「私が中洲の風俗店に!?」書き込みサイトで誹謗中傷する犯人を特定する方法
- 削除請求
- 書き込みサイト
- 特定
たとえば、中洲の風俗店で働いているという事実無根の投稿を、実名写真つきで複数の書き込みサイトにされたら……。
あなたならばどうしますか? 福岡という地方都市の狭い地域では、相当の社会的被害になる可能性を否定できません。しかも、削除できたとしても、1度流出してしまった情報や画像は、再び投稿される可能性があるので、不安で仕方がないでしょう。
このような窮地に陥ったとき、犯人を特定して再び同じような書き込みをさせないためのポイントを、福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、書き込みサイトへの誹謗中傷犯人を特定するのが難しい理由
総務省が発表した「平成28年版情報通信白書」によると、インターネットの普及率は今や人口の83.0%にまで達し、誰しもが日常的に気軽な利用をしているのが現状です。
その弊害というべきか、簡単に悪質なデマをネットに書き込まれる被害が発生しています。誰がいつ被害者になるのかわからない点が、恐ろしいことですが、それが赤裸々な現状でしょう。
冒頭の「中洲の風俗店で」という相談内容は、たとえ話ではありますが、決して遠い世界のことではない……といえそうです。
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(1)書き込みサイトへの投稿者で特定に至るもの
根拠のない悪質な書き込みを発見したとき、まずは削除してほしいと思うのは被害者として当然です。まして、地方都市福岡にあっては、中洲という具体的な歓楽街の名前まで出しての誹謗中傷となると、うわさの広がり方も日常生活に害が及ぶほどかもしれません。直ちに弁護士や警察へ相談や訴える必要性を感じるほどの問題となりやすいでしょう。
では、対処の具体的な方法を解説します。
最初に留意すべき点は、それが、刑法に定められた「名誉毀損(きそん)」や「侮辱」などにあたるかどうかの判定です。
中でも発信者を特定するための具体的なアクションを起こす案件の場合は、それなりの根拠が求められることになります。
削除依頼をする際に認められやすい削除理由としては、社会的な評価を下げるような名誉毀損(きそん)、個人情報、写真の無断アップなどのプライバシー侵害がそれにあたります。
冒頭の事例のように、中洲の風俗店で働いたこともないのに、あたかも事実のような書き込みをされれば、「発信者を特定するためのアクションを起こせる」事案と判定されやすいでしょう。 -
(2)個人での書き込みサイトへの対応
誹謗中傷を書かれやすい書き込みサイトでは、古くは2ちゃんねる(現在5ちゃんねる)が有名ですが、最近では爆サイ掲示板などの地域に特化したローカルコミュニティサイトなども増えてきているようです。ローカルコミュニティサイトほど、「中洲で風俗店」など地域性のある悪質な書き込みがされやすい傾向があるため、注意が必要でしょう。
実際に、悪質な書き込みを削除しようとしたとき、個人では以下の4つのアクションが考えられます。
悪質な書き込みを削除するための対応(個人の場合)
- ウェブフォームからの削除対応
- ガイドラインにのっとった削除請求
- 仮処分・訴訟などの法的手段による削除対応
- 技術的対応(逆SEO対策などでの削除対応)
これらを個人で行うとなると、書き込みサイト側が対応してくれなかったり、要件を満たせずに記載不十分で取り合ってもらえなかったりすることがあるようです。
誹謗中傷が多いサイトなどでは、中には連絡先さえ明示してないサイトもあります。
また、削除要請の文言にも注意が必要でしょう。場合によっては営業妨害と判断されることもあるためです。 -
(3)弁護士がサポートに入る場合のメリット
個人で削除要請をしても、対応してもらえないとき、強い味方となるのが、弁護士です。
ウェブフォームからの削除対応も、弁護士のアドバイスがあれば営業妨害と判断されてしまうような文言を避けられるでしょう。
特に、仮処分や訴訟を起こす場合は、個人では対応が大変難しいものです。弁護士の協力が心強く思えるでしょう。
削除請求などの案件に対応した経験が豊富な弁護士からは、経験に基づいた豊富なアドバイスがありますので、早期解決の可能性が高まります。
2、誹謗中傷などの悪質な書き込みをした犯人を特定する方法
「悪質な投稿を誰がしたか」。気になることと思います。しかし、インターネット上において個人を特定することは、大変難しいことのように思われることでしょう。
では逆に、悪質な投稿をしている者を特定できなければ、どのようなことが起こるのでしょうか。
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(1)書き込みサイトから削除するだけでは安心できない
誹謗中傷など、悪質な書き込みをサイトに投稿され、ウェブフォームなどからの削除依頼が認められたとします。
結果、運よく削除されたとしても、投稿者が特定できなければ、また別の書き込みサイトに次々と同じ内容の誹謗中傷が投稿される可能性があります。
このようなケースは、少なからず実際に起こっているため、注意が必要です。悪意ある書き込みを繰り返す相手を特定して、何らかの手を打たなければ、削除と投稿が追いかけっこ状態となってしまいます。あなたの徒労感は蓄積され、被害は広がるばかりとなるかもしれません。
そこで書き込みサイトに悪意ある投稿を行っている者を特定する必要があります。 特定していなければ、何の手を打つこともできないのです。
悪意ある投稿者を特定することでできること
- 知り合いであれば直接注意ができる(保護者などに注意してもらえる)
- 裁判所を通じて書き込みしないよう相手に求める「差止請求」を行う
- 仕事上などで支障があれば損害賠償請求を行う
- 名誉毀損など、刑事事件として告訴・告発を行う
- 書き込みサイトの運営者に協力してもらい、該当のIPなどから投稿できなくしてもらう
ただし、誰が悪意ある投稿をしているのかを特定できなければ、誹謗中傷を受けた被害者は、損害賠償請求をすることがかなり難しくなります。
警察に相談しても、インターネットを介したチケット取引詐欺などの実害がないケースでは、協力を得られる可能性は低いといわざるを得ません。
捜査機関に依頼するための必要となる第1歩は、悪質な投稿者を行う者を特定することです。
しかし、インターネット上において、個人を特定することは、大変難しいものです。
弁護士のサポートがあれば、これから先の対応についての道筋が見えてくるでしょう。 -
(2)任意開示手続きの有効性
書き込みサイトや掲示板に誹謗中傷を書いた投稿者を特定するための「発信者情報開示」は、民事上の請求権として規定されています。
つまり、裁判などの手続きを行わなくても請求できるということです。これを「任意開示(にんいかいじ)」と呼びます。
「任意開示」による請求でも、裁判を通じて情報の開示を請求する場合でも、悪意ある投稿者を特定するために必要となる「情報」や「請求の相手方」は、糸をたぐるように特定していく必要があります。1度の開示請求で、すぐに相手が特定できるわけではない点に注意が必要です。
具体的には、最初は書き込みサイトの運営者、次は犯人と思われる人物が使用しているプロバイダ……という形で、少しずつ悪意ある投稿を繰り返し行う投稿者の情報に近づいていくことになります。
しかし、任意開示の現状として、書き込みサイトの運営者や経由プロバイダは、悪意ある投稿の削除はしても、その先の個人特定につながる情報の「任意開示」に応じるケースは残念ながら多くはないようです。
もし、経由プロバイダなどの管理者が、任意に発信者情報の開示に最終的に応じたいと考えていたとしても、刑事案件が先に対応されるので、後回しにされる可能性が高い傾向があります。時間がかかればかかるほど、誹謗中傷が拡散されてしまう危険性があります。
3、発信者情報開示請求の手順について
前述したとおり、残念ながら、「任意開示」手続きはさほど有効な手段とはいえません。そこで現在は、プロバイダ責任制限法4条に基づき、裁判所を通じて、プロバイダ等に対する「発信者情報の開示」の請求手続きを利用することが、一般的となっているのが実情です。
裁判を利用して発信者情報開示請求を行う際は、インターネットや削除請求経験が豊富な弁護士の力が必要不可欠となるでしょう。
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(1)具体的な発信者情報開示請求手続きの流れ
弁護士に相談しながら「発信者情報開示請求」を行うとき、おおむね次のような順番で、書き込みサイトへの悪意ある投稿者の個人を特定することになります。
発信者情報開示請求の流れ
- 書き込みサイト問題について弁護士への相談、ご契約
- 発信者情報(IPアドレス)開示請求(仮処分)
- 裁判所を通して、IPアドレスの開示決定
- IPアドレスの開示
- IPアドレスからインターネット業者の特定
- 発信者情報(住所氏名など)の開示請求訴訟の提起
- 判決
- 発信者情報(住所氏名など)の開示
- 発信者特定
ただ、誹謗中傷をする相手が誰なのかを知るための過程においても、法律の知識が要求されることになります。
専門知識を有している弁護士に依頼したほうが、早急な対応が行えるでしょう。 -
(2)その後の法的手段
再び書き込みサイトへの誹謗中傷をされないためにも、法的手段に訴えるのは有効な方法といえるかもしれません。具体的には不法行為に基づく損害賠償請求、もしくは刑事告訴を検討することになります。
最終的に賠償請求や刑事告訴を視野にいれて、書き込みサイトへ削除請求を行うのであれば、最初から弁護士のサポートを受けておくことをおすすめします。
スムーズな賠償請求や告訴につながる可能性が高まり、削除請求を弁護士に相談することによるメリットがより大きくなるでしょう。
実際に被害にあうと、すでに誹謗中傷で深く傷つき、大変疲弊するものです。
自ら動くことにも恐怖を覚えているケースも少なくありません。法的な手段や必要となる事務処理の代行、さらには適切なアドバイスをしてくれる弁護士に助けられるはずです。
4、悪質なネットの書き込み削除で知っておきたい注意点2つ
書き込みサイトへの誹謗中傷の削除依頼を検討するとき、ぜひ留意しておくべきことが2点あります。それは、「時期」と、「削除請求を委託する相手」です。
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(1)プロバイダのログの保存期間
まず気をつけてほしいのが、弁護士へのご相談は、できるだけ早いタイミングでしてほしいという点です。
証拠保全のためにも大変重要なプロバイダのログは、一般的に半年程度で削除されてしまいます。中にはもっと短いスパンで削除してしまうプロバイダもあります。できるだけ早急に着手しなければ、相手を特定することも、損害賠償を行うこともできなくなってしまいます。確実な証拠を押さえることによって、その先の法的手段へスムーズに進むことができるでしょう。
一方で急がなくてはと焦るあまりに、誰にも相談せずにひとりで突き進んでしまうと、思わぬ落とし穴に引っ掛かることになるかもしれません。 -
(2)削除代行業者へ依頼する危険性
前項で示した思わぬ落とし穴とは、削除代行業者に依頼してしまうことです。
多くの方にとって、弁護士に相談することは敷居が高いと感じてしまうようです。 そこで、法律事務所への相談をためらった末、削除代行業者に依頼してしまうケースもあるでしょう。
削除代行業者の業務内容自体が、「報酬を得て法律上の問題を解決する」行為にあたります。しかし、この行為は「非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止」を定めた弁護士法72条に違反しているのです。弁護士法第72条に違反する行為を「非弁行為」と呼ばれています。
非弁行為には罰則も設けられ、刑罰に処せられます。不法な業者へ申し込んだとき、あなたの個人情報がどのように扱われるかは、誰にもわかりません。
重々、慎重に行動すべきところです。
弁護士に相談してほしい理由が、ここにもあります。
訴訟をする可能性がなくても、遠慮する必要はありません。弁護士へ早めに相談することは、早期解決へつながる可能性を高めるでしょう。
5、まとめ
今回は、書き込みサイトに誹謗中傷を書き込んだ投稿者特定のポイントについて紹介しました。加害者個人を特定することによって、被害が継続する危険性を極力少なくすることが期待できます。
誹謗中傷を書き込みサイトに載せられて悩んでいる方や、書き込みサイトで誹謗中傷をしている加害者を特定したい方は、ベリーベスト法律事務所
福岡オフィスにお問い合わせください。福岡オフィスの弁護士が、あなたの名誉やプライバシーを守るために尽力します。
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