モラハラを理由に離婚して慰謝料も請求できる? 弁護士が解説します
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最近では、「モラハラ」という言葉も耳慣れてきました。しかし、「モラハラを理由に離婚できるのか」と聞かれると、答えられない方も多いのではないでしょうか。
もし相手が離婚を拒んだ場合は、離婚調停、それでもまとまらなければ離婚裁判を起こすことになります。相手方が福岡市にお住まいであれば、福岡家庭裁判所に対して申し立てを行うことになるでしょう。
モラハラをする相手が離婚を拒否した場合の対策や慰謝料の請求について、福岡オフィスの弁護士が詳しく解説します。
1、モラハラの定義とは
そもそも、モラハラとはどのような行為を指すかについて知っておきましょう。
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(1)モラハラの具体例
モラハラは「モラルハラスメント」の略称で、相手をおとしめるような言動を繰り返す精神的暴力のことを言います。
夫婦間の会話ややりとりは、外から見えないものです。中には、モラハラを受けている自覚がない方も少なくありません。
以下のような行為に心当たりがあれば、モラハラ被害を受けている可能性があります。モラハラ被害を受けている可能性があるケース- ささいなことで罵倒され、反論を許されない
- 理由もなく無視される
- わざと大きな物音を立てて脅される
- 家事や育児で不備があれば一方的に責め立てられる
- 何度も電話やメールで行動を管理され、責め立てられる
- 他人と接触することを嫌がる、自由な行動を許さない
- 行動や経済面を制限し、周囲から孤立させようと仕向ける
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(2)モラハラを受ける側の影響は?
モラハラを繰り返された側は自己肯定感が低くなり「自分はダメな人間なのだ」などと思い込んでしまうようになります。
常にモラハラをする配偶者の顔色をうかがうようになり、ストレスによるイライラ・不眠・食欲不振・動悸・多汗などの症状が出てくるケースもあるでしょう。
さらに症状が悪化すると、うつ病へつながりかねません。
2、モラハラを理由に離婚できる?
心身の健康を損ねるような夫婦関係は、決して健全なものではありません。
自分の身を守るためにも、離婚という選択肢も当然検討すべきことでしょう。
では、モラハラを理由に、離婚することは可能なのでしょうか。相手が離婚に合意するかどうかで、必要となる手続きが異なります。
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(1)協議離婚
離婚を申し出て、相手が離婚に同意するならば、いつでも離婚できます。
離婚届に夫婦と証人2名が署名捺印し、子どもがいれば子どもの親権欄にどちらかの名前を書き、役所に提出すれば離婚は成立します。これは協議離婚と呼ばれます。
協議離婚の場合も、離婚協議書で財産分与や養育費について取り決めて、強制執行認諾付きの公正証書とすることを強くおすすめします。
交渉が難しいときや不当な条件を突きつけられているときは弁護士に相談してください。 -
(2)調停離婚
離婚条件について折り合いがつかない場合、家庭裁判所で調停を受けることになるでしょう。調停委員に対し、夫婦別々に意見を伝え、調停委員の仲立ちによって話し合います。
申し立てからおおよそ4カ月から半年程度、3回ほどの調停で調停離婚の成立・不成立が決定する傾向にあります。双方が離婚に了承すれば、離婚条件などが記載された調停調書が作成され、調停離婚が成立します。
その際、裁判所で「調停離婚省略謄本」を取得し、調停離婚成立後10日以内に調停離婚省略謄本とともに離婚届を役所に提出する必要があります。 -
(3)裁判離婚
調停も不成立に終わった場合、裁判により離婚を求めることになります。 離婚裁判を申し立てることができるのは、相手が有責配偶者であると主張する場合に限られます。
ポイントは、相手の行動が「法定離婚事由」に該当するかどうかです。
法定離婚事由は、民法第770条1項に定められています。モラハラの態様によって、同条項2号の「悪意の遺棄」または同条項5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると裁判官が判断した場合は、離婚判決で配偶者が離婚を拒否していたとしても離婚が認められるでしょう。
ただし、裁判においては、法定離婚事由に該当する行動があったという証拠を提出する必要があります。あなたが受けているモラハラ行為が該当するかどうかの判断が難しいときは弁護士に相談しながら進めてください。
証拠集めについては次の項目で解説します。
3、モラハラで慰謝料はもらえる? より高額の慰謝料を得るためには?
離婚に際し、モラハラを理由に相手から慰謝料をもらうことはできるか気になる方もいるでしょう。
結論から言えば、慰謝料請求ができるケースもあります。
ただし、裁判所に認められる証拠が必要となります。
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(1)モラハラの証拠を集める
裁判離婚や慰謝料請求のためには、前述のとおり被害を受けた事実を証明する必要があります。
しかしモラハラは精神的な暴力であるため、誰が見てもわかるような外傷はありません。したがって、客観的な証拠を残すには少々コツが必要です。
一般的には以下のような方法が考えられます。
証拠を残す方法- 携帯やICレコーダーなどで相手の暴言を録音・録画する
- 日記に暴言の内容や回数を記録する
- SNSやメール、電話でのやりとりで罵倒されているものを保存する
- 心身の不調が出ている場合は医療機関を受診し、診断書をもらう
モラハラ行為の記録は、一度だけでなく、なるべく長期間かつ複数回分の記録を残しましょう。ただし、不法行為によって得られた証拠は認められません。
証拠集めについては、弁護士に事前に相談することをおすすめします。 -
(2)相手の収入や婚姻関係の状態を示す
モラハラによる慰謝料は幅があり、数十万円から数百万円と大きな差があります。
なぜなら、慰謝料の算出には、有責配偶者の収入、婚姻期間の長さ、モラハラを受けた期間の長さ、モラハラの程度、精神的被害の大きさなどが影響するためです。
なお、収入が高く、モラハラの程度が重いほど、慰謝料の金額は高くなる傾向にあります。相手と自分の源泉徴収票や、家計簿、日記などの婚姻関係の経緯を示すものが請求の根拠になりうるもとして欠かせないでしょう。
慰謝料を請求しても、モラハラの程度が低い場合や証拠が不十分な場合には、請求はなかなか認められません。
また、相手にそもそも支払い能力がなければ慰謝料を受け取るのは難しいのが現実です。
4、モラハラが原因の離婚を弁護士へ依頼するメリット
早期の離婚や確実な慰謝料請求を望むのであれば、弁護士へ依頼することをおすすめします。自分ひとりで戦うよりも、離婚と慰謝料という結果をより確実に得られることが最大のメリットです。
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(1)相手との交渉を代行してもらえる
そもそも、モラハラの加害者と被害者という関係で、対等に話し合うこと自体が非常に難しいことでしょう。相手は自分をひどくなじったり、それこそモラハラ的な言動で脅してきたりすることも予想されます。
そこで、弁護士があなたに代わって相手と交渉を進めます。あなたは相手と一切顔を合わせることなく、離婚を成立させることも可能です。
弁護士であれば、過去の判例や法律の知識をもとに、離婚の必要性や慰謝料額の根拠を示しつつ、交渉を進めることができます。 -
(2)離婚協議書のとりまとめ
どのような手段で離婚するにしても、離婚条件をとりまとめる必要があります。財産分与、子どもがいる場合は養育費という重要な金銭の取り決めが不可欠です。
弁護士に依頼すれば、子どもや自分にとって不利な条件とならないよう、十分に検討したうえで交渉を行います。
また、強制執行認諾付き公正証書にするなど、将来の支払い不履行があった場合の対策をとれるよう配慮することも可能です。 -
(3)証拠集めのサポート
裁判では証拠が非常に重要となります。
弁護士へ相談することで、採用されやすい証拠の集め方や、記録の残し方などのアドバイスを得られるでしょう。自己流で集めたとしても裁判で採用されない証拠ばかりであったなら、離婚や慰謝料請求も認められない可能性があります。
証拠集めの方法がわからないときは弁護士に相談してみることをおすすめします。 -
(4)調停や裁判のサポート
調停や裁判に至った場合、慣れない手続きを代行してもらえます。
また、裁判所で自分の要望や意見を効果的に伝えるためのアドバイスを受けたり、書面の作成などを依頼したりすることができます。
弁護士費用はかかりますが、それ以上に精神的かつ物理的な負担の大きな軽減が望めます。結果的に、自分の人生を早く切りかえて次のステップに進むことができるでしょう。
5、まとめ
配偶者からのモラハラに苦しみ、離婚や慰謝料請求を検討しているのであれば、まずは証拠集めをしましょう。
しかし、モラハラをする相手とあなた自身で直接交渉することは非常に難しいことです。できるぐらいであればモラハラ被害を受けることもないでしょう。
そこで、調停などの各種手続きは弁護士へ依頼するとスムーズに進めることができます。
配偶者からのモラハラに苦しんでいるという方は、なるべく早くベリーベスト法律事務所・福岡オフィスへご相談ください。適切な慰謝料や養育費、財産分与などを受け取れるよう交渉し、新たなスタートを切るためのサポートを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています