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公園で子どもが怪我……責任は誰に? 損害賠償の内容や請求方法を解説

2022年02月01日
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公園で子どもが怪我……責任は誰に? 損害賠償の内容や請求方法を解説

令和元年12月、福岡県太宰府市が管理する公園の遊具で怪我をした利用者に対し、市は損害賠償請求を支払うことを決定したという報道がありました。公園は、身近で運動ができる場所ですが、設備の管理方法や遊び方によっては、怪我などの危険が生じる可能性があります。

公園内で子どもが怪我をしてしまった場合には、その怪我の責任を誰に追及していけばよいのでしょうか。今回は、公園内で負ってしまった怪我の責任の所在や損害賠償請求の方法などについてベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、公園で怪我した場合、損害賠償請求できる?

公園で怪我をした場合には、誰に対して損害賠償請求をすることができるのでしょうか。以下では、公園内での事故の責任の所在について説明します。

  1. (1)損害賠償請求が可能なケース

    損害賠償請求が可能なケースとしては、以下の例が挙げられます。

    ① 遊具で遊んでいたときに生じた怪我
    公園には、ブランコ、滑り台、シーソーなどさまざまな遊具が設置されています。好奇心が旺盛な子どもたちは、遊具を利用してさまざまな遊びをしますので、遊び方によっては、転倒したり、挟まれたりして怪我をしてしまうことがあります。また、遊具の設置から時間が経過しているような場合には、劣化や腐食などが原因で事故が生じる可能性もあります。

    公園に設置されている遊具は、一般的には各地方自治体が管理するものですので、遊具の設置または管理に瑕疵があった場合には、国家賠償法2条1項に基づいて、地方自治体の責任を問うことが可能です

    また、遊具自体の安全性に問題があったような場合など、遊具を製造したメーカーの責任を問うことができるケースもあります。

    ② 子ども同士で遊んでいたときに生じた怪我
    公園で子ども同士で遊んでいると、だんだんと白熱してしまい、場合によってはケンカをしてしまうこともあります。結果、お互いに怪我をしてしまった場合には、基本的には双方に責任がありますので、治療費などはお互い支払う義務が生じます。

    もっとも、民法では、責任能力のない未成年者が第三者に損害を与えたとしても損害賠償責任を負うことはありません(民法712条)このような場合には、未成年者の監督義務者である両親が責任を負うことになります

    ③ 散歩中の犬にかまれて生じた怪我
    公園には、犬を連れて散歩をしている人もいます。ノーリードで散歩をしていた犬が突然子どもに飛びかかって怪我をさせてしまった場合やうっかりリードを放したすきに子どもにかみついたという場合には、犬の飼い主に対して、民法718条に基づく動物の占有者等の責任を追及することができます

  2. (2)損害賠償請求ができないケース

    公園内で怪我をしたからといってすべてのケースで損害賠償請求をすることができるとは限りません。

    たとえば、公園内において自転車やスケートボードで遊んでいたところ、転倒して骨折してしまったという場合は、自分自身の行為が原因となった事故ですしたがって、公園を管理する地方自治体の責任を問うことはできません

2、公園内での怪我による裁判例

公園内での怪我を理由とした裁判例としては、以下のものがあります

  1. (1)サッカーゴール転倒事故

    公園内でサッカーをしていた子どもらがサッカーゴールを移動させようとしてサッカーゴールを前方に倒したところ、サッカーゴールが倒れてくる勢いと重さに耐えきれずに、子どものうち1人が倒れてくるサッカーゴールのクロスバーを腹部に受けて、腹腔内出血によって死亡しました。死亡した子どもの両親は、サッカーゴールを設置し、管理する市に対して、損害賠償請求を行いました。

    裁判所は、以下のような理由から市の責任を認めて2527万9492円の損害賠償金の支払いを命じました(鹿児島地裁平成6年(ワ)第1292号)。

    • 公園内は誰でも自由に出入りが可能であったこと
    • 相当重量のあるサッカーゴールが転倒した場合には、人の死傷が生じる可能性があり、予見可能だったこと
    • サッカーゴールを保管する場合には、地面やフェンスなどに固定して保管しておく必要があったにもかかわらずそれを怠ったこと
  2. (2)ゆりかご型ブランコ傷害事故

    当時9歳だった原告は、市が設置および管理する広場内に設置されていたゆりかご型ブランコで遊んでいた際に、ゆりかご型ブランコの座席底部と地面との間に右足を挟まれ、右大腿骨転子下骨折の重傷を負いました。本件事故は、ゆりかご型ブランコの構造・形状に欠陥があると主張して、市およびゆりかご型ブランコを製造した業者に対して、損害賠償請求を行いました。

    裁判所は、以下のような理由から市およびゆりかご型ブランコを製造した業者の責任を認めて123万9879円の賠償を命じています(横浜地裁平成10年(ワ)第1475号)。

    • ゆりかご型ブランコの製造業者は、通常予想される用法に従って使用する場合に、幼児や児童の生命身体に重大な危害を及ぼすようなものを製造販売してはならない注意義務を負う
    • ゆりかご型ブランコを両側から押して遊ぶことは通常予想される使用法であり、それによって重大な危険が及ぶことは十分予見可能であったこと
    • ゆりかご型ブランコに関しては、同種の事故が各地で頻繁に生じており、新聞などでも報じられていたことから、本件事故が生じることも十分予見可能な状況であったこと

3、損害賠償の内容とは?

損害賠償請求をする際には、事故と相当因果関係のある損害を請求することが可能です。具体的には、以下のような損害項目が挙げられます。

  1. (1)治療費

    治療費とは、怪我を治療するために必要なる入院や通院費などの実費のことをいいます。

  2. (2)付添看護費

    付添看護費とは、入通院を必要とする被害者に付添人が必要となった場合に認められる賠償内容です。付添をすれば常に認められるというわけではなく、付添看護費が認められるかどうかについては、怪我の内容、被害者の年齢、医師の指示の有無などを考慮して判断することになります。

  3. (3)通院交通費

    通院にあたって、電車やバスといった公共交通機関や自家用車を利用した場合には、通院に要した交通費についても請求することができます。

  4. (4)慰謝料

    慰謝料とは、精神的苦痛に対する金銭的な賠償のことをいいます。怪我をした場合には、入通院を余儀なくされることによって精神的な苦痛を被りますし、怪我の程度によっては、完治せずに障害が残ってしまうことでも精神的苦痛を被ります。

    そのため、被害者は、怪我に対する「傷害慰謝料」と後遺症が生じたことに対する「後遺障害慰謝料」を請求することができます

  5. (5)休業損害

    怪我の治療のために仕事を休まなければならなくなった場合には、その分の収入が減ってしまいます。このような場合には、減収分についての損害を休業損害として請求することができます。休業損害は、原則として就労している方に対して認められるものですので、幼児や児童などまだ就労していない場合、休業損害は生じません(専業主婦などの場合、家事労働の部分を換算されることがあります)。

  6. (6)逸失利益

    怪我の治療を継続したにもかかわらず完治せず、障害が残ってしまったという場合には、将来の仕事にも影響が生じて、本来得られるはずであった利益を得ることができなくなる可能性があります。

    このような場合には、将来得られるはずであった利益について、逸失利益として請求することができます。逸失利益の金額は、当時の収入、障害の程度、年齢などを踏まえて計算します。

4、損害賠償請求の流れ

損害賠償請求をする場合には、一般的には、以下のような流れで進めます。

  1. (1)示談交渉

    損害賠償請求をする場合には、まずは、当該怪我の責任が誰にあるのかを調べる必要があります。公園での事故の場合には、事故態様によってさまざまな責任主体があり得ますので、確実に損害賠償請求を行うためにも、きちんと調査することが大切です。

    責任主体が判明した場合には、その相手と示談交渉を行っていきます。その方法としては、請求内容を明らかにした書面を作成し、内容証明郵便を利用して当該書面を送るという方法が一般的です。相手から回答があった場合には、責任の有無や損害額について話し合いを行い、合意ができた場合には、示談書や合意書などを作成します。

  2. (2)民事調停

    民事調停とは、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話し合いによって紛争の解決を図る手続きです。示談交渉によって解決することができなかった場合には、いきなり裁判を起こす方法もありますが、相手が話し合いによる解決の姿勢を示しているようであれば、裁判の前に民事調停を申し立てるという方法も有効な手段です。

    ただし、民事調停は、あくまでも話し合いによる解決手段ですので、相手が責任を否定している場合や調停期日への出席を拒んでいるような場合には、調停での解決は困難といえます。

  3. (3)裁判

    示談交渉や民事調停で解決できない事案については、最終的に裁判を起こす必要があります。裁判では、お互いの主張や証拠を踏まえて最終的には裁判官が判断してくれますので、必ず結論が出るというメリットがあります。他方、示談交渉や民事調停とは異なり、非常に専門的な手続きになりますので、不慣れな方では自分だけで行うというのは難しい手続きだといえます。

    そのため、裁判を検討している方は、専門家である弁護士に相談をして、弁護士のサポートを受けながら進めていくようにしましょう

5、まとめ

公園での事故については、事故態様によっては複数の責任主体が考えられます。損害賠償請求を行う場合、誰に対して責任を追及していくかの判断が重要となります。また、事故態様に争いがある場合には、相手の責任を立証する必要もありますので、専門的な知識やノウハウが不可欠となるでしょう。

公園での怪我で損害賠償を検討中の方は、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスまでお気軽にご相談ください。担当弁護士が親身になってお話を伺い、必要に応じて全国の弁護士と連携を取りながらサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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