不倫相手や配偶者に社会的制裁を与えたい方へ|やめるべき理由3つ
- 不倫
- 社会的制裁
不倫相手や有責配偶者を許せず、自ら社会的制裁を加えたいと考えていませんか。しかし、あなた自身の手で社会的制裁を加えてしまうと、あなた自身がさらなるダメージを受けてしまうおそれがあります。その結果、あなた自身が得られるべき利益が得られず、場合によってあなた自身が損をしてしまうことでしょう。そのような事態は避けるべきです。
本コラムでは、不倫をした相手に対して社会的制裁を加えるリスクから、法的に適切な対応によって実質的に社会的制裁を与えられる可能性が高い方法などについて、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、社会的制裁とは?
社会的制裁とはどのようなものなのでしょうか。
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(1)社会的制裁の意味と効果
社会的制裁とは、何らかの問題行動を起こした人物に対して、法的手段によらずに制裁を加えることをいいます。たとえば、犯罪行為をした人物は、逮捕・起訴されて刑事裁判によって刑罰が言い渡されることになります。しかし、このような法的制裁だけではなく、犯罪者は、マスコミによる実名報道によって仕事や社会的地位を失ってしまうことがあります。これが社会的制裁と呼ばれるものです。
裁判で社会的制裁をすでに受けていることが認定されれば、前述の通り、たとえ刑事事件であっても処罰が減刑されることがあります。また、匿名報道であったのに実名を流出させるなど、社会的制裁を下そうとして起こした行動によっては、その行動を起こした方が処罰を受けることもありうる点に注意が必要です。 -
(2)不倫をした相手に対する社会的制裁とは
不倫の被害者の方は、信頼していた相手に裏切られたことによる恨みや憎しみから、相手に対しても同様の苦痛を与えたいと考えることがあります。不倫は、犯罪行為ではありませんが、このような負の感情を解消する目的で社会的制裁を加えようとしてしまうことがあるかもしれません。
不倫をした相手に対して社会的制裁を与えようとする方が起こしやすい行動の代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。- 不倫をした相手の職場に不倫の事実を伝える
- 不倫をした相手の配偶者に不倫の事実を伝える
- SNSなどで不倫をしている事実を公表する
- 社内不倫であれば、不倫相手に退職してもらう
2、社会的制裁は与えないほうがいい理由
不倫をした相手に対して社会的制裁を与えたいという気持ちも理解できますが、以下のような理由から、社会的制裁を与えることは控えた方がよいでしょう。
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(1)違法行為になる可能性がある
不倫相手の職場に対して、不倫の事実を伝えた場合には、不倫相手が自主退職に追い込まれてしまったり、転勤や異動など不利益処分を受けてしまったりする可能性があります。これによって、確かに不倫相手に対して、社会的制裁を与えることができるかもしれません。しかし、たとえ不倫が事実であったとしても、そのことを不特定多数の人に対して、広めてしまうと、相手の名誉を毀損する行為をしたとして、名誉毀損罪に問われる可能性があり、ひいては、名誉毀損罪が成立してしまうリスクがあります。
このような事態に陥れば、前科がついてしまうだけでなく、不倫相手から逆に損害賠償請求をされる事態になりかねません。 -
(2)受け取ることができる慰謝料が減る可能性がある
不倫をした配偶者および不倫相手に対しては、慰謝料を請求することが可能です。
しかし、不倫をした配偶者および不倫相手に対して、社会的制裁を与えたことによって、何らかの不利益を受けたという場合には、慰謝料の減額要素として考慮されてしまう可能性があります。
慰謝料請求によって、経済的な制裁を与える際の足かせになってしまうおそれがありますので、社会的制裁は控えたほうがよいでしょう。 -
(3)精神的にも新たなスタートを切りづらくなる
不倫をした配偶者や不倫相手に対する社会的制裁に集中していると、常に不倫をされたことを思い出す状態になってしまいます。その都度、不倫をされた当時の悲しい気持ちを思い出していると、精神的にも大きなストレスとなってしまうでしょう。
社会的制裁にとらわれていては、精神的に新たなスタートを切りづらくなってしまいます。したがって、慰謝料請求など法的に正当な権利を実現したあとは、できるだけ早く気持ちを切り替え、新たな生活をスタートすることをおすすめします。
3、不倫した相手に対して要求できるもの
不倫をした配偶者および不倫相手に対しては、以下のような要求をすることが可能です。
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(1)慰謝料請求
肉体関係を伴う不倫は、不法行為(民法709条)に該当しますので、慰謝料を請求することができます。慰謝料請求の相手は、不倫をした配偶者だけではなく、不倫相手にも請求することが可能です。
ただし、両者に対して請求することができるといっても、両者からそれぞれ満額の慰謝料を受け取ることができるというわけではありません。たとえば、不倫による適正な慰謝料額が200万円であった場合、不倫をした配偶者か不倫相手に対して、200万円を請求することができます。しかし、たとえば配偶者から200万円の支払いを受けた場合には、すでに満額の慰謝料を受け取っていることになりますので、不倫相手から慰謝料を受け取ることはできません。 -
(2)不倫関係の解消
子どもがいる場合など、離婚ではなく関係の修復を目指すケースは少なくないでしょう。この場合、不倫相手と不倫関係を継続していることは夫婦関係の修復にあたって大きな支障となります。そこで、不倫相手に対して、不倫関係の解消を求めることができます。
不倫相手が不倫関係の解消に合意をした場合には、不倫相手との間で合意書を作成して、その内容を明記しておくようにしましょう。その際には、再度不倫をした場合の違約金なども定めておけば、より効果的といえます。 -
(3)離婚
不倫をした配偶者との関係修復が難しいという場合には、離婚を検討することになるでしょう。不貞行為は、法定離婚事由ですので、不倫をした配偶者が離婚を拒否していたとしても、最終的には裁判での離婚が認められる可能性があります。
離婚をする場合には、慰謝料以外にも親権、養育費、財産分与などの離婚条件を取り決めるべきです。相手のことが許せないからといって、十分な話し合いをすることなくすぐに離婚をしてしまうと、本来もらえるはずのものがもらえなくなってしまうおそれが多々あるためです。
離婚をする場合には、離婚後の生活や離婚条件などを十分に検討・協議してから、離婚を進めることをおすすめします。
4、慰謝料請求を検討するときは弁護士に相談を
不倫の慰謝料請求を検討している方は、まずは弁護士にご相談ください。
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(1)適切な法的手段をアドバイスしてもらえる
不倫をされた方は、相手を許せないという気持ちから冷静な判断力を失ってしまい、相手に対して安易に社会的制裁を与えてしまうことがあります。しかし、社会的制裁の内容や程度によっては、違法な行為となる可能性もありますので、注意が必要です。
配偶者による不倫が発覚した場合には、ひとりで判断をするのではなく、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。相談を受けた弁護士は、適切かつ法的に取り得る手段についてのアドバイスが可能です。違法な社会的制裁によって不利な立場になってしまう事態を回避することができます。 -
(2)相手との交渉を任せることができる
不倫をした相手に対して慰謝料請求をする場合には、まずは、相手との話し合いによって解決を図るのが基本となります。しかし、当事者同士の話し合いではどうしても感情的になってしまい、スムーズな話し合いを進めることができません。また、不倫をした相手と直接話し合いをしなければならないというのは、精神的なストレスを感じる方も多いでしょう。
しかし、弁護士を代理人として立てれば、弁護士が不倫をした相手との交渉を進めます。冷静かつスムーズな話し合いを進めることができるだけでなく、不倫した相手と顔を合わせなければならないという精神的なストレスからも解放されることは間違いありません。
ひとりでの交渉に不安を感じる方は、弁護士のサポートを受けながら進めていくとよいでしょう。 -
(3)離婚にあたって適切な金額を受け取れるようサポートできる
離婚を決断した場合には、慰謝料請求だけではなく、財産分与や養育費なども決めていく必要があります。財産分与で適切な金額を受け取ることによって、離婚後の経済的な不安も解消されますし、子どもの将来にとっても適切な養育費を受け取ることが非常に重要となります。
財産分与や養育費の取り決めにあたっては、法律上のさまざまなルールがありますので、それらをきちんと理解していなければ適切な金額を受け取ることは困難です。弁護士のサポートを受けることによって、有利な条件で離婚を進めることができる可能性が高くなります。離婚をお考えの方は、まずは弁護士にご相談ください。
5、まとめ
不倫をした相手に対して、自分と同じ、もしくはそれ以上の苦痛を味わってもらいたいという思いを抱き、相手の職場や家族、さらにはインターネット上などで不倫の事実を公表するなどの行動に出てしまう方がいらっしゃいます。社会的制裁を与えたいと考える気持ちは理解できますが、最悪の場合、あなた自身に前科が付いてしまうなど、大きな不利益を被る可能性があるため、社会的制裁を与えるのは控えたほうが賢明です。
不倫をした相手に対しては、慰謝料請求をすることが可能です。慰謝料を請求することは、法的に認められた正当な権利ですので、金銭的な請求によってきちんと不倫の責任をとってもらうようにしましょう。
離婚や慰謝料請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスまでお気軽にご相談ください。親身になって対応します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています