浮気をして配偶者から高額な慰謝料を請求されていても減額できる方法とは
- 不倫
- 離婚
- 慰謝料
- 減額
厚生労働省が発表する平成29年の「人口動態統計(確定数)」によると、福岡市の人口千対離婚率は1.89で、全国の人口千対離婚率1.70よりも高くなっています。離婚の理由はさまざまですが、不貞行為による離婚は裁判でも認められていることでもあり、多くの割合を占めているでしょう。
突然、配偶者から「あなたが不倫をしたから離婚する」と告げられ、しかも多額の慰謝料を請求される立場に立ってしまったら、焦り慌てることになっても無理はありません。その慰謝料に対して、法外な大きさを感じている方もいることでしょう。
その場合、たとえ不貞行為をした有責配偶者であっても、慰謝料を減額もしくはゼロにできるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、不貞行為の離婚でも慰謝料を支払わなくていいケース
たとえ慰謝料を請求されても「支払わなくていいケース」があります。
あらかじめ知っておく必要があるでしょう。
-
(1)不貞行為の証拠がない場合
ご自身の浮気による不貞行為が原因だったとしても、それに証拠はあるでしょうか。
すでに「浮気をした」と伝えてしまっていても、裁判となったとき、裁判所が「不貞行為があった」と認める状態ではないケースもあります。
多くの場合、裁判所が基準とする不貞行為の境界線は、「肉体関係が伴う交際」だったかどうかです。そもそも、不貞行為があったことを証明する義務は、慰謝料を請求する側にあります。そこで、証拠の有無はチェックしておいたほうがよいでしょう。
相手が持つ証拠が、肉体関係が伴う交際であることを明らかにするものではないときは、まだ挽回できるチャンスがあるといえるためです。
ただし、肉体関係がなくとも、あなたの行為によって夫婦間の信頼関係が破たんしたことが認められれば、やはり慰謝料請求に応じなければならなくなる可能性があります。 -
(2)不貞行為の前に夫婦関係が破たんしていた場合
実際に不貞行為があったとしても、それがいつ、どのような状態で始まったかによっても、慰謝料請求に応じる必要性が変わります。
具体的には、あなたが不倫する前に婚姻関係が破たんしていると認定されれば慰謝料の請求は認められません。ただし、あなた自身が、婚姻関係が不倫を始める前に破たんしていたという立証する必要があります。
一般的には婚姻関係が破たんしていたとの立証は簡単なことではありません。
つまり、立証できなければ慰謝料を支払わなければならない立場になります。
たとえ別居中といえども、やはり浮気による慰謝料請求のリスクは高いと認識しておくべきです。 -
(3)不貞行為が時効だった場合
たとえ動かせない不貞行為の証拠があったとしても、時間が経ちすぎていて、慰謝料請求に応じる必要がないケースもあります。
そのような場合には以下の2種類あります。
「除斥期間」は慰謝料請求が可能な事件が起きたときから20年以内です。
他方、「消滅時効」は損害および加害者を知ったときから3年以内と定められています。
たとえば、請求されている不貞行為が20年以上前のできごとであれば「除斥期間」が適用され、慰謝料請求ができません。
また、不倫の事実及び不倫相手を知ってから3年以上たっていても「消滅時効」が適用されるので、慰謝料請求権は消滅しています。
このような消滅時効については、民法第724条において「損害および加害者を知ったとき」から進行すると定められているものです。もちろん、引き延ばすことも可能ですが手続きが必要です。
かつてしてしまった不倫について慰謝料請求されているときは、慰謝料請求権が既に消滅していないかについて確認してみてはいかがでしょうか。
2、不貞行為ゆえの離婚であっても慰謝料を減額できるケース
不貞行為が理由による離婚に伴い慰謝料を請求された場合、それが妥当な金額かどうかを精査する必要があるでしょう。ご自身が有責配偶者だからといって、言われるままに慰謝料を支払うことはありません。
提示された金額から減額してもらえるように交渉することをおすすめします。
-
(1)資産がないと証明する
ない袖は振れないという言葉がありますが、その言葉の通りに、実際ないお金を払うことはできません。交渉の段階であれば、本当に資産や貯蓄がない事実を示し、配偶者に諦めてもらうこともひとつの手でしょう。
ただし、ウソをつく、資産隠しを行うなどの行為はおすすめできません。
不当に支払いを免れようとしていたことが判明した場合は、それ自体が悪質とみなされ、慰謝料額が上乗せされる危険が高まります。
また、訴訟では最終的に支払えるかどうかは関係なく、諸般の事情を考慮して慰謝料額が定められます。したがって、資産がないことで減額を求める材料にできるのは交渉、または和解の段階に限られます。
冷静かつ誠実に対応し、早期解決を目指すことをおすすめします。 -
(2)誠意ある対応と誓約
たとえ不貞行為を根拠に慰謝料を請求したとしても、相手が本当に求めていることはお金ではなく誠意ある謝罪だった……というケースは珍しくありません。
なによりも有責配偶者自身が行ったことを認め、ひたすら謝罪することが慰謝料減額の第一歩となりえます。
場合によっては、慰謝料を請求しない代わりに、不倫相手との交際を確実に解消することを求めてくることがあります。その場合、きちんとした書面における誓約書を作成することになるかもしれません。
その上で、次回また同じような不貞行為があったら何々をしてもらうという条件を出さされることもあるでしょう。そうすることで当面の慰謝料を回避することができる場合もあります。
しかし、これはあくまでも双方が婚姻関係を望んだ場合に限られるでしょう。
3、離婚の慰謝料を減額する手順
離婚による慰謝料を減額する流れについて解説します。
-
(1)離婚の慰謝料相場を確認する
慰謝料を算定する要素としては、婚姻期間、年齢、有責行為の態様、お互いの有責の割合、当事者の資力や社会的地位、未成年の子どもの有無などが挙げられます。
特に、「有責行為の期間、回数、頻度、態様」 ということが考慮されることになるでしょう。
たとえあなたが有責配偶者であっても、たとえば相手方からDVを受けていたなど、双方に有責行為があるケースもあります。その場合は有責の相殺ができて、慰謝料は双方なしになる可能性もあるのです。 -
(2)話し合いから調停・裁判へ
まずは慰謝料について話し合いを行います。もし減額できる要素があれば、ぜひ主張してみてください。ただし、あなただけが有責配偶者であるため、場合によっては火に油を注いでしまう可能性があります。
冷静な話し合いができず、交渉が難航しそうなときは弁護士を代理人とすることによって早期に結論を出せるケースは少なくないでしょう。
慰謝料について話し合いがまとまらなかった場合、調停や訴訟で解決を図ることになります。特に訴訟では、自分の主張を裁判官に認めてもらうために、証拠を提出しなければなりません。
たとえば、浮気相手と一緒に写っている写真、浮気相手からのメールや手紙、暴力を受けケガをしたときの診断書、暴力を受けたときの状況の記録(メモ)、クレジットカードの請求などが考えられます。
ここで相手もまた有責配偶者であることを証明できなければ、慰謝料を減額できる可能性が出てきます。
4、離婚の慰謝料減額交渉を弁護士に頼むメリット
多額の慰謝料を請求されたときは、まずは弁護士に相談してください。
弁護士には守秘義務があるため、安心してお話しください。弁護士には包み隠さず事実をお伝えいただくことによって、より適切な解決策などのアドバイスを行うことができます。
相手は、取れるだけ取ろうとして、最初は大きな金額をふっかけてくる可能性もあります。たとえ、ご自身の不貞行為による離婚であっても、妥当な慰謝料の相場というものは存在するものです。それと照らし合わせて、現状請求されているものが、多すぎる場合は弁護士を通すことで、理論的に冷静に相手へ減額の交渉を仕掛けることができるでしょう。
いくら相手が多くの慰謝料を請求しても、その根拠となる証拠がないときに対応方法についてもアドバイスが可能です。場合によっては不法行為があったかどうかの判断も微妙になるケースもあります。
まずはひとりで悩まず、弁護士に相談してください。
5、まとめ
離婚の慰謝料には相場が存在はしますが、個別ケースによって妥当な慰謝料の額は大きく変化します。相談者が請求されている請求額が妥当なのかだけでも、弁護士に相談することで安心できるはずです。
法外な慰謝料請求をされたときは、ひとりで悩まずベリーベスト法律事務所 福岡オフィスで相談してください。状況を顧みて適正かどうかなどのアドバイスをするとともに、減額交渉に対応するなど、あなたの悩みを解決できるようサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています