突然身に降りかかったストーカー容疑! 冤罪から回避するためのポイントとは
- その他
- ストーカー
- 冤罪
福岡県警朝倉署で平成30年2月、ストーカー容疑で60代の女性が逮捕された事件がありました。ストーカーに関連する事件は、全国的に急増し、身近な犯罪のひとつとなりつつあります。警視庁が発表した資料によると、平成29年は、ストーカー規制法施行後最多の相談件数を記録しました。過去には、ストーカー殺人事件が何件も起こっていることから、警戒する方が増えていると推察できます。
しかし一方で、ストーカー容疑で逮捕された方の中には無実の罪だと訴えるケースも皆無ではありません。たとえば、「社会人としてごく一般的なコミュニケーションをとっているだけなのに、相手がストーカー被害を訴えた」……ということもありえるのです。
このようなケースの場合においても、警察は、念のための意味も含めて、事情を聞きに来ることがあります。それでも、警察が来るとなると、驚くとともに悪いことをしていなくても焦ってしまうことでしょう。
身に覚えのないストーカー容疑で訴えられたら、どうしたらいいのでしょうか? ストーカー容疑で警告や逮捕されてしまったときの対処法を、福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、ストーカー規制法とは
ストーカー規制法の正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」です。その名のとおり、ストーカー行為を規制するために作られた法律です。
法律が作られたきっかけは平成11年に発生した「桶川女子ストーカー殺人事件」です。それまで日本ではストーカー行為に対する法規制がありませんでした。警察も民事不介入の姿勢をとっており、具体的な事件に発展するまで動けないといった問題点がありました。
このストーカー規制法ができたことによって、「恋愛感情による社会的に行きすぎた行為」を処罰する意識が高まるとともに、ストーカーの存在やストーカー行為が世間で広く認識されるようになりました。
現在、警察ではストーカー行為を受けた被害者の生命を守る相談体制を充実させており、被害者からの申し出によってストーカーに対して警告や禁止命令を出すことができます。
なお、これまでストーカー規制法では対応できなかった、恋愛感情がないつきまといや悪意あるSNSやメール送信などのいやがらせをはじめとしたストーカー行為については、各都道府県で設定されている、通称「迷惑防止条例」にもとづいて規制されることになります。
2、ストーカーになるのはどのような行為か?
ストーカーの被疑者には、恋する相手や元恋人、元配偶者といった特定の相手に対する恋愛感情や、「告白しても受け入れられなかった」「復縁を願っても聞いてもらえない」など、利己的な好意を満たしたい一心で相手に一方的なアプローチを繰り返す人が該当します。
ストーカー規制法で定義されているストーカーにあたる行為は、「つきまとい等」と「ストーカー行為」のどちらかが行われたときとされています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
-
(1)つきまとい等
「つきまとい等」とは、恋愛感情や特別な感情を抱く特定の相手に行う次のような行為が該当します。
① つきまといや待ち伏せなど
尾行、待ち伏せ、行く手を阻む行為、相手の自宅や職場、学校などを見張る、みだりにうろつくなど、相手の気持ちを考えず、自分の感情を満足させるために行われる待ち伏せや押しかけ、つきまといを繰り返すとストーカー規制法違反と判断されるおそれがあります。
② 監視していると告げること
相手の行動や服装を電子メールや電話で告げたり、監視している事実を相手に告げたりする行為が該当します。
たとえば、「ずっと監視している」「私の目から離れられない」など、脅すような連絡や、相手が自宅に帰宅した直後に「おかえりなさい」「お疲れさま」などと電子メールや電話を日常的に行うことも、ストーカー規制法違反に該当します。
さらに、SNSやネットの掲示板などで、監視した内容を投稿することなど、相手に対して、いつも監視していることを告げる行為もストーカー行為にあたるでしょう。
③ 面会や交際を申し込むこと
「デートしてほしい」「話を聞いてほしい」「またつきあってほしい」など、面会や復縁を繰り返し要求する行為や、一方的にプレゼントを贈りつける行為も規制の対象です。
面会や交際、復縁する義務は相手にはありません。一方的な感情をむき出しにして迫る行為が該当します。
④ 無言電話や繰り返し連絡をすること
無言電話や、携帯電話や会社、自宅の電話番号に繰り返し電話を掛けることも、いやがらせ行為にあたるため、規制対象となります。
特に、相手から「連絡しないでほしい」と告げられているにもかかわらず、電子メールやSNSのメッセージ、FAXを繰り返し送信するなど、相手と直接話そうと何度も連絡をとろうとすることもストーカー行為に該当します。
⑤ その他
冒頭で挙げた事件のように、汚物や動物の死体といった相手が嫌がるものを自宅や職場に送付する行為も規制対象です。さらに、誹謗(ひぼう)中傷する内容を直接、もしくはSNS、ビラなどで発言したり、メールしたりして名誉を傷つけることも、ストーカー行為にあたります。
相手の気を引く目的で、わいせつな写真を送る行為や、電話や手紙で相手に性的羞恥心を侵害する内容を告げる行為や、インターネット上に相手の写真をアップするなどの行為も規制対象となります。 -
(2)ストーカー行為
特定の同じ相手に何度も「つきまとい等」をすることが「ストーカー行為」です。相手が身体の安全や不安を感じて、行動が大きく制限されるような状態に陥ると「ストーカー行為」と判断されます。
いずれのケースも「嫌がられている」にもかかわらず「繰り返し」行われているという事実が大きなポイントとなります。つきまとう側にどのような理由があろうと、相手にとって「嫌がっているのに繰り返しつきまとわれている」と感じれば、ストーカー行為とみなされる可能性があります。
3、警察からの警告を受けたら
警察は、被害者側から被害の申し立てがあり、ストーカー行為が認められると、警告を出すことができます。
警察からの警告は電話か書面で行われます。過去の事件で、留守番電話へメッセージを残す程度の警告であり、しかも電話番号が誤っていたためか、最終的には殺人事件に発展してしまった事件がありました。そのためか、警察暑によっては口頭注意の上、これ以上ストーカー行為をしないという誓約書を書かせる場合もあります。
警告に期限はありませんが、口頭注意でも警察に記録として残ることがポイントです。
警告の段階でストーカー行為をやめれば、ストーカー規制法違反容疑で逮捕や起訴といった流れに発展しないことがほとんどです。
もし、無実の罪であれば、警察にその旨を話しておくとよいでしょう。警告の段階では、刑事事件における「疑わしきは罰せず」の原則が適用されません。過去の事件で、警察が被害届を放置したことにより殺人事件に発展した例が多々あることから、警告せざる得ないという事情があるようです。
特別な事情がない限りは、警告がきたあとは、相手には近づかない・連絡もとらないほうがよいでしょう。何もないのに警察に訴える相手とはコミュニケーションがとないと考えたほうが賢明です。相手によっては、今後の不安があるケースもあるでしょう。あらかじめ弁護士に相談しておくことをおすすめします。
4、逮捕されたらどうなる?
警告をされても無視してつきまといや連絡を繰り返していると、警察に逮捕されてしまいます。逮捕された場合は、次のような流れで手続きが進められます。
-
(1)逮捕から勾留請求まで(最大72時間)
警察署に身柄を拘束されて48時間以内の捜査を受けたあと、検察へ送致されます。検察でも24時間以内の捜査を受けます。警察は、「罪を認めれば家に帰れる」などと迫るかもしれません。しかし、本当に冤罪であれば、弁護士を呼んで、対策を練ってください。
逮捕から勾留までの72時間で被疑者と自由に接見できるのは弁護士のみです。家族であっても面会などはできなくなります。 -
(2)勾留(最大20日間)
逮捕から72時間以内、もしくは送致から24時間以内に釈放できないと検察が判断したときは、検察は裁判所に「勾留請求」を行います。「勾留(こうりゅう)」とは、捜査のため、一定期間身柄を拘束し続けることを指します。原則10日間ですが、延長期間を含めて最大20日間勾留されます。
検察は、勾留期間中に行う捜査を通じて、起訴するかどうかが決定します。無実の罪で前科がついてしまうことを回避するためには、起訴されないようにする必要があります。 -
(3)起訴
裁判所に起訴されると裁判が行われます。
ストーカー事件の場合、起訴されると約99%の事案で有罪判決が下されます。
ただし、捜査が行われた事件のうち約65%は不起訴処分と判断されますので、不起訴を目指すことが最優先です。
逮捕前、もしくは逮捕後の弁護活動がその後の人生を左右するといえるでしょう。
5、ストーカー行為の刑罰
ストーカー規制法違反で有罪が確定してしまうと「6ヶ月から1年以下の懲役または50万円から100万円以下の罰金」が科せられます。
当然、前科がつくことになるため、就職活動が不利になる、職業が制限される、海外渡航に制約を受ける、結婚の障害になるなど、さまざまなリスクが発生します。
もしあなたが、つきまといなどストーカー規制法違反に該当する行為をしていないのであれば、早急に弁護士に依頼して、該当の被害届は虚偽である旨を主張するなどの対応をしたほうがよいでしょう。
6、ストーカー冤罪(えんざい)で弁護士に依頼するメリット
ストーカー事件は、相手側が告訴するかどうかが起訴に大きく影響します。相手の発言が虚偽である場合は、その事実を証明する必要があるでしょう。
弁護士は、逮捕前であれば逮捕されないように、逮捕後であれば早期釈放してもらえるように、起訴前であれば不起訴となるように、状況に応じた弁護活動を行います。
基本的に、相手は不安を感じてストーカーを警察に相談しているのだろうと推察できます。相手を刺激することも十分考えられるため、あなた自身が被疑者側と直接交渉することはおすすめできません。あなた自身の立場も不利になるため、相手と接触することは一切やめておきましょう。
「お金を貸していて返済を求めている」など、やむをえず接触する必要がある場合は、弁護士を通じて連絡することを強くおすすめします。
ストーカー事件は、個々に内容が異なることもあり、テンプレートのような対応では難しいことが多々あります。したがって、逮捕の可能性があるときは、まずは弁護士に相談することを強くおすすめします。
7、まとめ
ストーカー行為をしているわけではないのに警察に警告を受けた、逮捕される可能性があるかもしれないという不安がある方へ、ストーカー規制法の詳細と対処法を紹介しました。
ストーカー行為は被害者が警察に相談することで捜査がはじまります。
そして、相手が拒否しているにもかかわらず連絡をとること自体が問題視されてしまいます。さまざまな事情があるかもしれませんが、できる限り早く弁護士に依頼して対応を考える必要があるでしょう。
ストーカーの冤罪で逮捕されるかもしれないと心配な方は、まずはベリーベスト法律事務所・福岡オフィスまでご相談ください。福岡オフィスの弁護士が適切なアドバイスを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています