サービス業での残業代請求をしたい! 労働基準監督署と弁護士は何が違う?
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労働基準監督署といえば、労働者の味方で未払いの残業代を請求する際は力強い味方になってくれると考える方が多いでしょう。
実際に、平成31年2月、福岡県内の会社が意図的に従業員に給与を支払っていないとして、福岡中央労働基準監督署が、文書での指導等を行いました。しかし、支払わなかったため書類送検に踏み切ったことが報道によって明らかになりました。
このように、会社側が指導に従わなければ、労働基準監督署は書類送検という強硬な手段に出ることがあります。では、残業代を請求した場合はどのような対応をしてくれるのでしょうか。今回は、残業代請求と労働基準監督署の関係、弁護士との違いなどをベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、労働基準監督署とはどのようなところ?
労働基準監督署は労働状況の改善に取り組む組織です。労働条件の確保および改善、そして労働災害保険の給付なども行います。以下、仕事内容の詳細や福岡県内にある労基署の所在地などを紹介していきます。
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(1)労働基準監督署の仕事内容
労基署の仕事は労働条件に対する相談対応、会社の法規違反検査、事業内容に関する申請書類のチェック、機械設備などがあればその安全面の検査など、幅広く対応しています。
実際に会社を訪問し、労働状況を検査することもあります。この検査は「臨検」と呼ばれ、労基署は臨検を抜き打ちで行う権限があります。こうして抜き打ちにすることで会社側が臨検への対策ができないようにし、労基署ができるだけありのままの現状を把握することを可能としています。
臨検では労働関係の法律に違反をしていないか調べます。労基署から会社に訪問し、実際に検査をする職員のことを労働基準監督官といいます。「労基官」または「労働Gメン」と呼ばれることもあるようです。労働問題に特化した組織であるため、会社からは警戒される存在です。
臨検では就業規則と実際の労働時間などが調べられます。従業員の採用時に労働条件が明示されているかどうかや、会社が正しく労働時間を把握しているかどうか、そして未払いの残業代がないことのチェックをします。臨検によって会社側の違反が見つかれば労基官が指導したり是正勧告をしたりします。 -
(2)福岡県の労働基準監督署一覧
労働基準監督署は都道府県労働局に属する組織として全国に300ヶ所以上存在します。福岡市であればふたつ、県内には十ヶ所以上あります。それぞれ監督署名とその所在地を以下に記載しました。労基署を利用する場合は参考にしてください。
窓口取扱時間はどれも同じで8時30分から17時15分です。
監督署によって管轄区域が決まっているので詳しくは厚生労働省福岡労働局のホームページを確認しましょう。
- 福岡中央(福岡市中央区長浜2-1-1)
- 福岡東(福岡市東区香椎浜1-3-26)
- 北九州西(北九州市八幡西区岸の浦1-5-10)
- 北九州東(北九州市小倉北区大手町13-26)
- 北九州東門司支署(北九州市門司区北川町1-18)
- 行橋(行橋市中央1-12-35)
- 久留米(久留米市諏訪野町2401)
- 大牟田(大牟田市小浜町24-13)
- 八女(八女市稲富132)
- 飯塚(飯塚市芳雄町13-6)
- 直方(直方市殿町9-17)
- 田川(田川市中央町4-12)
2、未払い残業代問題への対応の違い
すでに説明したとおり労基署の仕事内容には未払いの残業代に関するものも含まれます。では、弁護士に相談した場合と労基署に相談した場合とでは対応にどのような違いがあるのでしょうか。
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(1)労働基準監督署が行うこと
労基署が会社に臨検を行うパターンは2つあります。ひとつは「定期監督」、もうひとつは「申告監督」です。
定期監督は労働基準監督署による自発的な調査です。検査する必要性が高そうな会社をあぶり出し臨検を行います。
労働者にとって重要なのはもう一方の申告監督です。
こちらは労働者による申告を受けて始まるものです。労基署では労働者からの申告を受け付けており相談対応をしてくれます。この申告によって調査の必要があると判断されれば臨検が始まります。
労働法規に対する違反があると分かった場合、労働者が自ら申告すれば解決に向けて進めることができます。しかし、労基署の場合違反が明らかとなれば会社に対して是正するように求めてくれますが、個人に対する救済は行いません。すでに発生している未払いの残業代回収に対して、積極的な働きかけはしてくれないのが通常です。
冒頭でお話しした未払い給与の問題でも、労働基準監督署は会社側に支払いするようにと指導を行っていますが、会社側が応じなければ強制することはできません。書類送検を行い、会社側が違法行為をしていることが明らかになり、罰則を受けたとしても未払いの給与を支払わせることはできない点に注意が必要です。
残業代の未払い問題を相談した場合、それが違法な状態であると分かれば、指導してくれるでしょう。しかし、労働者の代理人となって交渉してくれるわけではありません。したがって、会社側が労働基準監督署の介入を気にせず無視するのであれば、ほぼ意味がないと考えてよいでしょう。 -
(2)弁護士ができること
弁護士に残業代請求を依頼した場合、弁護士はあなたの残業代を回収するための最善の手段をとります。
最初から裁判を視野に入れて交渉するため、早い段階で請求に成功することも多く、請求の成功率も高くなります。交渉で請求が成功しなくても、労働審判や裁判で残業代請求が認められれば、その決定には強制力が発生します。裁判による判決ののち、会社が払わない場合は、会社の資産等を差し押さえて、強制的に支払わせることも可能です。
また、労働基準監督署の指導を聞かない企業でも、弁護士が介入して裁判になった場合は、付加金を請求されるなど、費用的なデメリットが大きくなるものです。したがって、企業側が歩み寄るケースも少なくありません。
労働基準監督署のように会社側への直接指導は行わないものの、残業代請求の交渉と並行して、労働基準監督署に申告するサポートを行うことも可能です。
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3、残業代の請求に関する相談は労働基準監督署と弁護士どちらにすべき?
それぞれの違いを踏まえた上で、どちらに相談をするべきなのか考えてみましょう。労基署では、あくまでも会社の労働環境を是正するところまでが仕事であり個人的な問題解決をしてくれないという点を覚えておく必要があります。
しかし、労基署に訴えることで社内の環境が変わり、根本的な問題解決が期待できるかもしれません。
それに対して、弁護士は依頼者の利益を最優先にして行動します。したがって、残業代請求を確実に成功させたいのであれば、弁護士に依頼するのが最適であるといえるでしょう。
しかし、その場合にネックになるのが、弁護士費用です。
労働基準監督署は公的機関なので相談はすべて無料ですが、弁護士に交渉を一任すると、一般的に費用が発生します。しかも、着手金や成功報酬などの費用は一律ではなく、法律事務所によって異なる点に注意が必要です。
ただし、ただし、相談料が無料の事務所、成功報酬型の料金体系になっている事務所もあります。費用体系はそれぞれの事務所によって違いますので、ご自身の希望に合った料金体系の事務所を探しましょう。
なお、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスへ残業代請求を依頼した際の費用は以下のとおり、明朗会計となっています。まずはお気軽にご相談ください。
残業代請求を成功させたければ法律事務所に相談することをおすすめしますが、会社の経営体質を改善してほしい、今後は残業代を支払うようになってほしいと考えるのであれば、弁護士に労働基準監督署への申告についてサポートしてもらうとよいでしょう。
4、まとめ
労働者が残業代問題を解決するためにできること、労働基準監督署への相談、そして弁護士への相談について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介しました。労基署では会社に対して法令遵守の指導、弁護士は依頼者の利益を追求します。
確実に残業代の請求を認めさせた上で、きちんと回収したいのであれば、残業代請求実績が豊富な弁護士へ依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスでは、あなたのためにできることを親身になってアドバイスいたします。残業代請求に確実性を求めるのであれば、ひとりで悩まずにまずは相談してください。
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