境界トラブル発生! 隣家との境界を曖昧なままにすると、自分の土地が隣家のものに!?
- 個人のトラブル
- 境界トラブル
- 福岡
土地家屋調査士会が運営しているADR境界問題相談センターによると平成26年に申請された筆界特定事件の申請件数は2684件、訴訟の件数は395件でした。福岡県だけでなく全国の件数ですが、いかに多くの境界トラブルが発生しているかがわかります。法務局や裁判所を通じて行わないトラブルの件数はさらに多いと考えられます。
境界トラブルは、放置すると将来の土地の売却や住宅の建設などが不可能になるなどの大きなデメリットがあります。隣地所有者などのトラブルも避けられません。そこで、本コラムでは福岡の弁護士が境界トラブルの解決法について説明します。すでに境界トラブルで悩んでいる方はぜひ読み進めてください。
1、なぜ起こる? 問題を複雑化させる「2つの境界」
まずは境界トラブルが起きる原因や概要を確認していきましょう。
土地と土地の境目のことを境界線と言います。
境界線には筆界と所有権界の2種類があります。
登記上の境界線が筆界、隣地の所有者同士が決めた境界線を所有権界です。筆界は、自由に決めることはできませんが、所有権界は当事者同士が自由に決めることができます。
ただし、所有権界は公的なものではないため、土地を購入した第三者が主張することはできません。隣地の所有者同士が所有権界を定めていましたが、片方の土地を売却。
第三者が購入した場合、所有権界を購入者が拒否すれば、所有権界の正当性を主張することはできず、筆界が境界となります。
2、境界トラブルが起こる原因
境界トラブルが起こる原因の多くは、境界を把握していなかったことや、所有権界と筆界が異なることを、相続などで把握していないことなどによって発生します。
-
(1)境界が一見してわからない
筆界に、境界であることがわかる境界標があれば、争いにはなりません。しかし古い土地は境界標がないことが多く、境界標があっても自然災害などで消失してしまうこともあります。境界標がなくても、正しい筆界に境界であることがわかるようブロック塀などが建てられていればいいですが、それがなければ目視で境界を確認することはほぼ不可能となります。
隣地同士が境界を把握しておらず、双方の認識にズレがあると、売却や建造物を建てる際にトラブルに発展します。- 「ここは私の土地なのに、勝手に売却しようとしている」
- 「おたくの建物は私の敷地に越境している」
などと、主張されて、大きなトラブルに発展することも少なくありません。 -
(2)筆界とブロック塀などの仕切りが異なっている
筆界とブロック塀や生垣などが異なる場合、片方は筆界を越境していることになります。
わざと越境している場合も、正しいと信じて越境している場合も、自分の正当性を主張しますので話し合いで決着することは難しいでしょう。- 「植木の落ち葉が落ちてきた」
- 「雪かきの雪がはみ出している」
などと、ささいなことでトラブルとなり、ご近所づきあいが大きなストレス源になってしまいます。 -
(3)所有権界を引きつかずに相続
所有権界は、当事者同士が了承すれば自由に定めることができます。
しかし、それは当事者間で決めたものであり、了承していない第三者に主張することはできません。相続によって代が変わり、新しい所有者が所有権界について引き継がれていなければ、隣地の所有者とトラブルに発展してしまいます。- 「公図上とは異なるが、私たちはずっとこの境界線を境界としていた」
と主張しても新しい所有者納得できなければ、水掛け論になってしまいます。
3、越境状態を放置していたら起こること
-
(1)あなたの土地が、侵食していた隣地の所有者のものになるかも!?
では、筆界を超えて越境状態を放置していたらどうなるのでしょうか。
たとえば、ブロック塀の一部が越境している、プレハブ倉庫がはみ出しているなどのケースが散見されます。
越境を放置するデメリットは多数ありますが、もっとも恐ろしいのが「時効による所有権の取得」です。隣地がブロック塀を越境してたてており、隣地の所有者はブロック塀こそが正しい境界だと信じて疑っていなかった場合、ブロック塀を建ててから10年で取得時効が到来します。
つまり、あなたの土地が、越境して侵食していた隣地の所有者のものに、なってしまうのです。 -
(2)越境トラブルを放置すると危険! 時効になる前に対策を
なお、「ここはうちの土地じゃない」とわかっていながら、越境し続けた場合も越境してから20年が経過すれば、取得時効が到来してしまいます。
「ご近所同士のことだし、わずかな越境に目くじらをたてるくらいなら」と放置してしまうと、大切な財産が他人のものになってしまう危険性があるといえます。放置しないほうがよいでしょう。
4、境界の正しい位置を特定する方法とは
「あなたのブロック塀は越境している」と隣人に主張しても、隣人が「このブロック塀が正しい境界だ」と主張してしまえば、水掛け論になります。
両者の主張をはっきりさせるためには境界を正しく把握しなければなりません。
-
(1)「境界標」を確認
一番お金も時間もかからないのが境界標を確認することです。境界標がすべての角に存在していればそれを結んだものが筆界となります。
ただそれだけでは、境界を画定したとは言えず、「地積測量図」と「道路図」と境界標が一致していなければなりません。 -
(2)正しい境界を特定するための「筆界特定制度」
筆界とは、公図上の境界のこと。こちらを明らかにすることで正しい境界を特定できます。筆界を特定する手段はさまざまですが、さほど費用がかからず短期間で手続きが完了するのが「筆界特定制度」です。
筆界特定制度とは、土地の所有者や相続人などの申請に基づき「筆界特定登記官」が「筆界調査員」の意見をもとに、現地で土地の筆界を特定する手続きを言います。
費用は非常にリーズナブルで、土地の価額が800万円を超えて1200万円までであれば、手数料は2400円です。
測量が必要になると、測量費用数10万円が別途必要となりますが、訴訟等よりは安価に済むでしょう。ただし、相手が筆界を特定しても納得しない場合は、筆界特定制度だけでは問題の解決にはなりません。 -
(3)「境界確定訴訟」と「所有権確認訴訟」
境界トラブルを完全に解決したければ、「境界確定訴訟」や「所有権確認訴訟」を提起する必要があります。
訴訟では、それぞれが主張する境界の根拠となる資料や測量の結果などを提出して、裁判所が判断をくだします。
5、境界トラブルを解決する手順
境界を特定する手続きだけでは、境界トラブルの多くは解決しません。すでに建造物が設置されている、長年にわたって越境状態が続いているなどのケースでは、越境している相手が所有権を主張する可能性が高く、筆界を特定しても、認めない傾向にあります。
ここでは、相手が筆界を認めないなど、トラブルに発展している場合の解決方法を解説します。
-
(1)境界問題センターに相談
当事者同士で話し合いを行っても解決の糸口が見えない場合は第三者に間に入ってもらって、話し合いを進めましょう。境界トラブルの解決先として、まずあげられるのが、「境界問題解決センターふくおか」です。
この組織は、ブロック塀の越境などの境界トラブルを解決するため、土地家屋調査士会が運営している民間組織です。土地家屋調査士と、弁護士がタッグを組んで相談を受け付けていますので、当事者同士の話し合いよりも、解決しやすいといえます。
境界問題センターふくおかでは、無料相談会を行っていることもあります。
ただし、引き続き相談したり、調停などを依頼したりする場合は相談費用や調停申立費用などが発生します。 -
(2)弁護士や土地家屋調査士に相談
境界問題センターは気軽に相談できる窓口ですが、相手とのやりとりが過激化している、売却までに時間がないから早急に問題を解決したいという場合は、弁護士などの専門家に相談したほうがよいケースがあります。
弁護士に直接依頼することで、筆界特定制度などと同時並行して、訴訟を見据えた交渉が可能となります。 -
(3)どこに相談したらよいのか
筆界特定制度は、リーズナブルな費用で筆界を特定できますが、筆界を特定したとしても相手側が納得してくれるとは限りません。
ただ、筆界を特定するだけでよいのであれば筆界特定制度の申請のみで問題ありませんが、「トラブルを解決したい」のであれば、境界トラブル解決センターや弁護士への相談をおすすめします。
すでに、境界トラブルに発展しており、隣人との関係がこじれそうな状態になりつつあるのでしたら、早急に相談しておいたほうがよいでしょう。土地家屋調査士が所属する法律事務所であれば、ワンストップで対応してもらうことができます。まずはトラブルが大きくなってしまう前に問い合わせしてみてはいかがでしょうか。
6、まとめ
「隣地のブロック塀が越境している」などの境界トラブルを放置していると、取得時効が到来して、あなたの土地が相手のものになってしまう危険性があります。
また、正しい境界を把握して、双方が納得していなければ、境界トラブルによって大きな近隣トラブルに発展してしまうことも考えられます。
境界トラブルの解決は、境界問題相談センターへの相談や弁護士への相談で、解決の糸口が見える可能性があります。まずは最寄りの境界問題相談センターふくおかや弁護士にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスでも、境界トラブルに関する相談を受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています