玉突き事故の過失割合はどうなる? 真ん中でも過失ありとなるのか

2024年04月02日
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玉突き事故の過失割合はどうなる? 真ん中でも過失ありとなるのか

福岡県警察が公表している交通事故の統計資料によると、令和5年に福岡県内で発生した交通事故の件数は、2万0173件でした。そのうち、福岡市内で発生した交通事故の件数は、6005件です。

これらの交通事故の中には「玉突き事故」があったかもしれません。玉突き事故とは、3台以上の車が絡む交通事故です。複数の車が関与する事故形態のため、どの位置で事故に遭ったかによって、過失割合が変わってくることがあります。また、玉突き事故は、その事故形態から責任の所在が曖昧になりやすいため、どのようにして適切な過失割合を算定するのか、その方法について理解しておくことが大切です。

今回は、玉突き事故の過失割合の考え方や、真ん中の車についても過失が生じ得るのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。

1、玉突き事故とは

玉突き事故とは、後方から追突された車が追突された勢いで前方の車にさらに追突する交通事故をいいます。玉突き(ビリヤード)のように次から次へと追突していくことから、「玉突き事故」と呼ばれています。

玉突き事故は、信号待ちや渋滞中に起こりやすい事故類型です。中でも高速道路などスピードを出した状態で追突事故が生じると、3台に限らず、4台以上の玉突き事故が起きることがあります。

2、玉突き事故における過失割合の考え方

では、玉突き事故では、誰が、どのような責任を負うのでしょうか。以下では、玉突き事故における過失割合の考え方について説明します。

  1. (1)玉突き事故の基本の過失割合

    玉突き事故は、追突事故が複数重なった事故類型といえますので、原則として、追突事故の過失割合の考え方が当てはまります。追突事故は、追突してきた後方車の運転者の前方不注視や車間距離不保持などの一方的過失によって生じますので、基本的には被追突車には過失がないと考えられます。

    たとえば、先頭からA、Bという順で2台の車両が停止しているところに、Cが追突し、玉突き事故が生じたとすると、それぞれの過失割合は、以下のようになります。
    A:B:C=0:0:100


    このように、一般的な玉突き事故であれば、先頭の車や真ん中の車には、過失は生じず、初めに追突した車に100%の過失が生じることになります。

  2. (2)玉突き事故の過失割合が修正されるケース

    玉突き事故の基本の過失割合は上記のとおりですが、以下のようなケースでは、真ん中の車にも過失が生じることがあります。

    ① 真ん中の車が理由のない急ブレーキをかけた場合
    車の運転者は、危険防止のためやむを得ない場合を除いて、急停止や急ブレーキが禁止されています(道路交通法24条)。よって、危険防止のためといった理由もなく急ブレーキをかけたせいでおよび玉突き事故が生じた場合には、理由のない急ブレーキをかけた車の運転者にも過失が認められます

    たとえば、先頭からA、B、Cの順で並んでいる状態で、Bが理由のない急ブレーキをかけたために、CがBに追突し、BがAに追突するという玉突き事故が生じた場合の基本的な過失割合は、以下のようになります。
    A:B:C=0:30:70


    ② 先頭車両への追突を避けるために急ブレーキをかけた場合
    先頭車両への追突を避けるために急ブレーキをかけた場合には、危険防止のための急ブレーキといえますので、道路交通法24条には違反しません。

    しかし、真ん中の車の運転者が、前方不注視により、先頭車両の発見が遅れ、急ブレーキをかけたような場合には、真ん中の車の運転者にも一定の過失が生じます

    次の条件でシミュレーションしてみましょう。
    A、B、Cの順で並んでいる状態でBがAとの追突を避けるために急ブレーキをかけたことで、CがBに追突し、BがAに追突するという玉突き事故が生じた場合、過失割合は、以下のようになります。
    A:B:C=0:20:80


    ③ 高速道路上で玉突き事故が生じた場合
    高速道路では、一般道とは異なり、高速での走行が認められ、最低速度の維持義務が生じ、駐停車が原則として禁止されています。

    そのため、駐停車していた車に追突し、玉突き事故が生じた場合には、追突車両だけでなく被追突車両にも過失が生じることになります。

    たとえば、整備不良やガス欠など、自分に過失のある事情によって高速道路の本線車道に駐停車(B車)し、後続車両(C車)が追突したことで、先頭車両(A車)に追突した場合の過失割合は、以下のようになります。
    A:B:C=0:40:60


    ただ、高速道路の本線車道上に駐停車していたとしても、自分に過失のない事故で駐停車せざるを得ない状況であった場合には、過失割合が変わってきます

    駐停車していた車が退避可能であったか、または、停止表示器材を設置可能であったのにこれを怠った場合の過失割合は、以下のようになります。
    A:B:C=0:20:80

3、適切な損害賠償を受けるためにすべきこと

交通事故に遭ってしまった場合には適切な損害賠償を受けるためにも、以下の対応を検討しましょう。

  1. (1)痛みがないように感じても病院を受診する

    玉突き事故は、複数の車が絡む追突事故ですので、先頭車両になればなるほど事故の衝撃は少なくなります。玉突き事故の先頭車両の運転者は、今のところ特に痛みがないなどの理由で病院への受診を見送るケースがあります。

    しかし、事故当日は、興奮していることもあり、痛みを感じにくい状態になっています。そのため、事故から時間がたってから痛みやしびれなどが生じることもあります。

    事故から時間(およそ1週間から10日間以上)がたってから、病院を受診すると、相手方保険会社から受傷と交通事故との因果関係を否定されてしまうおそれがありますので、事故にあった場合には、痛みがなくてもまずは整形外科のある病院を受診することをおすすめします

  2. (2)事故態様に応じた過失割合を主張する

    玉突き事故では、追突車両の一方的な過失で生じることが多いため、原則として追突をされた被追突車両には過失はありません。

    しかし、被追突車両が理由もなく急ブレーキをかけたような場合には、玉突き事故の真ん中の車にも過失が生じる可能性があります。

    真ん中の車の運転者の方は、加害者や保険会社の担当者などから過失割合を告げられた場合には、その過失割合を受け入れるのではなく、事故態様に応じた適切な過失割合を主張することが大切です。過失割合が1割変わるだけでも損害額が何十万円も変わってくることも珍しくありません。

    適切な賠償を受けるためには、交通事故対応について経験や実績のある弁護士を介して十分に交渉し、適切な過失割合を主張することが重要です。

  3. (3)損害賠償の請求先

    玉突き事故が追突車両の一方的な過失によって生じた場合には、被追突車両は、追突車両の運転者に対して、損害賠償請求をしていくことになります。これは、被追突車両が複数台であったとしても変わりません。

    しかし、追突車両以外にも過失が生じる場合には、請求する相手が変わってくることがあります

    たとえば、A:B:C=0:30:70という過失割合だった場合には、AはBとCのいずれに対しても全額の損害賠償請求をすることが可能です。この場合には、より資力の高い方、手厚い保険に加入している方に損害賠償請求をしていくことも検討すべきです。

4、弁護士に対応を依頼したほうがよい理由

交通事故の損害賠償請求は、弁護士に依頼したうえで行うことをおすすめします。

  1. (1)保険会社との対応を任せることができる

    損害賠償の示談交渉は、一般的に加害者が加入している保険会社と行います。しかし、保険会社の担当者は、業務として交通事故の示談交渉をいくつも扱っていますので、交渉力や情報量の面で圧倒的な差があります。そのため、被害者自身で示談交渉をしても、過失割合に限らず、十分な主張ができないおそれがあります

    弁護士に依頼して示談交渉を一任することで、このようなリスクを回避することができます。また、交渉による精神的ストレスも大幅に軽減することができますので、示談交渉に不安を感じている方は、弁護士へ保険会社との交渉を依頼することをおすすめいたします。

  2. (2)慰謝料を増額できる可能性が高くなる

    交通事故の慰謝料の算定基準には、

    • 自賠責保険基準
    • 任意保険基準
    • 裁判所基準(弁護士基準)

    という3つの基準があります。

    それぞれの算定方法の違いから、一般的には自賠責保険基準が最も低い金額になり、裁判所基準が最も高い金額になるといわれています。

    十分な補償を受けるためには、裁判所基準での慰謝料請求がおすすめですが、裁判所基準で慰謝料を請求するためには、弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。少しでも慰謝料額を増額したいという場合には、弁護士への依頼が不可欠といえるでしょう。

  3. (3)適切な過失割合を主張できる

    玉突き事故では、最初の追突車両だけでなく、真ん中の車両や先頭の車両にも過失割合が生じることがあります。

    しかし、実際の事故態様を客観的証拠に基づいて主張していくことによって、保険会社が主張する過失割合を修正できる可能性があります。適切な過失割合を主張していくためには、交通事故に関する知識が不可欠となりますので、弁護士への依頼をおすすめします

5、まとめ

玉突き事故は、複数の車が絡む事故態様です。そのため、過失割合や責任の所在が複雑になり、個人での対応が難しくなるケースも少なくありません。適切な過失割合で、適切な賠償額を獲得するためには、交通事故トラブルの解決実績がある弁護士のサポートが不可欠といえます。

玉突き事故の被害に遭ってお困りであれば、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスまでお気軽にご相談ください。実績ある弁護士が状況をヒアリングし、問題解決に向けて尽力いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています