モラハラ夫と離婚するなら知っておきたい離婚の方法や手順について
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近年、モラハラ(モラルハラスメント)を原因とする離婚が増えています。
モラハラは「精神的な虐待」と定義づけられることが多いのですが、平成28年度の司法統計によれば、「申立ての動機」を「精神的な虐待」とするケースの件数は、申立人が妻の場合で第3位、夫の場合で第2位となっています。
そこで本記事では、モラハラ夫と離婚するときに知っておきたい離婚方法やその手順について、詳しく解説します。
出典:「第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」(裁判所)
1、モラハラとは? モラハラ夫のよくある特徴
まずは、モラハラとはどういう行為を指すのか、またモラハラをする夫の特徴などについてみていきましょう。
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(1)モラハラとは
モラハラとは、「モラルハラスメント」の略称であり、言葉や態度で巧みに人の心を傷つける精神的な虐待・暴力などと解釈されています。
たとえば、暴言を吐く、嫌がらせをする、必要以上に相手を束縛する、といった個人の尊厳を踏みにじる行為がモラハラであると考えられています。 -
(2)モラハラをする夫の特徴
モラハラをする夫は、自分が加害者であるという認識を全くと言って良いほど持っていないことが特徴です。また、モラハラ夫の行動としては、以下のようなものが現れます。
- 「結婚生活が始まった」「妊娠した」など、相手の女性が自分から離れにくくなった出来事をきっかけに、態度が豹変する
- 妻に対しては支配的なのに、よその人には人当たりが良く、勤務先での評判も高い
- 妻が何か言っても返事をしない、目を合わせない
- 自分が悪くても非を認めない
- 常に上から目線
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(3)夫がモラハラに走る原因とは
夫がモラハラに走る原因は、「男性が女性より偉い・優れている」という男尊女卑の思想を持っていることが原因の1つです。よその人に対してはとても人当たりが良いことが多いのですが、気に入った女性と結婚して自分のものになると、女性を自分の支配下に置こうとするのです。
2、法的に離婚が認められる5つの事由
法的に離婚が認められるには、離婚事由が民法で定められた以下の5つの離婚原因のいずれかに該当しなければなりません。
- ① 配偶者に不貞行為があった
- ② 配偶者から悪意の遺棄があった
- ③ 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
②の「悪意の遺棄」は、あまり耳慣れない言葉だと思いますが、簡単に言うと「夫婦の協力義務を果たさないこと」です。
民法第752条では、夫婦は一緒に暮らし(同居義務)、家計を共通にして助け合って家庭を維持する義務(協力扶助義務)があると規定されているため、この義務を怠っているようなケースです。
たとえば、以下のような場合です。
- 家庭に生活費をいれない
- 家出を繰り返す
- 正当な理由もなく同居を拒否し、別居生活をする
- 配偶者が愛人の家で生活している
- 健康であるにも関わらず夫が働かない
- 夫婦関係がこじれて、実家に帰ったまま帰ってこない
別居といっても、「仕事の都合で単身赴任」や「お互いに冷静になるために冷却期間をおいて、夫婦関係の修復ができたら再度同居する予定があった場合」などは、正当な理由ですので悪意の遺棄にはあてはまりません。
3、モラハラを理由とした離婚が可能なケースとは
モラハラ夫を離婚裁判で訴えるためには、前述した①~⑤のいずれかの条件にあてはまることが必要となります。
では、モラハラを理由とした離婚ができる可能性があるケースについて、みていきましょう。
具体的には、以下のようなケースが該当すると考えられています。
なお、モラハラを理由とした離婚の場合、事の性質上、夫は必ずと言っていいほどモラハラの事実を否定してきますので、モラハラの事実を立証できる証拠が必要になります。
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(1)暴言を吐いたり、暴力をふるう
「お前は人間のクズだ」「お前なんて生きている価値がない」「誰のおかげで飯が食えていると思ってるんだ!」などと、妻の人格を否定するような暴言を毎日のように吐かれたり、反論したら殴られるなどの暴力を振るわれているようなケースでは、程度にもよりますが、あまりに酷いケースでは離婚が認めてもらえる可能性があります。
このような場合は、暴言をボイスレコーダーに録音する、暴力を振るわれた際に病院で診断書をもらう、など証拠を集めておくとよいでしょう。 -
(2)家に生活費を入れない
小さい子どもがいる、病気がちで外に出られないなど、妻が働きに出られないような状態にもかかわらず、健康な夫が家庭に生活費を入れようとしない場合、自分や子どもの心身の健康にかかわります。
このようなケースは、前述した「悪意の遺棄」にあてはまり、離婚が離婚できる可能性が高くなります。家計簿をつけたり、銀行の通帳記入などで家庭のお金の動きがわかる証拠を残しておくとよいでしょう。 -
(3)束縛する
「自分の実家の両親や友人と連絡を取りたくても、いちいち夫に連絡して良いかどうか訊かなければならない」「自分以外の男性と会うことを禁止される」「肌を露出しすぎだ、と服装に文句を言ってくる」など、モラハラ夫が妻の行動をいちいちチェックし、束縛してくるなどの行為が、常識を逸脱するほど酷いような状況であれば、離婚が認めてもらえる可能性があります。
このような場合も、夫の発言をボイスレコーダーに録音するなど証拠を集めておくとよいでしょう。 -
(4)無視される・逆切れされる
「何を言っても無視される」「あからさまに大きな音を立てて不機嫌であることをアピールしてくる」「どうしてほしいのかを聞くと、そんなこともわからないのか!と逆ギレされる」など、無視を続けて妻を精神的に追い詰めようとしている場合、離婚できる可能性があります。
このような場合も、夫の発言をボイスレコーダーに録音するなど証拠を集めておくとよいでしょう。 -
(5)何かにつけてバカにする
特に夫のほうが妻よりも高学歴で、「お前は高卒(中卒)だから、こんなこともわからないんだろう」「だから高卒(中卒)は困るんだよな」などと何かにつけて妻のことをバカにしてくる場合、程度にもよりますが、常識を逸脱するほど酷いケースでは、離婚が認められる可能性があります。
このような場合も、夫の発言をボイスレコーダーに録音するなど証拠を集めておくとよいでしょう。
4、モラハラ夫と離婚する方法・手順について
では、実際にモラハラ夫と離婚する方法・手順についてみていきましょう。
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(1)まずはモラハラ夫と決別する覚悟を決める
モラハラ夫と離婚しても、財産分与はしてもらえないかもしれませんし、慰謝料や養育費もあてにできないかもしれません。そのため、最低限生活できるだけの収入がなければ、生活水準が下がってしまう可能性もあるでしょう。
しかし、その代わりモラハラ夫と離婚すれば、さまざまな嫌がらせから解放され、自由に自分の生活を送ることができるようになります。
そのためには、どんなに夫から圧力がかかっても、また離婚成立までどんなに時間がかかっても、「夫と決別する」という覚悟を持つことが大切です。 -
(2)弁護士を通して協議・離婚調停
離婚の方法で1番多いのは「話し合いでの離婚」です。これを「協議離婚」と言います。
モラハラ夫が話し合いで離婚に同意するのであれば、それに越したことはありません。
ですが、モラハラ夫は「妻は自分に服従して当然だ」と考えているため、妻が勇気をもって対等な立場で離婚を切り出そうとすると、納得するどころか強く反対される可能性があります。
モラハラ夫は支配下に置いている妻の言うことなど聞く耳を持つ気がないことが多く、話し合いをしようとしても「お前なんか離婚しても生活していけないだろう」「離婚したら貧乏になって金に困るのがオチだ」などと言って、無理やり妻に離婚をあきらめさせようとしてくるような場合もあります。
このような威圧的な態度を繰り返すようなモラハラ夫と、自分ひとりで離婚話を進めるのは困難でしょう。そのような場合、弁護士に間に入ってもらい、話し合いを進めるとよいでしょう。
弁護士は、法律のプロであると同時に交渉のプロです。
本人同士が直接話し合うと、どうしてもお互いに感情的になって話がこじれてしまいがちですが、弁護士が代理人として交渉することで、モラハラ夫に「弁護士であれば、ちゃんと話をしなくてはまずい」という心理的効果をもたらし、具体的な離婚の条件を提示した話し合いをすることで、離婚を受け入れてくれる可能性があります。
また、弁護士を通して話し合いを行うことで、養育費などについてもより有利な条件を引き出せる可能性も高くなります。
弁護士が間に入っても「どうしても相手方が協議離婚に応じない」「話し合おうとしても夫が感情的になってしまい、話し合いにならない」などの場合は、家庭裁判所に離婚調停を申立てて、調停委員会の仲介のもとで協議を進めていきます。調停委員会には、夫と顔を合わせないように面談の時間をずらすなどの配慮してもらいましょう。
ですが、酷いモラハラ夫の場合には、調停離婚を申立てても、期日に夫がきちんと出頭せず、調停を成立させるのは難しい可能性もゼロではありません。 -
(3)離婚裁判
「夫が指定された期日に出廷しない」「夫が調停委員会から出された調停案に合意しない」などの理由で調停が不成立に終わった場合に、裁判離婚を申立てて、裁判で争うことになります。
裁判離婚は1年以上~数年かかるケースもあり、長期戦になります。
どうしてもモラハラ夫と離婚したければ、長期戦になってでも争うことを辞さない覚悟をしたほうがよいでしょう。
裁判でモラハラ夫との離婚を勝ち取りたいのであれば、どれだけ具体的な証拠を集められるかが勝負になります。どんなに自分としては耐え難いほど苦痛で、離婚をしたいと思っていても、証拠がない場合、法的には離婚が認められない可能性があります。
残念ながら、「確たる証拠がないために裁判所でモラハラが認定されない」というのはよくあることなのです。
証拠を提出できたとしても、裁判では、「客観的に見ても夫婦関係の修復・継続が難しい」と判断されなくて離婚は認められません。そのため、具体的な証拠が何よりも重要なのは明白です。
モラハラ夫からされた行為について、日頃から被害の内容の詳細な日記をつける、相手の発言を録音する、病院に行き診断書を貰う、家計簿をつける、などの証拠を揃えておくことをお勧めします。
裁判となると、専門的な法律の知識も必要になりますし、当然費用もかかります。
必ず離婚・男女問題に詳しい弁護士に依頼して、方針や費用などについてもしっかりと確認・相談してから進めましょう。
5、別居を理由に離婚へと持っていく手段も
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(1)別居すると離婚が認められやすい
モラハラ夫と離婚するために「別居をする」という選択肢もあります。
モラハラの証拠が不十分でも、別居している期間が長期であれば、「夫婦関係が破綻している」という理由で離婚にもっていくことができる可能性が高まります。
なかなか離婚の話が進まないようなケースでは、まずは家を出て、実家に身を寄せるなどし、別居するところから始めるのも1つの方法です。
離婚が認められるまでの別居期間は決まりがあるわけではありません。
ですが、別居の期間が長ければ長いほど、夫婦関係が破たんしているとして離婚が認められやすい傾向があります。事案にもよりますが、5年~10年程度の別居を行っていると離婚が認められやすいことが多いです。別居を理由に離婚に持っていきたいのであれば、最低でも2年は別居期間が必要となるでしょう。
ただし、別居にはリスクもあります。
夫婦間には同居の義務があります。離婚をしたいためとはいえ、夫の同意なしに別居を強行すると、あなたが「悪意の遺棄」をしていることになりますので、逆にモラハラ夫から訴えられ、慰謝料を請求される可能性もあり、注意が必要です。別居後の生活費をどうするのかという問題も出てくるでしょう。
別居について不安がある場合には、弁護士に相談しましょう。
弁護士が入ることで、穏便に別居を進めやすくするだけではなく、相手方から別居に要する費用(婚姻費用)を獲得するなど、より有利な条件を引き出せる可能性も高くなります。 -
(2)DVや暴力の場合は、一刻も早く別居を
モラハラを受けている人の中には、生命や身体が危険な状況にあるにもかかわらず、モラハラを受けることが日常になりすぎていて、危機的状況を認識していない方もいます。
そのような方は、まずその危機的な状況から脱する必要がありますので、一刻も早く別居することをお勧めします。覚悟が決まったら、早々に別居する準備をしましょう。
実家を頼ることができれば心強いですが、実家を頼れないような場合や、実家にもモラハラ夫の被害が及ばないか心配な場合などには、避難施設も検討しましょう。
近年ではDVやモラハラの被害に遭った人のために「シェルター」と呼ばれる避難施設を設置する自治体も増えてきているので、自分や子どもの身の安全を確保するためにも、そちらに一時的に身を寄せるという手もあります。
別居をしたほうがよいかは家庭の状況にもよりますので、弁護士に相談するとよいでしょう。
6、モラハラ夫と離婚するなら弁護士へご相談を
モラハラ夫と正式に離婚するまで、相当粘り強く取り組まなければならないことが予想されます。妻ひとりの力ではスムーズに離婚を成立させるのは非常に難しいため、離婚・男女問題の経験が豊富な弁護士に依頼して、弁護士に対処してもらうほうが良いでしょう。
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(1)弁護士にモラハラ夫との離婚手続きを依頼するメリット
弁護士に相談をすれば、まず自分がモラハラの被害者であることに気づくことができます。日常的に夫からひどい扱いを受けていると、その状況に慣れてしまって「夫婦関係とはこんなものだ」と思うようになってしまう傾向があります。
しかし、弁護士という第三者の視点からであればその人が置かれた状況がモラハラに相当するかどうかを判断できるので、モラハラの可能性があれば早急に対応策を講じることができます。 -
(2)ベリーベスト法律事務所はチームで対応
ベリーベスト法律事務所は、拠点の枠を超えて弁護士やパラリーガルなどのスタッフで離婚専門チームを結成して、お互いに連携しながら問題解決にあたっています。
そのため、モラハラがからむような難しいケースでも、全国にいるモラハラ問題の知見のある弁護士のサポートを受けながら問題解決を図ることが可能です。 -
(3)福岡オフィスはJR博多駅から徒歩5分
ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスは、JR博多駅から徒歩5分。博多駅は在来線だけでなく新幹線も停車する駅なので、博多周辺だけでなく、福岡県内およびその周辺地域からとてもアクセスがしやすいことが当オフィスの自慢です。
「モラハラ夫と離婚したい」とお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士まで、いつでもお気軽にご相談ください。
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