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離婚の財産分与で損をしないために!知っておきたい「仮差押」

2018年05月30日
  • 離婚
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離婚の財産分与で損をしないために!知っておきたい「仮差押」

離婚で財産分与を受けようとしても、配偶者がきちんと支払いをしなかったり財産を隠されたりすると、適正な価額の財産を獲得できない可能性があります。
財産分与で損をしないためには、配偶者による不払いや財産隠しを防がなければなりません。
そのようなときに役立つ方法が「仮差押」の手続きです。

今回は、離婚する相手に財産があることが把握している場合に利用できる「仮差押」の方法、注意点などの必要な知識を中心に、弁護士が解説いたします。

1、仮差押とは?差押えとの違いについて

離婚の財産分与の際に役立つ仮差押ですが、「聞いたことがない」「言葉だけ知っているけれど、どのようなことか詳しく知らない」という方も多いです。
そこでまずは、そもそも仮差押とはどのような制度なのか、ご説明します。

  1. (1)仮差押とは

    仮差押とは、裁判の判決が出る前に、債務者の財産を一時的に差し押さえて動かせないようにする手続きです。
    典型的には、相手の預金口座を凍結してお金を引き出せないようにしたり、生命保険の解約ができないようにしたり、不動産の売買や抵当権の設定をできなくしたりします。
    仮差押をすると、夫や妻が離婚前に分与対象財産を隠したり、無断で消費してしまったりすることを効果的に防ぐことができます。

    仮差押えを行うのは、「裁判確定前」の時点です。
    一般的に、債権者が債務者に対して何らかの請求をして裁判を起こすと、判決が出るまでに何か月もかかってしまいます。すると、裁判の最中に、債務者が財産を第三者に移転したり隠したり、破壊したりしてしまうおそれがあります。
    そのようなことになると、債権者はせっかく勝訴しても債務者から支払いを受けられなくなってしまいます。判決に従って差押えをしようとしても、もはや財産が失われていたら差押えもできません。

    そこで、提訴前や提訴直後のタイミングで相手方の財産を仮差押して、動かせなくすることが有効です。
    仮差押をすると、相手は財産の処分を一切できなくなってしまうので、裁判の間に財産が失われることを防ぎ、債権者は判決確定後、保全しておいた財産から取り立てを行うことができるのです。
    仮差押は、財産の保全処分の種です。

  2. (2)離婚時財産分与や慰謝料と仮差押

    離婚の際には相手から財産分与を受けることができますが、離婚調停や離婚訴訟をしている間に相手が財産隠しをしてしまうおそれがあります。
    そこで、離婚調停前や離婚訴訟前に相手の財産を仮差押しておくことで、財産を守ることができます。
    仮差押は、財産分与のみならず慰謝料の支払を受けるためにも有効です。

  3. (3)仮差押と差押えの違い

    「仮差押」と「差押え」の違いについてわからないという方も多いので、説明をします。

    まず仮差押は、先ほど説明した通りの制度です。
    仮差押をするタイミングは、訴訟前や訴訟中など「判決確定前」「調停成立前」であり、仮差押の効果は「財産処分ができなくなること」です。

    これに対し、「差押え」とは、判決確定後や調停成立後などにおいて、判決書や調停調書などの「債務名義」を使って相手の財産から取り立てをする手続きです。
    つまり、裁判後(判決確定後)や調停成立後、公正証書の作成後に相手が支払いをしないので、判決書や調停調書、公正証書などを使って財産を換価して強制的に支払いをさせるのです。

    仮差押と差押えの主な違いは、利用するタイミングと効果です。

    ①申立てのタイミング

    仮差押のタイミング
    「債務名義を入手する前の時点」となります。
    「判決確定前、調停成立前、公正証書作成前、審判前」などです。

    差押えのタイミング
    「債務名義を入手した後の時点」となります。
    「判決確定後、調停成立後、公正証書作成後、審判確定後」などです。

    ②効果

    仮差押の効果
    「財産を動かせなくなること」です。
    財産を凍結させるにとどまり、「取り立て」をすることはできません。たとえば預貯金の場合、口座凍結して相手が出金できないようになりますが、こちらが出金して財産分与を受けてしまうことまではできないのです。

    差押えの効果
    「取り立て」です。
    預貯金を差し押さえると、預貯金口座を解約出金して、そのお金から財産分与や慰謝料のお金を支払ってもらうことができます。

2、離婚で財産の仮差押する時に調べておくべきこと

離婚の際に相手の財産を仮差し押さえするためには、「財産に関する情報」が必要です。
以下では具体的にどのようなことを調べておくべきか、ご説明します。

仮差押をするときには、債権者が差押え対象の資産を明らかにしなければなりません。
裁判所が、相手にどのような資産があるかを調べてくれることはないからです。財産を特定せずに仮差押を申し立てても認められませんし、特定した財産が存在しない場合には、仮差押が空振りで終わってしまいます。

そこで、離婚前に仮差押をするときには、債務者(離婚する相手)にどのような財産があるかを調べて正確に把握しておく必要があります。

仮差押の対象財産は、以下のようなものです。

①預貯金
預貯金を仮差押するときには、最低限金融機関名と支店名、口座名義人の情報が必要です。それさえわかれば口座の種類の特定や口座番号までは不要です。

②生命保険
生命保険を仮差し押さえするためには、最低限生命保険会社と契約者に関する情報が必要です。保険の種類や保険証券の番号の特定までは不要なケースが多いです。

③退職金
退職金請求権も離婚の仮差押の対象になります。
退職金を仮差し押さえするためには、勤務先と退職見込み時期、勤務開始時期や勤務年数などの情報が必要となります。

④不動産
不動産を仮差し押さえするためには、不動産の全部事項証明書に記載してある物件の明細情報が必要となります。

⑤車などの動産
車を仮差し押さえするためには、車検証に記載されている車両の番号や所有者などに関する情報が必要となります。
動産の場合、所在場所や特定するに足りる情報(動産の種類や色、戸数や名称等)が必要です。

3、離婚で財産の仮差押する方法・流れ

次に、離婚の際に配偶者の財産を仮差し押さえするときの具体的な流れをご説明します。

  1. (1)被保全権利と保全の必要性を明らかにする

    まずは、「被保全権利」と「保全の必要性」を明らかにする必要があります。
    被保全権利とは、仮差押によって守られるべき権利のことです。
    離婚のケースであれば、「財産分与請求権」や「慰謝料請求権」などが「被保全権利」となります。

    離婚するからといって、必ずしも財産分与や慰謝料の請求ができるとは限りません。自分たちの離婚のケースでそういった権利が認められるのか、また権利を証明する資料があるかどうか、しっかり検討しましょう。権利があることを疎明しないと、裁判所は仮差押の決定をしてくれません。
    「疎明」とは,「証明」よりは低い程度の立証でよく、裁判官に対して一応確からしいと思わせる程度のことを言います。

    また、「保全の必要性」も必要です。保全の必要性とは、仮差押を必要とする事情です。
    つまり、判決確定まで待っていると、債権の満足を受けられなくなる事情を裁判所に説明し、納得してもらう必要があるのです。

    たとえば、離婚事件において相手との金銭的な点での対立が激しくなっていること、相手が離婚時財産分与や離婚慰謝料の支払いを拒絶していること、夫が妻に婚姻費用を支払っていないこと、相手が離婚そのものを拒絶していること、相手が預貯金通帳や実印、銀行印などの財産管理者であることなどを裁判所に説明し、このままでは財産隠しされてしまうおそれが高いことをさかってもらわなければなりません。

  2. (2)仮差押の対象財産を決定する

    次に、仮差押の対象を明らかにしなければなりません。
    先ほども説明したように、相手の預貯金や生命保険、不動産や動産などの財産を調べて特定しましょう。

    また、相手に複数の財産がある場合には、どの財産を仮差押えするかも決める必要もあります。特に、離婚する相手に不動産がある場合には、裁判所から「まずは不動産を仮差し押さえすべきである」と指摘されてしまう可能性が高いです。

    仮差押をすると、相手に対して与える影響が大きいので、なるべく影響の小さい財産から仮差押の対象にすべきと考えられているからです。
    相手が不動産と預貯金・生命保険・退職金などの債権、現金や有価証券、車や骨董品などの動産を持っている場合、まずは「不動産」、次に「債権」、最後に「動産」を差し押さえるよう指示されます。
    いきなり預貯金などの債権仮差押を申し立てても、「不動産がないのか?」と聞かれ、不動産がある場合には債権仮差押が認められずに却下されてしまいます。

    そこで、仮差押をするときには「本当にその財産で良いのか」ということを慎重に検討してからにすべきです。

  3. (3)仮差押を申し立てる

    被保全権利と保全の必要性を明らかにして、仮差押の対象資産も決定したら、いよいよ仮差押の申し立てを行います。

    仮差押を申し立てる裁判所は、「本案の管轄裁判所」または「仮に差し押さえるべきものや係争物の所在地を管轄する地方裁判所」です。
    つまり、家庭裁判所で離婚調停や離婚訴訟を起こそうとしているのであれば、その家事事件を扱う家庭裁判所に管轄が認められます。

    また、たとえば不動産を仮差押するのであれば、その不動産がある場所を管轄している地方裁判所に管轄が認められますし、預貯金を差し押さえるのであれば、銀行のある所在地を管轄する地方裁判所にも管轄が認められます。

    一般的に、離婚調停や離婚訴訟前に仮差押を申し立てる場合には、申し立てる予定の家庭裁判所に仮差押命令を申し立てるケースが多いです。

    仮差押を申し立てるときには、以下のような書類が必要です。

    • 仮差押申立書
    • 当事者目録
    • 請求債権目録
    • 仮差押債権目録
    • 物件目録
    • 第三債務者に対する陳述催告の申立書


    仮差押債権目録
    仮差押の対象が債権(預貯金や生命保険解約返戻金請求権、退職金請求権など)の場合、物件目録は仮差押対象が不動産や動産などの「物」である時に必要となります。

    第三債務者への陳述催告申立書
    仮差押の対象が債権であり、第三債務者(銀行や生命保険会社、夫の勤務先の会社など)に対して債権の有無や内容を答えさせるために必要な書類です。

  4. (4)審尋を受ける

    仮差押を申し立てると、裁判所で「審尋」が開かれるケースがあります。
    審尋とは、裁判官と申立人が面談をして裁判官から事情を尋ねられる手続きです。

    このときに、きちんと被保全権利と保全の必要性があることを説明できて裁判官が納得したら、仮差押命令を出してもらうことができます。
    説明(疎明)不足であれば、追加の資料提出や申し立て内容の練り直しなどが必要となります。

  5. (5)担保金を支払う

    仮差押の要件を満たしていたら、裁判所が仮差押の決定をしますが、その際には担保金の支払いが必要です。

    仮差押は、仮に権利を認めて債務者の財産を差し押さえる手続きですから、将来的に権利が否定される可能性もあります。
    すると、債務者が不測の損害を受けるリスクが考えられるので、そのときのために債権者は保証金を払う必要があるのです。
    特段問題が起こらなかった場合には、後日に担保金を取り戻すことができます。

    担保金は、法務局にて供託する方法にて支払い、支払った証明の供託書を裁判所に提示すると、裁判所が仮差押命令を発布します。

  6. (6)仮差押の決定が出る

    仮差押の決定が出ると、裁判所が関係機関に仮差押の通知書を送ります。
    不動産の場合には法務局に通知が送られて不動産に「仮差押」の登記が行われ、不動産の処分や抵当権設定ができなくなります。

    預貯金の場合には銀行に連絡書が届き、預金口座が凍結されて債務者は預貯金の払戻しや解約などができなくなりますし、生命保険の場合には、生命保険の解約払戻しができなくなります。
    退職金を仮差押えすると、退職金の手取り額の4分の1の金額が債権者のために保全されます。


    また、仮差押命令の発令から1週間~2週間くらい後に、債務者の元にも通知が送られます。仮差押命令と同時に送らないのは、同時に送ると銀行が預貯金口座の凍結などの手続きを行う前に、債務者自身が解約出金などをしてしまう可能性があるためです。

    以上のような流れにより、仮差押が行われて離婚前の財産の保全が可能となります。

4、離婚で財産の仮差押する時に気をつけるべきこと

最後に、夫婦が離婚するときに、相手の財産を仮差押えするときに気をつけるべきことをご説明します。

  1. (1)差し押さえ財産には順番がある

    まず、仮差押の対象財産には順番があることに注意が必要です。

    たとえば夫婦の共有財産の中に自宅不動産があれば、まずは自宅不動産を仮差押の対象にしなければなりません。いきなり銀行口座を仮差し押さえしようとしても、却下されるか、取り下げを促されてしまいます。
    ただし、住宅ローンがついていてオーバーローン状態であれば、不動産に担保価値がないので、他の財産の仮差押を検討することとなります。

    仮差押を申し立てて却下されると時間が無駄になってその間に財産隠しされてしまう可能性があるので、スムーズに仮差押を進めるためには、仮差押対象財産の選定が非常に重要です。

  2. (2)担保金(保証金)が必要

    仮差押えするときには、担保金(保証金)が必要となります。
    保全の必要性や被保全権利があっても、担保金を支払わないと裁判所は仮差押命令を発布してくれません。
    担保金の金額は、仮差押対象資産の1~3割程度となることが一般的ですが、離婚事件の場合には、もっと安くしてもらえるケースが多いです。
    ただ、1件30万円としても、3件の財産を仮差押えすると90万円となり、結構な出費になりますから、お金の算段は重要です。

    また、判決が下りて権利が確定すると担保金の還付を受けられますが、その際、基本的に相手の同意が必要となり、スムーズに還付の手続きが進まないケースもみられます。
    相手がどうしても同意しない場合には、裁判所に対して「担保金取消決定」という申し立てをして、認めてもらわなければなりません。

  3. (3)債権仮差押の場合、陳述催告の申し立てをする

    銀行預金口座や生命保険などの債権を仮差押えするときには、必ず「陳述催告の申し立て」をつけましょう。

    これにより、具体的に当該銀行や生命保険において、どういった口座や保険があるのか、いくらの預貯金や解約返戻金があるのかなど、知ることができるからです。
    これらの情報を把握していると、将来実際に差押えを行うときにも役立ちます。

  4. (4)離婚協議や調停がスムーズに進まなくなる可能性がある

    仮差押をすると、債務者の怒りを買う可能性が高いことにも注意しておくべきです。

    たとえば離婚事件では、なるべく協議(交渉)によって解決したい例も多いものですが、勇み足で仮差押をすると、相手が怒って協議が不可能となるケースもあります。
    調停前に仮差押えしたことにより、調停での解決ができなくなって、離婚訴訟にもつれ込むパターンもあります。

    なるべくスムーズに離婚問題を解決したいのであれば、仮差押えの是非やタイミングなどについて慎重に検討すべきです。

5、財産の仮差押は、弁護士に相談を

離婚前には、夫婦の共有財産の財産分与権を保全するために、財産の仮差押が役に立つケースがあります。

ただ、仮差押の手順は複雑で、申し立てをしたからと言って必ず認められるわけではありません。また、そもそも仮差押をすべきかどうかについても、事前にしっかり検討しておくべきです。

離婚前の財産仮差押について、効果的な方法を知りたい方や、離婚について専門家のアドバイスを受けたい方は、弁護士に相談することが効果的です。

ベリーベスト法律事務所では、離婚時財産分与を始めとして離婚・内縁関係、男女問題全般について多くの依頼者からご相談をお受けしてきた実績がございますので、お悩みの際には是非とも一度、ご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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