お試しのつもりが定期購入に? 通信販売トラブルと返金方法

2021年08月05日
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お試しのつもりが定期購入に? 通信販売トラブルと返金方法

インターネットの普及や昨今のコロナ禍もあり、通信販売を利用する福岡にお住まいの方は多くいらっしゃるでしょう。大変便利な通信販売ですが、福岡市のホームページで注意喚起情報が掲載されているように、業者と消費者とのあいだのトラブルも増えているようです。

そこで本コラムでは、通信販売で起こりうるトラブルのうち、知らないうちに定期購入の契約をしてしまったというケースが起きたとき取るべき対処法について、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、お試し購入が定期購入に?

インターネットでショッピング関連を検索すると、「まずはお試し」、「最初は特別価格○円」などのような文言を用いたセールスを行うケースを見受けられます。特に、サプリメント、健康食品、美容関連の商品など継続して使用することが一般的な商品を取り扱っているサイトに、このようなセールス文句をうたっているケースが多いようです。

通信販売業者であれば、消費者には最初の1回の申し込みだけではなく、定期購入を申し込んで継続して購入してほしいと考えることはごく自然なことでしょう。通信販売業者のなかには、最初の申し込みが定期購入の申し込みであることや定期購入の期間中は途中の解約ができないことについて記載しない者もいるようです。

しかし、通信販売業者によるこのような勧誘の方法は、法的に問題があるケースは少なくありません。

2、返品は可能? クーリングオフは使えるの?

  1. (1)通信販売にクーリングオフ制度の適用はない

    結論から先にいいますと、インターネットなどの通信販売においては、クーリングオフ制度の適用はありません

    消費者がスマートフォンやパソコンによりインターネットを経由して商品を購入することは、特定商取引に関する法律(特定商取法 以下、単に「法」といいます。)上の「通信販売」に該当します(法第2条2項)。法第11条第1項4号では、通信販売の広告のなかに「商品もしくは特定権利の売買契約の申込みの撤回または売買契約の解除に関する事項」について、明確に表示するように規定しています。なお、「特定権利」とは、施設の利用権や金銭債権、株式会社の株式などを指します(法2条4項各号参照)。

    また、法第15条の3では、商品の引き渡しを受けてから8日を経過するまでのあいだは返品できると規定しています(同条1項本文)。ただし、解約・返品ができるのは、通信販売の広告のなかに「解約・返品について何もかかれていないとき」に限定されています(同ただし書き)。また、商品がすでに購入者に引き渡されていたり、購入者が特定権利をすでに得ている場合、それらの引き取りや返還に要する費用は購入者の負担となります(同条2項)。解約・返品に関して何らかの特約(以下、「返品特約」といいます。)が設けられていた場合は、その規定に従うことになるのです。

    つまり、通信販売の広告のなかに「解約・返品は一切受け付けません」と記載されていれば、原則的には、消費者は解約・返品をすることができない、ということになります。もっとも、次項(2)で述べる点には注意が必要です。

    さらに、同法第11条第1項5号および同法施行規則第8条7号では、通信販売の広告のなかに「商品の販売数量の制限」および「特別の商品もしくは権利の販売条件または役務の提供条件」を記載するように規定しています。したがって、販売条件事項などに「毎月定期で購入することになります」などと記載されていれば、定期購入に合意したことになってしまうのです。

  2. (2)返品が認められる可能性がある表示方法は?

    しかし、消費者に勘違いさせたり内容を誤解させたりして購入(契約)させるために、あえてわかりづらい場所に返品規定などを設置する事業者は残念ながら存在します。

    そこで、「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」では、以下の通り、消費者が認識することが難しい返品特約の表示方法として、以下の例を挙げています

    • 各個別商品の説明箇所で、返品特約について何も表示していない
    • 各個別商品の説明箇所で「返品不可」、「到着後○日以内にかぎり返品可」などの表示はあるが、標題を設けていないなどその他の事項と一括して表示していることから、返品特約についての説明がわかりにくい方法
    • 膨大な広さの画面をスクロールしなければ当該表示にたどり着けないような箇所に、返品特約を表示している方法
    • 極めて小さな文字やページの隅のような目につきにくい箇所に表示するなど、不明瞭な表示方法
    • 返品について記載したページへのリンクを極めて小さな文字で表示する、もしくは何度もページを移動しなければ返品特約の表示にたどり着けない方法


    仮に業者が返品特約を定めサイトに記載していたとしても、これらの事例に当てはまる場合、返品・解約に関して何も表示はなかったとみなされる可能性があります。裁判などで特定商取法第15条の3に定める返品特約の記載がなかったと判断されれば、8日以内の返品・解約に関する規定が認められるかもしれません。

  3. (3)違法性が高い申し込み表示とは

    特定商取法第14条および同法施行規則第16条第1項では、事業者に対し、消費者がスマートフォンやパソコンによりインターネットを経由して商品を購入することができるサイトは以下の措置を講じるよう定めています。

    • 操作を行う前にその操作が商品または役務の申し込みとなることを、消費者が容易に認識できるように表示すること
    • 消費者が申し込みの内容を容易に確認できるように、かつ訂正できるようにしておくこと


    つまり、「容易に認識」できるようにしていなかったと判断される可能性が高いケースは以下の通りです。

    • 突然現れたボタンをクリックしただけで消費者が意図しない有料契約を購入・申し込んだ形になってしまうサイト
    • 消費者が購入・申し込みの前に自身の意図を最終的に確認できるページがない
    • 最初の申込時に条件として「毎月定期で購入することになります」という表示を消費者が認識しやすいように設定していなかった


    業者側が特定商取法で定められている措置を行っていなかった場合、電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律(電子契約法)第3条および民法第95条第1項の規定により、消費者は契約または購入の申し込みの無効を主張することができます

3、契約者が未成年者の場合は?

未成年者にもスマートフォンやSNSが普及したことにともない、未成年者が気軽に通信販売を利用することができる世の中になっています。未成年者の場合、成年した大人とは違い、その支払い能力を超え際限なく通信販売を利用してしまうおそれがあります。

しかし、仮にそのような事態になったとしても、未成年者については民法における「未成年者の法律行為」の適用があります。

未成年者が、その法定代理人の同意を得ないで行った法律行為は、原則として、取り消すことができます(民法5条1項、2項参照)。

そもそも、未成年者が通信販売の定期購入を行う、ということ自体が法律行為です。そのため、法定代理人である親権者や未成年後見人によって取り消すことが可能なのです。これに解約・返品特約の有無は関係ありません。このような規定を設けることによって、民法は未成年者の保護を図っています。

4、定期購入トラブルの相談は消費生活センターへ

通信販売で気づかないうちに定期購入をすることになっていたなどのトラブルに陥ったときは、まず消費生活センターに問い合わせてみたほうがよいでしょう。

消費生活センターとは、商品やサービスを購入した際に起きてしまった消費者トラブルの未然や拡大を防ぐために設立されている公共的な組織です。苦情や対応方法などの相談を受け付け、適切な対応方法をアドバイスしてくれます。福岡市には中央区にありますが、相談をしたい場合はまずは電話で問い合わせてみましょう。

定期購入契約を勝手に行われてしまったというケースのなかには、違法性を疑わざるを得ないサイトが見受けられます。そのようなときは特に、まずは消費生活センターで相談し、アドバイスに沿って対応をすることをおすすめします。

あなたの相談を聞き、消費生活センターの相談員が、裁判などによる判断が必要だと判断したときは、その旨をアドバイスされるでしょうその場合は、必ず弁護士に相談してください

弁護士は、相談に対するアドバイスを行えるだけでなく、依頼を受けたのち、あなたの代理人として業者との交渉、さらには裁判上の手続きを一任することができます。ただし、弁護士を必要とする領域は幅広いため、消費者トラブルについての知見が一切ない弁護士も存在します。

状況を正しく把握し、適切な対応をするためには、さまざまな案件を扱い、通信販売における定期購入など消費者トラブルについて知見が豊富な弁護士を探すことをおすすめします。

5、まとめ

知らないうちに定期購入をしてしまったなど、通信販売に関する業者とのトラブルに巻き込まれてしまったときは、まずは消費生活センターでご相談ください。

消費生活センターでは対応についてのアドバイスを適切に受けることができるでしょう。また、必要に応じて弁護士の依頼を勧められることがあります。そのときは、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスへご相談ください。相手方が遠方の事業者でもあきらめる必要はありません。全国の弁護士と連携を取り、通信販売における定期購入などのトラブルが解決できるよう、力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています