どうしても離婚したい! 同意しない夫と強制的に離婚する方法は?
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「旦那がどうしても離婚してくれない…」
そのようなお悩みを抱えていませんか。実際に、離婚を検討するのは女性のほうが多い傾向があり、夫側がスムーズに離婚に応じることは少ないかもしれません。
しかし、一定の手順を踏み、あなたの訴えが認められれば、いわば強制的に離婚することができるケースがあります。家庭裁判所に認められやすい離婚原因や、調停・裁判の具体的な進め方、慰謝料の相場まで、離婚問題についての知見が豊富なベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、法律上の離婚原因が認められるケースとは
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(1)離婚に応じない旦那が多い
妻が離婚を望んでも、旦那が応じないケースが多い傾向があります。
なぜそういえるかというと、裁判所が公表している離婚調停の申立件数を見ると明らかに男性側からの申し立てよりも女性側からの方が、圧倒的に件数が多いためです。
一般的に離婚調停は離婚したいと思う側が申し立てるケースが多いものです。実際に、令和5年度の司法統計によると、女性側からの申立件数は4万1652件、男性側からの申立件数は1万5193件でした。女性側からの申立件数は、男性側の2倍以上となっています。
一般的に離婚は、裁判所の手続きを行わなくとも、双方が同意して離婚届を提出すれば成立します。しかし、相手が離婚に応じない場合には、最終的に「法律上の離婚原因」がないと、離婚することができません。
そこで以下ではまず、法律上の離婚原因が認められるのはどのようなケースなのか、確認しておきましょう。
法律上の離婚原因が認められるのは、以下の5つのケースです(民法770条1項各号)。- 不貞
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復しがたい精神病
- その他婚姻関係を継続し難い重大な事由
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(2)不貞
不貞とは、いわゆる不倫や浮気のことです。
旦那が別の女性と不倫していたら、旦那が離婚を拒絶していても離婚することができます。
ただ、法律上の「不貞」というためには、単に交際しているだけではなく「肉体関係」があった事実が必要となります。
つまり、旦那とよい雰囲気になっている女性がいる、というだけでは離婚できない可能性が高いです。
また、不倫を原因として離婚するためには不倫をしていることの証拠を集める必要があります。証拠がないと、旦那や不倫相手に否定されたら、その請求が認められることはないからです。 -
(3)悪意の遺棄
2つ目の法律上の離婚原因は「悪意の遺棄」です。
悪意の遺棄とは、正当な理由なく配偶者を見捨てることです。
典型的なのは、生活費を払わないケースです。また、勝手に家を出て行って戻ってこないケースでも、悪意の遺棄が成立しえます。
十分に健康なのに働かずに遊んでばかりいるケースでも、悪意の遺棄が成立する可能性があります。 -
(4)3年以上の生死不明
配偶者が3年以上の間、生死不明であれば、離婚することができます。
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(5)回復しがたい精神病
離婚原因となる「回復しがたい精神病」というのは、以下のような精神病を指します。
- 統合失調症
- 偏執病
- 躁うつ病
- 若年性認知症
- 重度のうつ病
これに対し、アルコール依存症や薬物依存症、軽度のうつ病やヒステリー、ノイローゼなどは離婚原因になりません。
また、回復しがたい精神病を理由として離婚するためには、それまでの間に献身的に配偶者を看護してきたことが必要です。さらに、離婚後の配偶者の生活がある程度保証されていることも必要となります。
たとえば、配偶者が実家に帰ったり、生活保護を受けたりして何とか生活していけるなら、離婚が認められる可能性があります。 -
(6)その他婚姻関係を継続し難い重大な事由
上記の4つの離婚原因に該当しない場合でも、それらに匹敵するほどの重大な事由があれば、離婚が認められる可能性があります。
たとえば、旦那が暴力を振るっているケース、酷いモラハラがあるケース、夫婦関係が冷え切っていて実質的には夫婦関係が破綻しているケースなどでは、これらの事実が認められれば、裁判によって離婚を認めてもらえます。
2、法律上の離婚原因がある場合の離婚の手順
以下ではまず、法律上の原因がある場合の離婚の手順をご紹介します。
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(1)証拠を集める
まずは、離婚理由に関する証拠を集めましょう。
証拠があれば、相手が離婚に同意しなくても、最終的に離婚訴訟を起こすことによって離婚することができるからです。
たとえば、夫が浮気しているなら、浮気の証拠を集めます。メールや写真をコピーしたり、興信所に依頼して調査報告書を入手したりしましょう。
DVを受けているなら、殴られた後のケガの写真を撮影したり、病院に行って診断書をもらったりしましょう。 -
(2)相手に離婚話を持ちかける
証拠をそろえたら、旦那に対し、離婚の話を切り出します。
自分が離婚したい理由をはっきり伝えて、離婚意思が固いことを示しましょう。
そして、離婚届を渡し、署名捺印するよう要望します。
また、協議離婚するときであっても、慰謝料や財産分与などの離婚条件を決めておく必要があります。子どもがいるなら、親権者と養育費の金額も決めておきましょう。
こうした条件について合意ができたら、調停をせずとも離婚をすることができます。きちんと離婚協議書を作成して、公正証書にしておきましょう。 -
(3)離婚調停を申し立てる
離婚の話し合いをしても夫が応じない場合には、離婚調停をする必要があります。
家庭裁判所に調停申立書を提出して、離婚調停を起こしましょう。
調停では、自分が申立人、旦那が相手方となって、話し合いをすすめます。調停委員が間に入って、旦那との離婚話を取り持ってくれます。
旦那と顔を合わさないで手続きを進められるので、自分たちだけでは解決できなかった場合でも、なんらかの解決ができる可能性は高くなります。
ただ、調停は話し合いの手続きなので、旦那がどうしても納得しない場合には、離婚を強制することができません。その場合、調停は不成立になって終わってしまいます。 -
(4)離婚訴訟を起こす
離婚調停が不成立になったら、離婚訴訟(裁判)によって離婚を進めていく必要があります。訴訟を起こすときには、家庭裁判所に訴状と証拠を提出します。
訴訟は、話し合いの手続きではありません。証拠さえそろっていれば、相手が離婚を拒絶していても、裁判官が離婚判決を出すことによって、強制的に離婚が実現します。このために、事前に証拠をそろえておくことが重要になるのです。
訴訟をするときには、素人の方が自分一人で進めることは困難ですから、必ず弁護士に依頼しましょう。
3、慰謝料の金額相場
法律上の離婚理由があって離婚をするときには、慰謝料が発生するケースが多いです。慰謝料は、相手に有責性があるケースで認められます。
たとえば、相手が不貞していたとき、悪意の遺棄があったとき、DVやモラハラがあったときなどが典型的です。
慰謝料が発生する場合と相場の金額は、以下の通りです。
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① 不貞
旦那が不貞していた場合の慰謝料相場はだいたい100万円~300万円程度です。婚姻期間の長さや不貞の回数や頻度などにより慰謝料の金額が上がることもあります。 -
② 悪意の遺棄
悪意の遺棄のケースでの慰謝料の相場は、だいたい50万円~200万円程度です。 -
③ DV、モラハラ
DVのケースでの慰謝料相場はだいたい50万円~200万円程度です。
4、法律上の離婚原因がない場合の離婚の手順
次に、法律上の離婚原因がない場合の離婚の手順をご説明します。
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(1)証拠を集める
法律上の離婚原因がない場合、簡単には離婚できません。
ただ、離婚するときには、これまでの婚姻生活の経過やお互いが所有している財産の資料が必要となります。
そこで、やはり証拠を集めておく必要があります。
たとえば、夫名義の預貯金通帳や生命保険証書、不動産などの財産関係の書類を集めたり(財産分与の証拠)、お互いのメールやLINEなどでのやりとり、夫の日頃の言動や夫婦がしっくりいっていないことを証明する資料を作ったりします(離婚するための証拠)。日記を書くのもよいでしょう。 -
(2)夫に離婚意志を察知させる
夫に、こちらが離婚を考えていることを意識させましょう。
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(3)離婚を切り出す
証拠をある程度そろえたら、離婚を切り出しましょう。このとき、はっきりと離婚したいという意思を伝えることが重要です。
まずは話し合いをするのがいいとは思いますが、話し合いができない、あるいは埒が明かない場合は、弁護士に依頼すると伝えてもよいでしょう。 -
(4)別居する
離婚を持ちかけても夫が離婚に応じない場合には、別居しましょう。
法律上の離婚原因がない場合でも、別居期間をおくことにより、離婚原因として認められることがあるからです。別居期間が5年にも及ぶと、離婚できる可能性が高くなってきますし、10年も別居していたら多くのケースで離婚できます。 -
(5)婚姻費用を請求する
別居したら、すぐに旦那に対し、婚姻費用の請求をしましょう。
婚姻費用とは、生活費のことです。夫婦は互いに扶養義務を負っているので、別居していても、相手の生活費を支払わなければならないのです。夫が婚姻費用を支払わない場合、家庭裁判所で婚姻費用に関する調停を利用することにより、最終的には、夫に支払いをさせる審判を受けることができます。
これにより、相手は「離婚しない限り、別居している妻に婚姻費用を支払い続けなければならない」状態となります。
当初は頑固に離婚を拒絶していても、別居の妻に婚姻費用の支払いを続けるよりは、と最終的に離婚に応じてくる夫も少なくありません。 -
(6)何度も話し合う
別居後、婚姻費用をもらいながら、何度も離婚の話し合いを繰り返しましょう。
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(7)離婚調停をする
話し合いをしても相手が離婚に応じない場合には、離婚調停を起こしましょう。
調停で、調停委員が相手を説得してくれたら、離婚に応じてくれる可能性があります。 -
(8)離婚訴訟を起こす
別居しても調停をしても、何度話し合っても一向に離婚に応じてもらえない場合には、別居後1年~数年が経過してから離婚訴訟を起こすとよいでしょう。
訴訟になると、泥沼の争いになりますから、相手もこれを避けて離婚しようという気持ちになることがあります。また、裁判官による仲介によって、和解で離婚できることもあります。
さらに、別居後のやりとりの状況により、夫婦関係が破綻している状態であると認められれば、判決によって離婚を認めてもらえる可能性もあります。
なお、訴訟は法律知識が必要となる複雑な手続きです。ご自身で進めると、手続きのミスなどにより不利な判決につながる可能性があります。離婚問題についての知見が豊富な弁護士に依頼すれば、専門的な知識と経験に基づいた適切な対応ができるため、より有利な解決を目指せます。訴訟は人生を左右する重要なターニングポイントになりえるものです。安易に自己判断するのではなく、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
お問い合わせください。
5、離婚に応じてくれない旦那との離婚を進めたいなら弁護士へ
夫が頑として離婚を受け入れない場合でも、手順を踏めば離婚できるケースが多いものです。しかし、できる限り遠回りせず、また今後の生活のことまで考慮して適切な慰謝料や養育費、財産分与を受けて離婚するためには、離婚の専門家である弁護士によるサポートが重要です。
離婚に同意しない、もしくは養育費や財産分与の支払いを拒否する配偶者を相手にお困りの女性は、お早めにベリーベスト法理事務所 福岡オフィスまでご相談ください。離婚問題に数多く対応した経験が豊富な弁護士が、適切なアドバイスを行うとともに、相手が離婚を拒絶していても、なるべく有利な条件での離婚を導き、あなたの新たな出発までサポートします。
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