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遅刻した社員の給料を減給できる? 減給の注意点と控除との違い

2023年02月06日
  • 労働問題
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遅刻した社員の給料を減給できる? 減給の注意点と控除との違い

令和4年9月27日、福岡や佐賀など九州北部では、激しい雨の影響で通勤時間帯の交通機関に乱れが生じました。これに伴い、出勤時間に間に合わないなどの影響を受けた労働者は少なくないでしょう。

天候などの理由でやむを得ず遅刻してしまうことは誰でも起こりえます。しかし、やむを得ない理由がないにもかかわらず遅刻を繰り返す社員がいれば、使用者としては何らかの対応をとりたいと考えることでしょう。結論から言えば、遅刻をした従業員に対しては、減給の懲戒処分を行うことができる場合があります。

しかし、下記に述べるように減給処分の要件をきちんと満たしていないにもかかわらず減給処分をしてしまうと違法な減給処分となってしまうため、減給処分をめぐるトラブルが発生し、その対応に時間やコストをとられてしまうおそれもあります。

本コラムでは、遅刻を理由とする減給処分の要件や、減給処分に関するトラブルを予防するための対策などについて、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。常に減給の懲戒処分ができるわけではなく、事情によっては減給が違法となる可能性があることを知っておきましょう。

1、減給とは?

「減給」とは、従業員による就業規則違反の非違行為につき、会社が行う懲戒処分のひとつです。

懲戒処分には、主に以下の種類があります。
減給は、金銭的なペナルティーを伴う懲戒処分の中では、もっとも軽い部類となります。

  1. ① 戒告・けん責
    口頭または文書によって厳重注意を与える懲戒処分です。

  2. ② 減給
    給与を減額する懲戒処分です。

  3. ③ 出勤停止
    出勤を禁止し、その期間中の給与を支給しない懲戒処分です。

  4. ④ 降格
    役職を降格させ、従来支給していた役職手当などを不支給とする懲戒処分です。

  5. ⑤ 諭旨解雇
    退職届の提出を勧告する懲戒処分です。
    従業員が拒否すれば多くの場合、懲戒解雇処分が行われます。

  6. ⑥ 懲戒解雇
    従業員との労働契約を打ち切り、強制的に退職させる懲戒処分です。


なお、従業員の欠勤を理由とする「賃金控除」は、減給とは異なるものです。賃金控除はノーワーク・ノーペイの原則※を根拠としているのに対して、減給はあくまでも懲戒処分として、就業規則違反を根拠に行われます

ノーワーク・ノーペイの原則
労働者が働いていない期間について、使用者は賃金を支払う必要がないという原則。
有給休暇などの例外がある。

2、遅刻を理由とする給与の減額は可能? 減給処分の要件

従業員が遅刻したことを理由に減給を行う場合、懲戒処分の要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。

  1. (1)就業規則の懲戒事由に該当することが必要

    大前提として、就業規則に定められた懲戒事由に該当することが必要です。

    大半の企業では、遅刻を従業員の禁止行為として位置づけています。そして、就業規則違反を犯した場合は懲戒事由該当としているケースが一般的でしょう。したがって、遅刻が懲戒事由に該当することは認められるケースが多いと考えられますが、念のため自社の就業規則の内容をご確認ください。

    就業規則に遅刻が懲戒事由に該当する旨の記載がない場合、記載があるどうか判然としない場合には、一度弁護士に就業規則を持参のうえ相談することをおすすめします

  2. (2)懲戒権の濫用に該当する場合は違法

    仮に、就業規則上の懲戒事由に該当するとしても、懲戒権の濫用に該当する場合には、減給処分が違法となるので注意が必要です。

    会社による懲戒処分は、従業員の行為の性質・態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効となります(労働契約法第15条)。つまり会社は、従業員の遅刻がどの程度悪質であるかを考慮したうえで、それに見合った限度で懲戒処分を行わなければなりません。

    たとえば、たった1回不注意で遅刻してしまった従業員に対して減給処分を行うことは、懲戒権の濫用として違法・無効となる可能性が高いでしょう(ノーワーク・ノーペイの原則に基づく賃金控除は可)。

    これに対して、何度注意しても遅刻癖が直らない場合や、遅刻以外にも度重なる非違行為が見られる場合などには、減給処分が適法と認められやすくなります。

  3. (3)減給額の上限に要注意

    減給の制裁(懲戒処分)については、法律で以下の上限が設けられています(労働基準法第91条)。

    1. ① 減給1回当たり、平均賃金の1日分の半額
    2. ② 一賃金支払期(月給制なら1か月)当たり、賃金総額の10分の1


    以下の設例を考えてみましょう。

    <設例>
    • 月給制
    • 平均賃金(令和4年7月~9月の平均給与額)は1日当たり1万円
    • 令和4年10月の賃金総額は15万円(遅刻や無断欠勤により減少)
    • 令和4年10月に、計4回の減給処分を受けた


    平均賃金の1日分は1万円なので、減給1回当たりの金額は5000円が上限となります。

    一方、令和4年10月の賃金総額は15万円なので、同月における減給の総額は1万5000円が上限です。設例では計4回の減給処分を受けていますが、たとえば毎回5000円の減給を行った場合、総額で2万円の減給となるため違法です。

    減給処分を行う際には、正確な計算方法により給与計算を行ったうえで、労働基準法の上限に違反しないように十分ご注意ください

3、遅刻による減給処分につき、トラブルを予防するための対策

従業員の遅刻を理由に減給処分を行った場合、従業員が反発してトラブルに発展する可能性があります。

会社としては、遅刻による減給処分についてトラブルを予防しつつ、万が一トラブルが発生した場合に備えるため、以下の対策を講じましょう。

  1. (1)就業規則の懲戒事由を細かく定める

    従業員の遅刻を理由に減給処分を行うには、就業規則において、遅刻が懲戒事由に該当することを明記しておくことが必須です。遅刻を理由に減給処分を行うことができるようになっているかどうか、自社の就業規則を改めて確認しましょう

    また、減給処分について従業員に納得感を与えるためには、各懲戒処分に該当する行為を例示しておくことも効果的です。

    たとえば、以下のように定めておくことが考えられます。

    (例)
    • 「1か月のうち1回目、2回目の遅刻は戒告」
    • 「1か月のうち3回以上遅刻した場合、3回目以降は毎回減給」


    網羅的に定めておくことは難しいので、あくまでも目安・例示で構いません。懲戒処分の基準を前もって示しておけば、従業員も懲戒処分の内容に納得し、結果的にトラブルの発生防止につながるでしょう。

  2. (2)減給処分の相当性を十分に検証する

    従業員の遅刻を理由に懲戒処分を行う場合、会社は懲戒権の濫用を念頭に置いて、減給処分の相当性を十分に検証しなければなりません。安易な減給処分を行うと、従業員から違法・無効である旨を主張され、労使紛争に発展してしまうおそれがあるので要注意です。

    減給処分の相当性を分析する際には、過去の裁判例や自社における処分事例が参考になります。労働審判や訴訟になった場合にどう判断されるか、過去の処分事例との間で均衡を欠いていないかなどを検討することが、自制的な懲戒処分の運用につながります。

    減給処分の相当性に関する検討につき、不安な部分があれば弁護士にご相談ください。

  3. (3)遅刻を減らす取組を行う

    従業員による遅刻の頻度そのものが減少すれば、遅刻に関する減給処分についてトラブルになるリスクも減ります。そのため会社としては、従業員の遅刻を減らせるような取組を検討・実施すべきでしょう。

    遅刻予防につながる取組としては、以下の例が挙げられます。

    1. ① 長時間労働を減らす
      従業員の疲労蓄積が軽減され、寝坊などによる遅刻を防ぐことができます。
      労働時間をきちんと管理したうえで、十分かつ適材適所の人員を配置することがポイントです。

    2. ② フレックスタイム制を導入する
      フレックスタイム制は、従業員の裁量によって始業・終業の時刻を決められる制度です。
      厳密に始業時刻を決めないことで、遅刻を大幅に減らせます。
      また、従業員が時間に縛られず働くことができるようになり、モチベーションの向上やワークライフバランスの改善にもつながります。


    自社の状況に合わせて、適切な取組を選択・実施してください。

4、就業規則の見直しなど、人事労務に関する相談は顧問弁護士へ

従業員に対する減給などの懲戒処分については、労使紛争に発展することがしばしばあります。会社としては、できる限り従業員とのトラブルを未然に防ぎつつ、万が一トラブルが発生した場合に備えておかなければなりません。

人事労務に関するトラブル対策の第一歩は、就業規則など社内規程の見直しと、適切な労務管理を遂行するための社内体制の整備です。これらを実行に移すには、法的な観点からの検討が不可欠なので、顧問弁護士へのご相談をおすすめします。

また、従業員に対して実際に懲戒処分を行う場合は、法律上の要件を踏まえた慎重な検討が求められます。顧問弁護士に相談すれば、法令や過去の裁判例などを踏まえて、懲戒処分の妥当性につきバランスのとれたアドバイスを受けることができるのです。

さらに、従業員との間で労使紛争に発展した場合には、交渉・労働審判・訴訟などの対応も必要となります。これらの手続きを全面的に代行し、会社の損失を最小限に食い止めることも、顧問弁護士の重要な役割です。

人事労務に関する問題については、あらゆる場面で顧問弁護士へのご相談が役立ちます。
従業員への対応や、労使間でのトラブルについてお悩みの企業経営者・担当者の方は、顧問弁護士との契約をご検討ください。

5、まとめ

遅刻・早退・無断欠勤などを理由とする減給処分は、就業規則上の懲戒事由に該当し、かつ懲戒権の濫用に該当しない場合に限り適法となります。また、労働基準法によって減給額の上限が設けられている点にも注意が必要です。

減給などの懲戒処分を行う場合は、労働法令に照らした適法性を慎重にチェックするため、弁護士へのご相談をおすすめします。人事労務に関する対応・トラブルにお悩みの企業は、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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