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運送業は働き方改革で変わる! トラック運転手が知っておくべきこと

2022年11月07日
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運送業は働き方改革で変わる! トラック運転手が知っておくべきこと

福岡県が公表している「毎月勤労統計調査地方調査年報(令和3年)」によると、「運輸業、郵便業」の総実労働時間は174.4時間となっており、全業種の中でもトップクラスの労働時間となっています。

運送業は、不規則な勤務であり、長距離輸送を行う場合には長時間労働が常態化する傾向にあります。渋滞の発生による道路状況、集配コースの変更などによって所定労働時間をオーバーしてしまうというのは、運送業という性質上仕方のない部分もあります。しかし、運送業であっても、働き方改革によってこれまでの過酷な労働環境が変わる可能性もあります。

本コラムでは、トラック運転手が知っておくべき運送業の働き方改革について、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、トラックドライバーを対象にした働き方改革の概要

平成31年4月1日に働き方改革関連法案の一部が施行されたことにより、各企業ではこれまでの働き方が大きく見直されるようになってきました。以下では、トラックドライバーを対象にした働き方改革の概要について説明します。

  1. (1)時間外労働の上限規制

    トラック運送業界や物流業界では、長時間労働が常態化しており、その改善が求められています。そこで、働き方改革の一環として、時間外労働の上限について、罰則付きで規制がなされることになりました

    もっとも、一般の企業と運送業では、適用される時間外労働の上限規制の内容が異なりますので、これについての詳細は後述します。

  2. (2)同一労働同一賃金

    働き方改革の一環として、正社員と非正規雇用労働者との不合理な待遇差を解消するために「同一労働同一賃金」が導入されることになりました。

    時間外労働の上限規制とは異なり、運送業について特別に取り扱う規定はありませんので、運送業についても一般の企業と同様に同一労働同一賃金が適用されています。なお、同一労働同一賃金についての詳細は後述します。

  3. (3)月60時間超の時間外労働の割増率引き上げ

    労働基準法では、月60時間以内の時間外労働については25%以上の割増率、月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増率にすることが定められています。しかし、中小企業に対しては、月60時間を超えたとしても、25%以上の割増率でよいとされていました。

    働き方改革の一環として、中小企業に対する時間外労働の割増率についても、大企業と同様に引き上げがなされて、令和5年4月1日からは、月60時間を越える時間外労働について50%以上の割増率が適用されます。運送業に対しても同様に適用されることになりますので、長時間労働が常態化している運送業では、割増率の引き上げによる賃金の増加が予想されます。

  4. (4)働き方改革の実現に向けた取り組み

    運送業界では、働き方改革の実現に向けて以下のような取り組みを実施しています。

    • 労働生産性の向上
    • 適正取引の推進
    • 運送事業者の経営改善
    • 適多様な人材の確保・育成

2、時間外労働に上限ができる!

運送業での長時間労働を改善するために、運送業に対しても時間外労働の上限規制が適用されることになります。以下では、一般企業に対する時間外労働の上限規制と運送業に対する時間外労働の上限規制について説明します。

  1. (1)一般企業に対する時間外労働の上限規制

    労働者に時間外労働を行わせるためには、使用者と労働者代表者との間で三六協定を締結することによって、法定労働時間を超えて時間外労働を行わせることが可能です。この場合の時間外労働の上限は、月45時間、年360時間までとされています。

    これまでは、法律ではなく告示という形式での上限規制であったため、上限を超えたとしても罰則の適用はなく、特別条項付きの三六協定を利用することによって、事実上上限なく時間外労働を行わせることも可能でした。

    しかし、過労死などが社会問題となってきたことを受けて、働き方改革の一環として、時間外労働の上限について罰則付きの規制が導入されることになりました。罰則付きの時間外労働の上限規制については、大企業については平成31年4月1日から、中小企業では令和2年4月1日から適用されています。

  2. (2)運送業に対する時間外労働の上限規制

    長時間労働が常態化している運送業では、すぐに時間外労働の上限規制を適用することは困難だという事情があることから、運送業については、時間外労働の上限規制の適用について、一般の企業とは異なる取り扱いがなされています。

    運送業に適用される時間外労働の上限規制は、以下のような内容になります。

    • 上限規制の適用時期は、令和6年4月1日から
    • 特別条項付き三六協定を締結する場合、時間外労働の上限は、年960時間まで(休日労働は含まない)
    • 将来的には、一般企業と同様の上限規制の適用を目指す

3、契約社員や定年後の継続雇用のケースも改革される

働き方改革の一環として、同一労働同一賃金が運送業にも適用されることになります。

  1. (1)同一労働同一賃金とは

    働き方改革の一環として、正社員と非正規雇用労働者との不合理な待遇差を解消するために「同一労働同一賃金」が導入されることになりました。同一労働同一賃金とは、雇用形態にかかわらず、同じ業務を担当する労働者に対しては、同じ賃金を支払うということを意味します。

    運送業では、正社員以外にも契約社員や定年退職後の嘱託社員なども多く働いていますので、仕事の内容が同じであるにもかかわらず、正社員とそれ以外の社員との間で、賃金格差が生じているということも多くあります。同一労働同一賃金は、大企業については平成31年4月1日から、中小企業では令和2年4月1日からスタートしています。

    そのため、正社員と職務内容が同じであるにもかかわらず、賃金に差が生じている場合には、職場に対して改善を求めてみるとよいでしょう

  2. (2)同一労働同一賃金の内容

    同一労働同一賃金には、以下のような内容が含まれています。

    ① 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
    同一の企業内では、正社員と非正規雇用労働者との間において、基本給、賞与などあらゆる待遇面について不合理な待遇差を設けることが禁止されます。どのような待遇差が不合理なものとなるかについては、均衡待遇と均等待遇という観点から判断する必要があります。

    均衡待遇とは、職務内容、配置変更の範囲などの事情に応じた範囲内で待遇を決定するというものです。均等待遇とは、職務内容、配置の変更の範囲が同じ場合には、正社員と同じ取り扱いをする必要があるというものです。

    ② 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
    非正規雇用労働者は、正社員との待遇差の内容・理由などについて、事業主に対して説明を求めることが可能になりました。事業主は、非正規雇用労働者から説明を求められた場合には、説明に応じなければならず、説明を求めた非正規雇用労働者に対して、不利益な取扱いをしてはいけません。

    ③ 行政による事業主への助言・指導、裁判外紛争解決手続の規定の整備
    企業において同一労働同一賃金が守られていない場合には、行政が関与して事業主に助言や指導を行うことができるようになりました。


    また、事業主と非正規雇用労働者との間でトラブルが生じた場合には、裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の対象となります。裁判外紛争解決手続(行政ADR)とは、事業主と労働者の間の紛争を、裁判せずに解決する手続きのことで、上記トラブルが生じた場合、行政ADRを利用して紛争の解決を図ることができます。

4、施行は令和6年(2024年)! ただし今も未払い残業代があれば請求可能

時間外労働の上限規制の適用は令和6年4月1日からです。しかし、未払いの残業代が生じている場合には、上限規制の適用前であっても、会社に対して請求することが可能です。

  1. (1)荷待ち時間も労働時間に含まれる

    トラックドライバーの業務中には、取引先の倉庫において荷物の積み下ろしのために待機している時間が生じることがあります。このような時間のことを「荷待ち時間」といい、会社によっては、荷待ち時間を労働時間から除外しているところもあるかもしれません。

    しかし、荷待ち時間であっても使用者の指揮命令下にある状態であれば、休憩時間ではなく労働時間にあたりますので、荷待ち時間を労働時間から除外する取り扱いは違法となります。荷待ち時間であってもトラックドライバーが現場を離れて自由に行動することができるわけではありませんので、多くのケースでは荷待ち時間に対しても賃金の支払いが必要になるといえるでしょう。

  2. (2)固定残業代が支払われていても残業代請求は可能

    労働時間が不規則である運送業では、時間外労働の計算業務を軽減するために固定残業代が支払われているところも少なくありません。固定残業代とは、実際の残業時間に関わらず、一定時間に相当する残業代を支払いという制度です。

    固定残業代制度を採用している会社では、固定残業代で予定している残業時間を超えていたとしても固定残業代以上の支払いはしないという扱いをしているところもあります。しかし、固定残業代制度を採用しているからといって、超過する残業時間に対する残業代の支払いが不要になるわけではありません超過した残業時間に対しては、固定残業代とは別途残業代を支払う必要があります

  3. (3)未払いの残業代が生じている可能性がある場合には弁護士に相談を

    長時間労働が常態化しており、不規則な労働時間である運送業においては、一般の企業に比べて未払いの残業代が発生している可能性が高いです。未払いの残業代が発生している場合は、会社に対して請求をすることが可能ですが、そのためには、残業をしていたことの証明や正確な残業代の計算が必要になってきます。これらの作業を適切に行うためには、法律の知識や経験が不可欠となりますので、弁護士のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。

    弁護士に依頼をすることによって、証拠の収集や残業代の計算だけでなく、会社との交渉もすべて任せることが可能です。ひとりで進めていくことに少しでも不安がある場合には、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。

5、まとめ

働き方改革によって、運送業についても時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金が適用されることになります。それによって、これまでの労働環境や条件が改善されることが期待されます。

もっとも、長時間労働が常態化している運送業では、働き方改革によっても未払いの残業代が発生している可能性があります。残業代請求は、労働者としての正当な権利です。未払いの残業代が発生している可能性がある場合には、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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