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役職手当に残業代は含まれる? それぞれの関係性と確認すべきポイント

2022年12月19日
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役職手当に残業代は含まれる? それぞれの関係性と確認すべきポイント

福岡労働局が公表したプレスリリースによると、令和3年度に長時間労働が疑われるとして監督指導の対象となった事業場は1302事業所でした。このうち、374事業場で違法な時間外労働が認められ、是正や改善に向けた指導が行われたことが公表されています。

さまざまなケースはもちろんありますが、長時間にわたる労働が問題になりやすい役職の代表格が、管理職(役職者)でしょう。実際に会社から役職手当とは別に残業代が支払われていない、すなわち「役職手当に残業代が含まれている」と説明されるケースが存在するようです。

しかし、このような会社による取り扱いは、労働基準法に照らして不正確・不適切である可能性があります。本コラムでは、残業代(残業手当)と役職手当の関係性や、会社に対して未払い残業代を請求する際のポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、役職手当と残業代は別物|支給要件・金額などは別個に判断

「残業代は役職手当に含まれている」と、会社から説明を受けている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、役職手当と残業代は別物です。

したがって、役職手当に残業代を含めて支払う会社の取り扱いは、労働基準法に照らして不適切な可能性が高いでしょう。まずは、役職手当と残業代の各支給要件について解説します。

  1. (1)役職手当の支給要件

    役職手当(職務手当、管理職手当など)は、労働契約の定めに基づいて支給されます。したがって、労働契約書または就業規則で定められた、役職手当の支給要件に該当すれば、会社は労働者に役職手当を支払わなければなりません。ここで登場する労働者とは、従業員、社員(正規非正規問わず)を指すものです。

    ただし、労働契約書や就業規則では、役職手当の支給基準を明確化せず、「会社の裁量によって支給の有無や金額を定める」などと抽象的な規定だけを置いているケースが多々あるようです。その場合には、役職手当の支給に関する会社の判断につき、裁量権の逸脱・濫用がなかったかどうかが焦点となります。

  2. (2)残業代の支給要件

    残業代も労働契約の定めに基づいて支給されるべき賃金ですが、役職手当とは異なり、労働基準法によって、一定の割増賃金率による残業代の支給が義務付けられています

    残業の種類 通常の賃金に対する割増賃金率
    法定内残業
    (所定労働時間を超え、法定労働時間の範囲内の残業)
    100%
    時間外労働
    (法定労働時間を超える残業)
    125%
    ※大企業の場合、1か月あたり60時間を超える部分については150%
    深夜労働
    (午後10時から午前5時までに行われた労働)
    125%
    休日労働
    (法定休日に行われた労働)
    135%
    時間外労働かつ深夜労働 150%
    ※大企業の場合、1か月あたり60時間を超える部分については175%
    休日労働かつ深夜労働 160%


    役職に応じた支給要件が定められる役職手当とは異なり、残業代は残業時間に応じて支給されます。そのため、役職手当の金額は毎月安定していることが多いのに対して、残業は毎月の変動が生じるのが大きな特徴です。

    よって、もし会社が「役職手当に残業代を含める」取り扱いを行っているとしたら、労働基準法違反の疑いが強いと考えられます。

2、管理監督者は残業代を請求できないが役職者はどうなる?

労働者が「管理監督者」に該当する場合、会社は労働者に残業代を支給する義務を負いません(会社法第41条第2号)。たとえば、執行役員や部長などの役職者については、「管理監督者」として残業代の支給対象外となる可能性がある点に注意が必要です。

ただし、役職名称が管理職であったとしても、法律で規定された管理監督者ではないケースがあります。そのような、いわゆる「名ばかり管理職」にあたりうる場合、未払い残業代が発生している可能性があるので、心当たりのある方は弁護士までご相談ください。

  1. (1)管理監督者に該当するための要件

    まずは、管理監督者の定義について確認しておきましょう。労働基準法上の「管理監督者」は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。
    「管理監督者」にあたるかどうかについては、以下の3つの要素を総合的に考慮したうえで判断されます。

    1. ① 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるをえない重要な職務を行っているかどうか
    2. ② 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるをえない重要な責任・権限を有しているかどうか(特に、部下に対する人事権など)
    3. ③ 賃金などについて、地位にふさわしい待遇が与えられているかどうか


    もしあなたが、上記の各点を総合して、経営者と一体的な立場にあると評価できる場合、管理監督者に該当します。

  2. (2)「名ばかり管理職」に要注意

    しかし実際には、労働基準法上の管理監督者に該当しないにもかかわらず、単に「管理職だから」という理由で残業代が支払われていない方がいらっしゃいます。

    このような労働者を、俗に「名ばかり管理職」と呼ぶことがあります。
    前述の管理監督者の判断基準を踏まえると、以下のいずれかに当てはまる方は「名ばかり管理職」に該当する可能性があります。

    • 他の労働者と似たような業務を行っているのに、管理職だからという理由で残業代が支払われていない
    • 部下に対する人事権を全く持っていないのに、管理職だからという理由で残業代が支払われていない
    • 出社、退社について定時の遵守を求められているのに、管理職だからという理由で残業代が支払われていない
    • 他の労働者とほとんど基本給が変わらないのに、管理職だからという理由で残業代が支払われていない


    もしご自身が「名ばかり管理職」に該当する疑いがある場合には、会社に対する残業代請求をご検討ください

3、役職手当に残業代を含めるのはOK? NG?

会社に対して未払い残業代を請求しても、「役職手当に残業代を含めている」と回答されて無視されてしまうケースが少なくないようです。

そのようなケースの場合、適法に固定残業代制として採用されているのか、そうでないのか、さらには、規定された固定残業時間を超えて働いていないかを見極める必要があります。

  1. (1)固定残業代として適法であればOK

    「固定残業代制」とは、毎月の残業時間が固定残業時間以下である場合に、固定残業代を必ず支給する制度です。

    仮に役職手当の中に「固定残業代」が含まれている場合、後述する固定残業代制の適法要件を満たしていれば、「役職手当に残業代を含める」という取り扱いが認められる余地があります。

  2. (2)正しく固定残業代制が適用されているかを確認すべき

    役職手当に固定残業代が含まれているという回答を得た場合、まずは以下の3つの事項が労働契約等において明示されているかを確認してください。

    1. ① 固定残業代を除いた基本給の額
    2. ② 固定残業時間と、固定残業代の計算方法
    3. ③ 固定残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働に対して、割増賃金を追加で支払う旨


    法律上、「役職手当に残業代を含める」取り扱いを固定残業代制であると整理するには、会社は最低限、以下のような内容を労働者に明示する必要があるためです。

    (例)
    基本給:月額32万円
    役職手当:月額20万円※

    ※役職手当には、固定残業代10万円(固定残業時間:月40時間、計算方法は以下のとおり)を含みます。
    固定残業代10万円
    =1時間あたりの基礎賃金2000円×割増賃金率125%×固定残業時間40時間

    ※固定残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働が行われた場合には、超過時間数に応じた割増賃金を追加で支払います。


    上記の程度に固定残業代制に関する明示が行われていない場合や、固定残業時間を超過したにもかかわらず追加残業代が支払われていない場合には、「役職手当に残業代を含める」取り扱いは労働基準法違反です

4、会社に未払い残業代を請求する際のポイント

会社に対して適正額の未払い残業代を請求するには、残業の証拠を十分に集めたうえで、法的な観点から説得力のある主張を行うことが大切です。

そのためには、弁護士によるアドバイス・サポートが大いに役立ちます。

  1. (1)残業の証拠収集

    残業の証拠がそろっていれば、会社が残業代を任意に支払う可能性が高く、労働審判や訴訟に発展した場合でも有利な結果を期待できます。

    以下に挙げる資料などをできる限り幅広く収集し、残業の事実を立証できるように準備を進めましょう。

    • タイムカードなどの出退勤記録
    • 社内システムのアクセス履歴
    • オフィスの入退館履歴
    • 交通系ICカードの乗車履歴
    • タクシーの領収書
    • 業務メールの送受信履歴
    • 業務日誌、メモ
    など
  2. (2)雇用契約書・就業規則・労働基準法などの確認・検討

    残業代の金額を計算するには、実際の労働時間を把握するだけでなく、所定労働時間との比較や割増賃金率の適用、労働時間制に関する法的な検討なども必要です。

    これらの残業代計算に必要な情報は、雇用契約書や就業規則、さらには労働基準法の規定を参照すれば確認できます。残業代の計算方法を正しく理解したうえで、適用される各ルールを横断的に確認し、正確に残業代を計算・請求しましょう。

  3. (3)早期に弁護士へ相談

    会社に残業代を請求する際には、弁護士へご相談いただくのがおすすめです。

    弁護士は、残業の証拠収集や残業代計算などの準備から、実際の請求手続きに至るまで、適正な残業代の獲得を一貫してサポートします。会社への交渉も弁護士が代理で行うため、あなた自身が会社と直接交渉する必要がありません。

    未払い残業代の請求権にも時効があります。未払い残業代が発生している可能性がある場合は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

役職手当に残業代が含まれるという理由で、会社から残業代が支払われていない場合、未払い残業代が発生している可能性があります。もし残業代に関する会社の説明に納得できない場合は、弁護士へのご相談をおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、残業代請求に関する法律相談を随時受け付けております。会社から適切に残業代が支払われていないのではないかと疑問をお持ちの方は、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスにお問い合わせください。あなたが受け取るべき賃金を取り戻せるよう、力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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