浮気発覚でも不貞行為の証拠がないと慰謝料請求ができないのかを解説!
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「人口動態総覧」(厚生労働省) の都道府県別にみた年次別離婚率(人口1000対)によると、離婚率の高い都道府県の中で福岡県はトップ5に位置しています。それほど、福岡での離婚は身近なものになりつつあるのでしょう。
その離婚の理由の中でも「不貞行為を含む異性関係の問題」は、家庭裁判所の「婚姻関係事件数」に関する統計資料を参照にすると、第4位になっています。不貞行為とは、いわゆる浮気や不倫のことを示すため、夫婦関係において重い事案だと考えられるでしょう。
もし、信頼していたはずの配偶者が不貞行為をしたら、それについて償ってほしいと思うのは当然のことではないでしょうか。しかし、慰謝料請求をするためには、「不貞行為の証拠」が求められることになります。そこで、不貞行為の証拠の重要性や証拠となるものなどを、福岡オフィスの弁護士が解説します。
出典:「婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」(裁判所)
1、不貞行為と証拠の重要性
配偶者が不貞行為をしていると思っても、証拠がないという状況はよくあることでしょう。この状況で慰謝料請求ができるものなのか、不安に思うかもしれません。
結論から先に述べると、実際に、慰謝料請求するのであれば、不貞行為の証拠がなければ、不利な状況となる可能性が高いと予想されます。
まずは、不貞行為とはなにか、そしてその証拠について、解説します。
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(1)不貞行為とはどこからなのか?
不貞行為とは、民法第770条第1項に規定された「法定離婚事由」として認められる離婚原因のひとつとなる行為です。
「浮気」や「不倫」は悪いことだという認識は社会常識的に浸透していることでしょう。
しかし、「どこからが浮気か?」と問えば、その解答は人によって異なるものです。
一方、法律上で不貞行為のラインは明確に定められています。
具体的には、夫婦・婚約・内縁関係にある男女のどちらかが、配偶者以外の異性と自由意志で肉体関係を持つことを「貞操義務違反」とされています。
簡単に表現してしまうと、あなたの配偶者が、性行為を伴う交際をあなた以外の人としていた……というケースが「不貞行為」に該当します。
つまり、どこからが「不貞行為」かといえば、主に肉体関係のありなしが争点になるということです。さらに、裁判で争う場合は、その事実を客観的かつ具体的に示す必要となります。それが不貞行為の証拠です。
では、その証拠がないとなるとどうなるのでしょう。 -
(2)不貞行為の証拠がないと慰謝料請求は難しいのか?
まず、裁判や調停で争えるような不貞行為の証拠がないケースがどうなるかについて、説明しておきましょう。
残念ながら、あなたが配偶者の不貞行為を確信していても、配偶者や浮気相手が「していない」と主張し、不貞行為の事実を認めないケースは多々あります。それでも慰謝料請求などを行うときは、慰謝料の請求者が不貞行為があった事実を証明しなければなりません。
もし、証拠がない場合は、その請求に根拠がないとみなされるため、敗訴、つまり慰謝料を請求できない可能性が高まります。
ここまで見ていただき「慰謝料請求はできない」と、あきらめてしまう方もいるかもしれません。しかし、あきらめる必要はありません。
状況によっては、証拠を集められるケースは多々あるのです。まずは証拠がない状況から脱却するようしましょう。
現状、不貞行為の証拠がない状態でも、弁護士に相談いただければ、アドバイスできることがあります。
2、不貞行為の証拠となりえるものは?
では具体的にどんなものが不貞行為の証拠となるのでしょうか。証拠の収集を行う際、代表的なものを知っておく必要があります。
今、証拠がないという場合は特に、参考にしてみてください。
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(1)写真
性行為が行われたことを直接示す証拠はあまりないことから、ラブホテルに一緒に入っていく瞬間、ベッドの中で抱き合っている画像など、肉体関係を持ったことが間接的にわかる証拠写真が有効でしょう。
手をつないで歩く屋外デートなどの写真だけでは十分とはいえないので注意してください。またキスだけ、抱擁シーンだけでは証拠として弱いでしょう。 -
(2)メール・チャット
最近ではメールやチャットなども証拠として有効です。
交際していることや肉体関係を持ったとわかるものなどを集めるようにしましょう。「愛してる」「会いたい」だけでは十分ではない場合があります。 -
(3)手帳・スケジュール帳
手帳(電子手帳も含む)やスケジュール帳もチェックをしておくことをおすすめします。
それらに不倫相手との密会の記録などが記入されている可能性があるからです。
特別なマークが使われている場合もありますので、一目でわからなくてもコピーや写真などで全体を記録しておくといいでしょう。 -
(4)手紙・メモ
手帳までいかなくても、手紙やメモも有効になってきます。
不貞行為の相手のことが書かれてあるものなどないか、ゴミとして捨てる前にチェックしてみてください。 -
(5)録音データ
録音されたもの(テープやデータ)なども有効です。
不倫相手との会話などがあれば、不貞行為の立証に役立つでしょう。 -
(6)自動料金収受システム(ETC)記録
ETCの記録も取り出しておくことがおすすめです。
クレジットカードから判明するものもあります。これによって配偶者の行動範囲を把握しやすくなるでしょう。 -
(7)各種領収書
宿泊したホテルやレストランの領収書なども取っておいてください。
クレジットカードの使用履歴なども有力な証拠となりえます。 -
(8)第三者の証言
第三者の証言も有効です。
不貞行為の相手とのデート目撃談などがあったら、証言を取りつけておきましょう。証拠がない場合でも、第三者の証言なら今からでも得られるかもしれません。
現在、証拠がないからと早々にあきらめる前に、これらを弁護士に相談してみましょう。 -
(9)不貞行為の念書
早い段階において口頭で不貞行為のことを配偶者や不倫相手が認めることがあります。その場合、それを証明するものを取っておくといいでしょう。ただし、口頭だけでは証拠がない場合と同じ扱いになる可能性が高いです。
なぜなら1度は認めていても、いざ慰謝料請求の裁判・調停となると、「浮気していない」などと否認するケースが多々あるからです。
そのため、不貞行為を認めたとき、「不貞行為の自認書」を書かせることが重要でしょう。「念書」は配偶者や不倫相手本人に「不貞行為をしました。申し訳ありません。」と書かせて署名押印をさせることで作成できます。
3、弁護士に慰謝料請求を依頼するメリット
証拠がなく、敗訴の可能性も高いといわれたら、慰謝料請求自体をあきらめたく気持ちもわかります。そのときはまず、弁護士に相談してみることをおすすめします。
相談いただいた段階から集められる証拠もあるかもしれません。
離婚による慰謝料請求の対応経験が豊富な弁護士ならば、有益なアドバイスが可能です。
弁護士に相談するメリットは以下のとおりです。
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(1)不貞行為の証拠集め
これから不貞行為の証拠を集める場合は、大きく分けて、以下の3つの方法があると考えられます。
① 自分で集める
配偶者であるあなたにしか集められないような証拠が、家庭内には多々あるものです。お金もかかりませんし、即座に実行できる方法です。
どのようなものが証拠になるのか、「2、不貞行為の証拠となりえるものは?」を再度確認してみるとよいでしょう。
② 探偵事務所・信用調査会社に依頼する
家庭内で集められる不貞の証拠は自分でできますが、外でのデートやホテルでの不貞の証拠となると厳しいでしょう。子どもが小さければなおさら、外出は難しいはずです。
そのようなときは、多少のお金はかかりますが、探偵事務所などに依頼するのもひとつの方法です。
③ 弁護士に相談する
探偵事務所などは、悪徳な業者も参入しているようです。
どこに頼むかべきか、また、どうしたらいいかを迷ったら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、慰謝料請求のために有効な証拠の集め方からアドバイスすることができます。
なぜなら、自分で不貞行為の証拠を集めるときには、いくつかの注意点があるからです。それを次で解説していきます。 -
(2)自分で不貞行為の証拠を集める場合の注意点
自分で不貞行為の証拠を集める場合には、まずプライバシーの侵害に気をつけなければいけません。証拠がない場合は焦る気持ちも強いでしょう。
ですが、気持ちが急くあまりに、過度に逸脱した行為をすると、証拠と認められないばかりか、依頼者が慰謝料を反対に請求されるケースも考えられます。こうなってしまうと、証拠がない状態よりも事態が悪化しかねません。
また、プライバシーの侵害よりも、より深刻な事態になりうるのが不正アクセスです。
不正アクセス禁止法があるので、場合によっては刑事罰(3年以下の懲役または100万円以下の罰金)も考えられます。
しかし、どこからが不正アクセスかの判断が難しいでしょう。だからこそ、経験が豊かな弁護士に相談しながら証拠集めを行うことを強くおすすめします。
4、慰謝料はどうやって請求するのか?
慰謝料を請求する際に必要と思われる証拠をそろえた後、どのように慰謝料請求を行えばよいのでしょうか。
まず、あなたが慰謝料を請求できる相手は、「実際に不貞行為をしたあなたの配偶者と、あなたの配偶者が既婚者と知りつつ性行為を伴う交際をしていた不倫相手」です。
また、「1件の不貞行為に対する賠償請求」と解釈されるため、配偶者と不倫相手の両方それぞれに、多額の慰謝料を請求することはできません。
つまり、どちらか片方が十分な慰謝料をあなたに支払ったら、もうひとりに重ねて慰謝料を請求することはできないということです。
この2点を前提として、慰謝料請求の手順を解説します。
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(1)不倫の慰謝料の相場は?
慰謝料請求する場合の金額の相場は、大体50万から300万くらいといわれています。
あくまで相場であり、個々の経済状況や不貞行為の悪質度などによって、金額は大幅に増減します。
なによりも、まずは「離婚するか」「しないか」の選択によって、金額が大幅に増減します。離婚しないケースでは、損害が少なかったとみなされるため、慰謝料の金額は少なくなる傾向があります。
また、離婚する場合も、結婚してからの期間や養育する子どもの年齢などが、慰謝料額に大きく影響することになります。
また、不倫相手の方が配偶者の既婚事実を知っていれば、配偶者の交際相手に対しても慰謝料を請求できる可能性が高まります。 -
(2)慰謝料請求までの流れ
では、慰謝料請求の流れを簡単に説明します。
まずは話し合いとなりますが、そこで合意書を取りつけられなければ、裁判・調停に移ることになります。ここで離婚するケースと、離婚はしないケースがありますが、弁護士に相談いただければ、どちらでも依頼者が有利になるようアドバイスします。
合意書を取る必要性もありますし、離婚を選択したときは、離婚協議書を作成する必要が出ることもあるでしょう。養育費の請求や財産分与など、話し合って決めるだけでなく、決めたことを明確にしておく必要のある事項は多岐にわたります。
不貞行為の慰謝料請求だけでなく、離婚となれば、将来に影響する可能性が高い専門的なことも考え、決めていく必要があります。
周囲にあきらめを促されることもあるかもしれませんが、ぜひ、経験豊かな弁護士を頼ってください。
5、まとめ
配偶者の不倫関係が発覚したときには、確実な証拠集めが慰謝料請求に有効です。
ただし、証拠を集める際も、注意すべき点があります。証拠の集め方に悩んでいるときは特に、行動を起こす前に、弁護士に相談することをおすすめします。
証拠がないとひとりで悩んでいるよりも、まずはお気軽に問い合わせてみてください。
証拠がない状態からでも慰謝料を請求できるまでの方法を、ベリーベスト福岡オフィスの弁護士が、一緒に考え、アドバイスいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています