ギャンブル依存は治療できる? 生活の立て直しと借金問題の解決方法
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いわゆるギャンブル中毒が「ギャンブル依存症」という病気のひとつだと認識されはじめたのは、1970年代だといわれています。
パチンコ・競馬・カジノなどのギャンブルに中毒性があることは間違いありません。「やめたいのにやめられない」「ギャンブルに興じないと満足できない」と感じた経験がある方も少なくないでしょう。福岡市精神保健福祉センターのホームページでは、ギャンブル依存症など、さまざまな依存症の基礎知識や相談先が掲載されています。
ギャンブル依存症が引き起こす副作用的なものとして避けられないのが「借金」です。そして、ギャンブル依存症の治療に有効な方法のひとつが借金問題を解決することでしょう。ギャンブル依存症で抱えてしまった借金を解決する方法について、福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、ギャンブル依存症とは?
ギャンブル依存症という用語はすでに広く一般の知るところですが、単に「ギャンブルが好き」「ギャンブルばかりやっている」という人を卑下する表現のようにとらえられている傾向もあります。
ここでは、ギャンブル依存症について正しく理解するために、ギャンブル依存症の定義やリスクなどについて解説します。
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(1)ギャンブル依存症の定義
ギャンブル依存症とは、パチンコ・競馬などの公営競技・裏カジノなどの賭博といった賭け事にのめり込みすぎた結果、日常生活や社会生活に支障が生じている状態をいいます。
ギャンブルの目的は賭け事を楽しむことであるのに、いつの間にか「掛け金を取り返す」「さらに巨大な利益を得たい」という目的へとすり替わり、ギャンブルがやめられなくなります。
同じように「依存症」と名のつくものとして、アルコール依存症や薬物依存症がありますが、これらとギャンブル依存症の決定的な違いは、身体的な症状がないことでしょう。
そのため、自分自身がギャンブル依存症であることを自覚できない人も多く、症状は極度に重たい状態に陥ってしまう傾向があります。 -
(2)ギャンブル依存症のリスク
ギャンブル依存症がもつ最大のリスクは、借金問題を伴う可能性が高いという点です。
ギャンブル依存症に陥ってしまうと、冷静なときは賭け事をやめよう、やめるべきだと考えることができても、自分の意思に反して賭け事に興じてしまいます。そして、いずれ自分の資力を超えて借金を抱えてしまうのです。
借金問題を抱えてしまっても、適切に対処し、勤労に励めば元どおりの生活を手にすることは可能ですが、賭け事に興じたいという渇望が、それを許してくれません。
借金問題が深刻化することで社会的な信用を失ってしまい、家庭崩壊・離婚・失職といったリスクを背負うことになります。 -
(3)ギャンブル依存症は治療できる
そもそもギャンブル依存症は精神障害のひとつだと認識されていますが、精神疾患だとは断定されません。なぜなら、原因としての脳病変が確認できていないからです。
たとえば、統合失調症の患者には、一定の脳波の乱れが確認できます。だからこそ薬理的な治療の方法もあるわけですが、脳病変のないギャンブル依存症にはこれといった特効薬がありません。
ただし、精神的な問題を解決することでギャンブル依存症は治療できます。カウンセリングや代替行動に取り組むことで、賭け事の渇望を抑制して依存症状からの回復が期待できるでしょう。
国はギャンブル依存症の治療に対して、公的医療保険の対象とする方針を打ち立てています。今後はギャンブル依存症の治療を受けやすくなる環境が整備されていくと考えられます。
2、借金問題を清算する方法
ギャンブル依存症の治療に取り組むためには、社会生活の障壁となる借金問題を解決する必要があります。ギャンブル依存症のために重ねてしまった借金を清算する方法としては、「債務整理」が有効です。
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(1)ギャンブル依存症を解決するなら債務整理
債務整理とは、法的に借金の減額や支払いに猶予をもたせる法的な手続きをさします。
さまざまな理由で抱えてしまった借金を解消し、正常な社会生活に復帰するための解決策となります。
債務整理には3つの方法があります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
また、債務整理に準じる手続きとして「過払い金請求」も挙げられるでしょう。 -
(2)任意整理
これまでに支払いすぎた利息分と将来支払う利息をカットすることで、毎月の支払額を軽減できる手続きが「任意整理」です。
任意整理は、裁判所の制度を利用せず、債務者と債権者の話し合いによっておこなわれます。
ただし、債務者が個人として任意整理をもちかけるリスクは、カットされる利息分において不利な条件となるおそれがあるという点です。
貸金業者などは弁護士による手続きを前提としていることが多いため、弁護士へ依頼したうえで、任意整理をすすめるのが賢明です。 -
(3)個人再生
裁判所に再生計画案を提出して認めてられた場合、借金が5分の1程度に圧縮される制度が「個人再生」です。原則、3年かけて残った借金を返済していきます。
借金は残りますが、計画どおりに返済できれば完済したとみなされるうえに、住宅ローンの支払いが途中であるマイホームがあった場合、処分せずに手続きできるというメリットがあります。 -
(4)自己破産
裁判所に手続きを申し立てて、自分の資産を整理するかわりに借金をゼロにできるのが「自己破産」です。
マイホームなどの資産を失うことになりますが、借金額がゼロになることで再スタートが可能になります。
自己破産の手続きでは、自己の資産を整理する必要があるほか、手続きが進行している間は一定の職業に就けないなどのデメリットがあります。ただし、多くの方が誤解しているように「全財産をとられてしまう」「賃貸マンションから退去させられる」「周囲の人にバレてしまう」などの不利益を受けることはありません。 -
(5)過払い金請求
債務整理の手続きとは異なりますが、借金問題の解決に向けて有効となる手だてのひとつに挙げられるのが「過払い金請求」です。
過去に、利息制限法の上限を超えた高い利息で借金を返済していた場合に「支払いすぎた利息分」を返してもらう手続きです。
平成17年以前に借金していた場合は、支払いすぎた利息分が返済される可能性があります。
すでに完済している方でも過払い金請求は可能なので、該当する可能性がある方は弁護士に相談してみると良いでしょう。
3、債務整理を弁護士に依頼するメリット
債務整理や過払い金請求の手続きには、個人でも申し立てをすることは可能です。
ただし、さまざまなメリットを考慮すれば弁護士に一任するのが最善策といえるでしょう。
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(1)最適な手続きを選択し、その手続きの代理を依頼できる
弁護士に相談することで、自分のその時点の状況では如何なる手続きを選択するのが適切なのかを知ることができます。
任意整理を選択すべきなのか、個人再生を選択すべきなのか、それとも自己破産を選択すべきなのかは、その人の置かれている状況によって変わります。
また手続きを一任できるのも、弁護士に依頼する大きなメリットだといえます。
具体的には、債務者の代理人として債務整理の手続きや債務者との交渉を任せることができます。
債務整理は煩雑な手続きが多く、提出する資料も多岐にわたるため、弁護士に任せることで手間を大幅に軽減できるでしょう。
これらのサポートは、司法書士なども可能ですが、代理人になれるのは弁護士だけです。弁護士であれば、裁判官や破産管財人との面会などの対応も依頼することが可能です。 -
(2)債務を整理できる確率が高まる
弁護士に依頼することで、債務整理が成功する確率が高まることが期待できます。
ここで注目したいのが、自己破産の「免責不許可事由」です。
自己破産にいたるには、さまざまな理由があるものですが、自己破産における免責許可が下されるためには、借金の理由が破産法に定められた11の理由に該当しない、という条件があります。そして、ギャンブルによる借金は免責不許可事由に該当するため、原則的に免責許可を得ることができません。
ただし、免責不許可事由に該当する場合でも、自己破産にいたるまでの事情や債務者本人の反省、手続きへの協力などを考慮して、裁判官の裁量で免責を認めることがあります。
これを「裁量免責」といいます。裁量免責を得るには、自助グループに参加して更生を目指している状況を示すなど、裁判官へのはたらきかけが必要です。
弁護士に依頼すれば、裁量免責を受けるためのサポートも得られるので、ギャンブル依存症によって借金が膨らんでしまい自己破産を選択するのであれば、弁護士への依頼は必須でしょう。
4、まとめ
ギャンブル依存症は、身体症状があらわれないため気が付かない間に重度の症状に陥ってしまう、危険な精神障害です。
賭け事に興じるあまり、給料や預貯金といった自分の資力を投じてしまうだけでなく、多大な借金を抱えてしまうケースが多いため「病気のひとつ」として治療・改善に取り組むべきでしょう。
ギャンブル依存症が原因で借金が膨らんでしまった場合は、治療・改善と並行しながら債務整理をする必要があります。経済的に負担が大きい状況を排除できれば、治療のあと押しにもなることも期待できます。
ギャンブル依存症による借金問題の解決は、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスにお任せください。借金問題の対応経験を豊富にもつ弁護士が、借金問題の解消をサポートします。
個人だけで借金問題に立ち向かうのは大変な苦労を伴うので、まずはベリーベスト法律事務所 福岡オフィスまでご相談ください。
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