手錠されないのに逮捕!? 早く帰ってきてもらうためにできること

2022年07月25日
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手錠されないのに逮捕!? 早く帰ってきてもらうためにできること

テレビニュースや新聞記事など、あらゆるメディアで「逮捕」というフレーズを目にする機会は少なくありません。

福岡県警察のホームページには「事件検挙掲示板」が開設されています。この掲示板から、福岡・北九州・筑豊・筑後の地区別で1週間以内の逮捕・検挙情報を見ることが可能です。福岡県下で1日に10人以上捕まっている日もあり、意外にも身近なところで逮捕が行われています。

逮捕といえば、刑事ドラマなどでは警察官が「逮捕する」と告げたうえで手錠をかけるシーンが描かれています。しかし、現実では手錠されずに家族や親族の逮捕が成立し、驚いたという方もいるはずです。

本コラムでは、逮捕の基本的な考え方に触れながら、手錠をかけられなくても逮捕が成立する理由、手錠を使われずに逮捕されるケースなどを、刑事問題に詳しい福岡オフィスの弁護士が紹介していきます。

1、手錠をかけられていないのに逮捕? 逮捕の基本的な考え方

一般的には、「警察官に手錠をかけられたら逮捕」というイメージを持っている方が多いでしょう。しかし、手錠されなくても逮捕が成立する場合もあります。本章では、この理論について解説します。

  1. (1)「逮捕」とは

    逮捕について「犯人を捕まえて処罰すること」と理解しているなら、それは間違いです。逮捕には、処罰を下すような制裁としての性格はありません。

    逮捕とは、犯罪の疑いがある「被疑者の身柄を拘束する処分のこと」です。逃亡や証拠隠滅を防ぎ、その後の正しい刑事手続きを受けさせるために捜査機関のもとで行われます。これは強制処分の一種です。

    この段階では、まだ犯罪の疑いがあり、捜査の対象となっているに過ぎません。たとえ本人が罪を認めていても、罪を犯したと決まったわけではないのです。
    罪を犯した人、つまり犯人と呼べるのは、刑事裁判で有罪判決が下された段階になります

  2. (2)逮捕と手錠の有無は関係がない

    逮捕によって身柄の拘束を受けることになると、自由な行動が大幅に制限されます。ここでいう「拘束」は「物理的に身動きを取れなくする」という意味ではありません。

    手錠をかけられたり、捕縄(ほじょう)や腰縄(こしなわ)などで縛られたりしていなくても、現実的に自由な行動ができない状態になれば逮捕が成立します

    たとえば、捜査員に取り囲まれて逃げ場がない、腕をつかまれて自由に行動できないといった状態で「○時○分、○○罪の容疑で逮捕する」と警察官に告げられた場合は、手錠などによる拘束がなくても逮捕された状態と考えるべきです。

2、手錠をされない逮捕はどんなケース? 法律の規定は?

手錠をかけられなくても逮捕が成立するとはいえ、実際に逮捕時の映像などを見ると、両手部分を布製のカバーや捜査員の上着などで覆って隠されている状況が確認できます。

しかし、先に述べたように手錠なしで逮捕が成立するなら、わざわざ手錠が使われることに違和感を覚える方もいるでしょう。
ここからは、法的な角度から逮捕の際に手錠されるケースを確認していきます。

  1. (1)「手錠」に関する法律の規定

    逮捕と手錠の関係を法的に示すのが、警察捜査の基本を定める「犯罪捜査規範」です。

    犯罪捜査規範第127条1項には、「逮捕した被疑者が逃亡し、自殺し、又は暴行する等のおそれがある場合において必要があるときは、確実に手錠を使用しなければならない」という定めがあります。まるで、逮捕の際には手錠をかけられるものである、というルールがあるように思えるでしょう。

    ところが、同第126条1項には、逮捕を行うにあたって「必要な限度を超えて実力を行使することがないように注意しなければならない」と示されています。

    つまり、逮捕した被疑者に逃亡・自殺・暴行などのおそれがない、あるいは手錠をかけて身体の自由を奪わなくてもこれらの危険を十分に回避できるといった状況であれば、手錠をかける行為は「必要な限度を超えた実力行使になる」と捉えることが可能です

  2. (2)手錠されない可能性が高いケース

    警察官に手錠されるかどうかは、「被疑者が逃亡などを図るおそれがあるか」という点で判断されます。

    被疑者が以下のようなケースに当てはまる場合は、手錠をされずに逮捕となる可能性があるでしょう。

    • 警察官に対し、逃亡や自殺、暴行などのおそれを感じさせない場合
    • 警察署の取調室や捜査車両の中で逮捕されるとき


    しかし、上記に当てはまる場合であっても、逮捕の際に手錠をかけられてしまうことがあります。それは、そもそも「逮捕」が被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための処分だからです。つまり、逮捕の対象になった時点で、被疑者に逃亡などを行うつもりがなくとも、万が一の予防のために手錠を使って逮捕を行う必要性があるといえます。

    そのため、「こうすれば絶対に手錠されない」と言い切ることはできず、あくまで手錠されない可能性があるケースだと理解しておきましょう。

3、逮捕されるとすぐには帰宅できない? 面会なら可能?

警察官から目の前で逮捕状を示されたり、「○時○分」と時間を告げられたりといった状況なら、手錠がなくても逮捕されたのは確実です。

そこから法的な身柄拘束が始まり、しばらくは面会することができません。では、逮捕された後はいつから会うことができるようになるのでしょうか。また、早期釈放できるケースはあるのでしょうか。

ここからは、基本的な逮捕後の流れや釈放について説明します。

  1. (1)逮捕後の一般的な流れ

    警察に逮捕されると、被疑者は基本的に以下の流れをたどることになります。

    • 逮捕(警察と検察官による取り調べ)
    • ↓釈放されない場合
    • 勾留(検察官による追加の取り調べと起訴・不起訴の判断)
    • ↓起訴になる場合
    • 刑事裁判(有罪・無罪の判断)


    まず逮捕後、勾留されるまでの最大3日間は面会することができません。ただし、窓口で申し込みを行うことで、差し入れすることは可能です。このとき、留置場での差し入れルールが定められているため、その基準に従うことが基本となります。

    面会できない3日は、警察と検察官による身柄拘束(警察署の留置場で事件に関する取り調べ)の期間です。身体拘束は警察側で最長2日続き、その後、検察官側に引き継ぎが行われるとさらに1日続くので、最大3日間となっています。この警察から検察官への引き継ぎが、「送致(送検)」と呼ばれる手続きです。

    送致後、検察官による取り調べの中でさらに捜査が必要だと判断された場合、検察官は裁判官に「勾留」を請求することになります。それが認められると、勾留として原則10日間、延長されるとさらに10日間の拘束(最長20日間)がなされます。

    前述のとおり、この勾留期間に入ると面会できるようになりますが、自分の都合で自由に会えるわけではありません。留置場で定められたルールに従う必要があり、また、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合は面会禁止になるケースもあります。

    つまり、逮捕から勾留の最長23日間は、捕まった家族や親族に会いたくても会うことができない可能性があるのです。

    この23日間では、刑事裁判を起こすべきか、それとも釈放するべきかを警察官や裁判官が判断するための捜査がなされています。刑事裁判になる場合は起訴、釈放される場合は不起訴もしくは処分保留の場合です。

    起訴されると、刑事裁判の被告人として引き続き勾留となり、身柄の拘束が行われます。しかし、このときには一時的に拘束を解いてもらうために保釈請求を行うことが可能です。

    仮に保釈なしに勾留が続く場合、その期間は留置場から出ることができないことになるため、勤務先から解雇されてしまったり、精神的に苦しい思いをしたりする可能性があるでしょう。

    初回の裁判は起訴から1~2か月後に行われ、それ以降はおおよそ月に1度のペースで裁判が続きます。最終的な判決が下されるまで数か月~半年くらいの時間を要したり、事件の内容や主張の展開によっては、さらに時間が必要になったりする場合も考えられます。

    捕まった家族や親族のためにも、一時的でも身柄の拘束が解除されるように動くことをおすすめしますが、保釈請求を行う際はさまざまな準備が必要です。
    適切な方法で保釈請求を進めていくためにも、弁護士に相談するとよいでしょう

  2. (2)逮捕されても早期釈放されるケース

    これまで説明したように、逮捕された後は一定期間、自由を許されず、面会などもできない場合がありますが、早い段階で身体拘束が解かれること(早期釈放)もあります。

    早期釈放が期待できるケースは、以下のとおりです。

    • 逮捕後の捜査で、犯人ではないことが明らかになった
    • 示談が成立し、被害者が被害届や刑事告訴を取り下げた
    • 検察官が勾留を請求しなかった、あるいは裁判官が勾留請求を却下した


    刑事事件の流れに身を任せているだけでは、早期釈放の実現は難しく、捕まった家族や身内のストレスや不安が募るばかりです。早期釈放を望むなら、被害者との示談交渉や勾留の阻止といった積極的なアクションが欠かせません

    ただし注意点として、早期釈放や起訴後に保釈されたからといって、その事件に何も関与しなくてよくなるわけではないことは念頭に置いておきましょう。
    微罪処分や不起訴処分とならない限りは、捜査機関から呼び出しを受けたら裁判所や検察庁へ出向かう必要があったり、その最中に有罪判決が下されれば、再度拘束されたりすることとなります。

4、素早い釈放を望むなら弁護士に相談を

逮捕・勾留による身柄拘束が長引いてしまうと、会社からの解雇、学校からの退学、家庭内の不和といった社会生活での大きな不利益を招くおそれがあります。
早期釈放により、無用な不利益を避けるためには、弁護士からのサポートを受けることがおすすめです。ここからは、その理由をご紹介いたします。

  1. (1)勾留の回避による釈放の可能性を高めることができる

    逮捕直後の段階で弁護士にサポートを依頼すれば、素早い示談交渉や検察官・裁判官への積極的なはたらきかけによって、捕まった家族や親族の勾留を回避できる可能性が高まります

    もし勾留が決定してしまうと、最低でも10日間、延長を受ければさらに10日間の最長20日間は身柄拘束が必要です。つまり、回避できれば勾留満期日よりも早く釈放されることになります。

  2. (2)不起訴による釈放が期待できる

    勾留が満期を迎えるまでに検察官から判断を下されますが、その期間の途中であっても起訴をあきらめさせる事情が生じれば不起訴となりえます。そうなると、刑事裁判は開かれません。つまり、その時点で身柄を拘束される必要もなくなり、直ちに釈放されます。

    弁護士による示談交渉など、積極的なアクションがあれば早期釈放からの不起訴を実現できる可能性が高まるでしょう。家族や親族などの不起訴判断の確立を高めるためにも、弁護士にアドバイスをもらうことがおすすめです。

  3. (3)保釈による勾留解除をサポートできる

    検察官が起訴に踏み切った際は、そもそも勾留される場合とされない場合があります。たとえば軽微な犯罪など、身体拘束をする必要がないと判断される場合は、「在宅事件」として今までどおりの日常を送る中で捜査してもらえることもあるでしょう。

    ただし勾留が確定すると、不起訴が決定するまでか、起訴されて刑事裁判が始まってから終了するまでは身体拘束が続きます。一時的に勾留を解除するためには、裁判前に保釈の申請を行い、それを認めてもらうことが必要です。保釈が承認された後は、留置場を離れ、普段どおりの日常生活を過ごしながら刑事裁判を継続することができます。

    保釈請求をせずに裁判が始まり、懲役・禁錮の実刑や拘留といった自由刑の判決が下された場合は、自宅に帰ることはできません。刑事裁判が終了すると、そのまま刑事施設に収監されることになるからです。

    保釈の請求は、起訴された被告人に認められた権利です。
    ところが、法律で定められている要件が厳しいため、実際には裁判官の裁量により判断されることが多い傾向にあります。この実情により、どのような主張を尽くせば保釈が認められやすいのかを個人で判断し、対策を尽くすのは困難です。

    適切な形で身柄の拘束を解くには、弁護士によるサポートは欠かせません。

5、まとめ

逮捕されるときに手錠がされなくても、逮捕が成立する理由について説明しました。もし警察官に逮捕を告げられたり、逮捕状を示されたりするような状況があれば「逮捕された」と考えるべきです。
その後、通常の刑事手続きの流れに従うのみでは、最長23日間の身柄拘束期間だけでなく、起訴されてしまえば刑事裁判が終わるまで会うことができないおそれがあります。

身体拘束の状況が長く続くと、捕まった方の精神面や日常生活に問題が出てしまうこともあるため、逮捕された早いうちから拘束解放に向けて弁護士に相談することがおすすめです。

家族や親族の早期釈放を望むなら、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 福岡オフィスにお任せください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています