されたらどうすればいい? 弁護士が解説
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突然、警察から電話!「夫(息子)を公然わいせつ罪の容疑で逮捕した」と告げられたら…? どうしたらいいか分からず、不安な気持ちになってしまうことでしょう。面会して話を聞こうとしても、警察に面会を拒まれ、絶望的な気持ちになってしまう方も少なくありません。
そこで今回は、公然わいせつ罪とはどのような犯罪なのか、また、強制わいせつ罪との違いとともに、逮捕から裁判までの流れについても解説します。さらに、弁護士に依頼するメリットなどについても、福岡市の弁護士が詳細に解説します。
1、公然わいせつ罪とは?
「わいせつ」という言葉がついている「公然わいせつ罪」。その言葉を耳にした瞬間、「強制わいせつ罪」と混同して心配される方もいるでしょう。
しかし、これら2つは異なる罪に問われる行為そのものや意義が異なります。
まず、「公然わいせつ罪」とは、どのような行為によって、どのような理由で罪に問われるのかを知っておきましょう。
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(1)公然わいせつ罪と強制わいせつ罪では、問われる罪の中身が異なる
公然わいせつ罪は、次に記した刑法174条で定められているとおり、「公然」と「わいせつな行為」をしたことが罪に問われる犯罪です。
- 公然わいせつ罪(刑法第174条)
「公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料に処する」
条文にある「拘留(こうりゅう)」とは、30日未満の身柄を拘束する刑です。また、「科料(かりょう)」とは1万円未満の金銭を納める刑を指します。
具体的には、以下のような行為が公然わいせつ罪に問われることになります。
- 街中を裸で歩き回る
- ショッピングモールや道端で性器を露出する
- 人前で自慰行為をする
- インターネットなどを通じてリアルタイムで局部を露出する動画を配信する
つまり、公然わいせつ罪は、「不特定の人、もしくは多数の人が見ることができる状態で、他人の性的羞恥心を害し、一般的な性的道義観念に反する行為が社会風俗を乱す」、と法律で定めたもので、公序良俗に反したことを理由に刑罰の対象としています。
多くのケースで目撃者がいるため、現行犯逮捕が多いという特徴があります。
混同される犯罪に「強制わいせつ罪」があります。これは、特定の人物の人生や尊厳を踏みにじり侵害する性質の犯罪です。「公然わいせつ罪」とは、処罰に至る理由や状況など、性質が大きく異なる点に、注意が必要です。
公然わいせつ罪は、懲役や罰金だけでなく拘留や科料という軽い刑まで規定されていることから、ほかのわいせつ罪に比べれば、重い犯罪ではないともいえるでしょう。
ただし、罰金や拘留、科料のいずれも、刑罰です。つまり前科がつくという点は忘れないようにしておきましょう。 - 公然わいせつ罪(刑法第174条)
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(2)公然わいせつ罪は、不用意に犯しやすい犯罪
公然わいせつ罪は、不用意に犯してしまう可能性が高い犯罪でもあります。
たとえば、泥酔した結果、居酒屋の店内や帰宅途中で全裸になった、友達との間でノリや罰ゲームなどを理由に、ショッピングモールで局部を出した……などのケースでも、公然わいせつ罪として逮捕される可能性があります。
身体部分が、不特定人または多数人が「見ることができる状態」にした時点で、公然わいせつ罪の要件を満たすことになります。つまり、誰かに見せることを目的に露出した場合でなくとも罪に問われますし、実際に誰かに見られたかどうかは、一切関係ありません。
誰かが見ていなくても、公共の場でわいせつな行為をしたことが発覚した時点で、公然わいせつ罪の要件を満たすことになる点に注意が必要です。
2、公然わいせつ罪で逮捕されたあとの手続きの流れ
公然わいせつ罪で逮捕されたあとは、次のような流れで手続きが行われます。
逮捕から48時間を経過するまでに、警察から検察庁へと身柄が移されます。これを送検(送致)といいます。送検を受けた検察官は、引き続き「被疑者」の身柄を拘束して、捜査する必要があるかどうかを判断します。身柄拘束の必要があると判断された場合、検察官は裁判所に勾留請求をします。
勾留請求が認められてから、原則10日間、さらに捜査が必要であると判断されれば、延長を含めて最大20日間の身柄拘束を受けます。この勾留期間中に、検察官は被疑者の罪を刑事裁判で問う必要があるかどうかを判断します。
起訴されれば刑事裁判に、不起訴処分を受ければその時点で釈放となります。
したがって、逮捕されたときから最大で23日間の身柄を拘束される可能性があるということです。刑事事件として起訴されるかどうかは、拘束されている間を中心に、決められていくことになります。
3、公然わいせつ罪で弁護士を依頼するメリット
では、家族が公然わいせつ罪で逮捕されたとき、弁護士を依頼するメリットはあるのでしょうか。実際に行われる弁護活動について解説します。
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(1)弁護士は自由に被疑者と面会できる
逮捕され、留置所で留置されている段階では、たとえ家族だろうと、弁護士以外の者は被疑者と面会できません。したがって、逮捕されてしまったあなたの家族にとっては、弁護士が唯一の味方となります。
また、検察官に管轄が移る「勾留」の段階でも、検察官の申請によって、裁判官が面会禁止の処分をすれば、家族でも面会できない場合があります。たとえ面会できたとしても、勾留期間中は、平日の日中に15分程度の面会しか認められません。しかも、警察官の立ち会いのもとで面会することになります。
しかし、弁護士であれば、面会を禁止されることはもちろん、時間を制限されることもありません。
弁護士を依頼するメリットのひとつは、土、日、祝日、夜間、必要があれば深夜でも、面会することができる点にあります。面会時間の制限もなく、警察官の立ち会いも禁止されます。精神的な支えになるだけでなく、自由に主張したいことを弁護士に伝えることができます。また、弁護士は書類のやり取りや書籍などの差し入れも自由に行えます。 -
(2)勾留に対して異議申し立てを行える
勾留決定に対して不服がある場合、弁護士は「準抗告(じゅんこうこく)」と呼ばれる異議申し立ての手続きが可能です。法的な手続きを行えることも、弁護士に依頼するメリットのひとつです。
ただし、残念ながら裁判所が準抗告を認めたケースはあまり多くはありません。
それでも、弁護側が安易な身柄拘束を認めないという姿勢を示すことは、捜査官や裁判官が、この事件の処理に慎重になることを促す効果があります。 -
(3)検察官から不起訴や起訴猶予処分を勝ち取る弁護活動を行う
本人や家族にとってもっとも重要なことは、「なるべく早く身柄拘束から解放されること」と「前科がつかないようにできるかどうか」ではないでしょうか。
弁護士は、面会を通じて、逮捕されてしまった本人から、直接、犯行前後の事情を聞き取り、取り調べにはどう対応をしたらよいのかをアドバイスします。また、検察官に対しても弁護活動を行います。さらに、場合によっては、逮捕・勾留の事実を知った職場などに対し、不起訴処分で終了した事実を、職場などへ説明することもあります。
刑事事件において、検察官が起訴した場合、99%の確率で有罪になるといわれています。「前科」の記録は、生涯、捜査機関のデータに残ることになります。
前科とならないためには、検察官から不起訴処分を勝ち取ることが必要です。よって、起訴されてしまう前に、できるだけ早く起訴されないための活動を行うことが重要になります。
なお、不起訴処分の理由としては、以下の3つの状況に分けられます。
- ① 嫌疑なし:無罪。人違いで逮捕されてしまった場合など。
- ② 嫌疑不十分:証拠が不十分で罪を犯したとは言い切れない場合など。
- ③ 起訴猶予:罪を犯した証拠はあるが、本人の性格や境遇、反省などを総合的に判断し、今回は起訴しないという判断をした場合など。
弁護士による活動は、検察官から起訴されることを避けるために行うだけではありません。あなたの家族が速やかに普通の生活に戻れるよう、支援します。
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(4)起訴後は、直ちに保釈請求を行うことができる
起訴されてしまった場合でも、捜査段階から弁護士を選任しておけば、直ちに「保釈」の手続きをとることができます。保釈は、保釈金を裁判所に納める代わりに、被告人の身柄を解放してもらう手続きです。
刑事裁判に対応するための弁護人を国選弁護に任せる場合、起訴されてから国選弁護人が決まるまで、日数がかかります。その間、被告人となったあなたの家族を保釈することができません。
しかし、捜査段階からあらかじめ私選弁護人に依頼しておけば、起訴されたら直ちに保釈の手続きをとり、早期に身柄の解放が期待できます。
4、まとめ
公然わいせつ罪で逮捕されてから起訴・不起訴が決まるまでの中で、弁護士がどのような活動を行うかを説明しました。
弁護士は、逮捕された方の利益を守る存在として、法律によりさまざまな権限を与えられた唯一の職業です。ここでご紹介した活動は、実のところ、弁護士が刑事事件の弁護人として対応可能な弁護活動の、ほんの一部でしかありません。
もし、ご家族が公然わいせつ罪の容疑で逮捕されてしまったら、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。福岡県中央警察署、博多警察署からも近く、即対応できる福岡オフィスの弁護士が、できる限りの弁護活動をさせていただきます。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています