交通事故の示談交渉は自分でもできる? そのポイントと注意点を解説
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福岡市が公表している交通事故の統計資料によると、令和4年中に福岡市内で発生した交通事故件数は、5780件でした。政令都市単あたり順位は4位と、全国でも交通事故が多いエリアとなっている現状があります。
交通事故の被害に遭った場合、加害者または加害者の保険会社との間で示談交渉を行うことになります。自身の加入している保険会社の担当者を通じたり、弁護士に依頼したりして示談交渉を行うのが一般的ですが、被害者が自ら示談交渉を行うことも可能です。ただし、正確な知識がなければ不利な条件で示談に応じてしまうリスクもありますので注意が必要です。
今回は、交通事故の示談交渉を自分で行う際のポイントと注意点について、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故の示談交渉は自分でできる?
交通事故の示談交渉は、自分でもできるのでしょうか。以下では、示談交渉の概要と被害者自身で示談交渉を行うケースについて説明します。
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(1)交通事故の示談交渉とは
交通事故における示談交渉とは、一般的には、裁判所や交通事故紛争処理センター等を介することなく当事者同士の話し合いで解決する方法を指します。
示談交渉によって当事者間で合意に至れば示談成立となり、双方が取り決めた慰謝料額等を記した示談書を作成します。
交通事故が発生した場合には、まずは、被害者側と加害者側の示談交渉によって、賠償金の金額、支払い方法、支払い時期などを決めていくことになります。
なお、示談はあくまで個人間のやりとりになるため、どちらかが示談によって決まった約束を破ったとしても、原則として強制執行等はできません。 -
(2)被害者自身で示談交渉を行うケース
被害者が任意保険に加入していて示談交渉代行サービスがある場合、代理で示談交渉をしてもらうことができます。
しかし、任意保険会社の示談代行サービスは、もらい事故のように被害者に過失がない場合には利用することができません。そのため、このようなケースの場合、被害者が自分で示談交渉を行わなければなりません。
なお、被害者の過失の有無にかかわらず、弁護士に依頼した場合には、弁護士が被害者の代理人として加害者との示談交渉を行うため被害者自身で示談交渉をする必要はありません。
2、示談交渉で話し合う内容は?
示談交渉では、以下のような内容を話し合う必要があります。
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(1)交通事故の賠償金
交通事故の被害に遭った場合には、被害者の怪我の内容および程度に応じて、以下のような損害が発生します。
- 治療関係費
- 通院交通費
- 休業損害
- 慰謝料(傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)
- 逸失利益
交通事故の示談交渉では、損害項目ごとに金額を決める必要がありますので、まずは、話し合いによっていくら支払うべきかを決めていきます。
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(2)交通事故の過失割合
多くの交通事故では、被害者と加害者それぞれに過失(本来〇〇すべきだったのに、それをしなかったために事故が発生した、といえるような行為)があります。
過失割合とは、交通事故が発生した際の加害者側と被害者側の責任を割合で表示したものになります。
追突のようなもらい事故であれば、被害者には過失はありませんので、過失割合は、「加害者:被害者=100:0」になります。しかし、事故の発生について、被害者にも一定の責任があるケースでは、示談交渉によって過失割合を定める必要があります。
被害者にも過失がある場合には、過失相殺によって、最終的に被害者に支払われる賠償額にも影響してきます。賠償額が高額になるような事故の場合、過失割合が1割変わるだけでも、受け取ることができる賠償額が大きく変わってきますので、適切な過失割合を定めることが大切です。 -
(3)賠償金の支払い方法、支払い時期
示談交渉では、賠償金の支払い方法や支払い時期についても決める必要があります。
加害者が任意保険に加入している場合には、被害者への賠償金は、加害者の任意保険会社から支払われます。そのため、支払い方法としては、指定口座への振り込みによる一括払いで、支払い時期は、示談成立から1~2週間後となるのが通常です。
しかし、加害者が任意保険に加入していない場合には、加害者との交渉で支払い方法や支払い時期を決めていかなければなりません。加害者の資力によっては、一括払いが難しく分割払いを検討する必要もあります。
3、示談交渉を自分で行う場合のポイントと注意点
自分で示談交渉を行う場合には、以下の点に注意が必要です。
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(1)客観的な根拠に基づいて交渉をする
「もっと慰謝料を増額してほしい」、「過失割合はもっと低いはずだ」といった主観的な主張だけでは、自分の希望を受け入れてもらうことは期待できません。示談交渉では、客観的な根拠に基づいて交渉をすることがポイントになります。
過失割合の交渉をする際には、たとえば、以下のような客観的な証拠の提出が有効です。- ドライブレコーダーの映像
- 防犯カメラの映像
- 実況見分調書
- 物損資料(修理工場が作成した見積書や請求書等)
- 事故の目撃者の証言
こうした証拠を提示することによって、自身にとってより有利な過失割合を受け入れてもらえる可能性が高まります。
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(2)保険会社からの提示額を鵜呑みにしない
示談交渉では、まず、加害者側の保険会社から交通事故の賠償金の金額が提示されます。
保険会社から提示される金額には、計算の根拠なども記載されていることから一見すると適切な金額であるような印象を受けます。
しかし、加害者側の保険会社は、保険金を支払う立場にありますので、当然、被害者に対して支払うお金は少なくしたいと考えています。被害者にとって最大限有利な金額を提示してくることはまずありませんので、加害者側の保険会社からの提示額は鵜呑みにせず、自分でもしっかりと精査することが大切です。 -
(3)示談が成立するとやり直しはできない
示談交渉によって合意が成立した場合には、加害者側の保険会社から「事故解決に関する承諾書(免責証書)」という書類が届きます。
これは、いわゆる示談書と呼ばれるものであり、示談が成立したことを明確にする目的で作成される書面です。
この書類にサインをすることで示談成立となりますが。示談が成立してしまうと、その後に示談のやり直しをすることはできません。そのため、示談書にサインする際には、本当に記載されている示談内容でよいのかをしっかりと確認することが重要です。 -
(4)示談交渉が長引く場合には時効に注意
交通事故の損害賠償請求権には時効があります。人身事故の場合には5年または20年、物損事故の場合には3年または20年で、損害賠償請求の権利が消滅してしまいます。
そのため、示談交渉が長引き、時効が迫っているという場合には、時効の更新または完成猶予といった措置をとる必要があります。
4、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット
交通事故の示談交渉は、弁護士に依頼して行うのがおすすめです。
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(1)精神的負担を軽減することができる
示談交渉を自分でする場合には、加害者側の保険会社や加害者とのやりとりをすべて被害者自身で行わなければなりません。
日常の仕事や家事に加えて怪我の治療もしなければならない状況で、加害者側と交渉をするのは精神的にも大きなストレスとなります。
このようなストレスを軽減したいという方は、弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめいたします。弁護士に示談交渉を依頼すれば、加害者側とのすべての対応を弁護士に任せることができ、精神的負担の軽減はもちろん、治療に専念することができるでしょう。 -
(2)適切な条件で示談できる可能性が高くなる
示談交渉を自分で行う場合、保険会社から提示される賠償金の金額が適切なものであるかを自分で精査しなければなりません。
しかし、交通事故の賠償金には金額の相場や計算方法などのルールがあり、それらを正確に理解していなければ、十分な賠償金を受け取れないおそれがあります。適切な条件で示談をするためにも、示談交渉は弁護士に依頼するのがおすすめです。 -
(3)示談金が増える可能性がある
交通事故の慰謝料の計算方法には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)という3つの基準が存在します。
この3つの基準の中では、裁判所基準(弁護士基準)が最も慰謝料が高額になる基準ですが、裁判所基準によって示談交渉を進めるためには、弁護士への依頼が不可欠となります。少しでも示談金を増額したいとお考えの方は、弁護士への依頼を積極的に検討するようにしましょう。
5、まとめ
交通事故の示談交渉は、被害者が自分で行うことも可能です。
しかし、被害者自身による示談交渉では、適切な条件で示談を成立させることが難しく、不利な条件で示談に応じてしまうリスクがあります。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、保険会社との交渉をすべて任せることができるだけでなく、賠償額を増額できる可能性も高くなります。
ご自身の加入されている任意保険や自宅の火災保険等に弁護士費用特約が付帯している場合、費用の負担なく弁護士に依頼することも可能です。
まずは、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスまでお気軽にご相談ください。
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