夫と離婚せずに不倫相手へ慰謝料請求したい! 慰謝料請求の手続きと相場は?
- 不倫
- 離婚
- 不倫
- 慰謝料
小説やテレビドラマ、映画などでおなじみの「不倫」。最近では、ワイドショーでも芸能人の不倫についてよく報道されています。しかし、現実に自分の夫が不倫をしていたら「絶対許せない!」と感じると思います。実際、不倫が原因で離婚してしまう夫婦は少なくありません。
その一方で、「今後の生活や子供のことを考えると離婚はできない」という声もよく聞きます。「子供や生活の事を考えると離婚はできないけれど、夫と不倫相手との関係を絶つために、不倫相手を痛い目に遭わせたい!」と思われることもあるでしょう。
そんな妻にとって、「不倫慰謝料の請求方法」はとても興味のあるテーマだと思います。また「離婚しない場合、慰謝料はどれくらい取れるのか」というのも、気になる点ではないでしょうか。
そこで今回は、離婚しない場合の慰謝料請求の方法と、注意点や慰謝料の相場について、離婚・男女問題に詳しいベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚しなくても慰謝料請求できる?
不倫が原因で離婚する場合、離婚する夫や夫の不倫相手に慰謝料を請求するのが一般的です。
では夫と離婚しない場合でも、慰謝料請求することは可能なのでしょうか?
結論からいえば、可能です。
そもそも慰謝料というのは法的には「損害賠償」です。不倫という「不法行為」によって被害を受けた妻は、夫と離婚するかしないかに関係なく、精神的な苦痛の代償として慰謝料を請求する権利があるのです。
2、慰謝料請求の相手は夫? それとも不倫相手?
ここで問題になるのが、慰謝料を請求する相手です。
法律的には、不倫は「共同不法行為」、つまり夫と不倫相手が共同で行なった加害行為なので、どちらにも責任があり、どちらに対しても慰謝料を請求できます。
といっても夫婦が離婚しないのであれば、妻が夫から慰謝料を受け取ったところで結局は家庭内(夫婦間)でお金をやりとりしているだけであり、損害賠償としてはあまり意味がありません。
このような場合は、やはり夫の不倫相手に慰謝料を請求するのが自然でしょう。
3、慰謝料請求の流れ
不倫慰謝料請求は、以下のような流れで行います。
それではそれぞれの手順について、詳しく見ていきましょう。
-
(1)不倫の証拠を集める
不倫慰謝料請求をする際に1番重要なのは、「不倫をしていたという事実を示せる明確な証拠」を、どれだけたくさん集められるかという点です。
慰謝料は「不法行為に対する損害賠償」ですから、請求の前提として、まずは「実際に不倫の事実があった」ことを証明しなければなりません。
・ すべての「不倫」が慰謝料請求の対象ではない
「不倫」というのは、人によって解釈に幅のある言葉です。
例えば夫が他の女性と2人きりでディナーをしたり、親しげにLINEでチャットしたりしただけで不倫と感じる人もいれば、セックスまで発展した状態を不倫と考える人もいます。
実は、法律には「不倫」という言葉はありません。法律上、そして裁判の場で不倫に相当する言葉は「不貞行為」といいますが、厳密には一般の感覚で不倫と考えられる行為の一部は不貞行為とはされません。
・ 必要なのは「不貞行為」の証拠
判例によると、基本的に不貞行為とされるのは「配偶者のある人が配偶者以外と肉体関係を持つ」場合です。
つまり裁判で慰謝料請求をするには、相手が夫について「配偶者があると知っていた、もしくは知ることができた」ことと、「肉体関係を持った」ことが必要になります。
もちろん当事者たちが素直に不貞行為を認めれば問題ありませんが、慰謝料請求の場面では「既婚者とは知らなかった」「肉体関係はない」といった主張をしてくるケースも少なくありません。
そうした主張を否定して慰謝料請求を有利に進めるために、事前に証拠を集めることが重要なのです。
・ 具体的な証拠について
「配偶者があると知っていた」決定的な証拠としては、妻のことを話題にするなど、結婚していることを前提にした言葉の入ったメールやチャットの記録、電話の音声などがあります。
例えば、夫が普段から左手薬指に指輪をはめていた場合は有力な証拠になるでしょう。
結婚式に不倫相手も参加していた事実などがあれば、「配偶者があると知っていた」決定的な証拠になりえます。さらに夫と不倫相手が同じ職場で上司と部下の関係にあれば、「相手が既婚者かどうか知ることができた」と一般的には考えられます。
「肉体関係があった」決定的な証拠としては、2人でラブホテルに入っていく、もしくは一緒に出てくる様子が写った写真や動画があります。1人暮らしの相手の家で、2人が長時間一緒にいた場合も同じです。
さらに、本人が不倫を告白している書面なども、かなり有力な証拠になるでしょう。
一方で、一緒にビジネスホテルや普通のホテルなどに出入りしている様子は、それだけでは証拠として弱いですが、他の証拠と組み合わせて有力な証拠とすることも可能です。
いずれにしても、不倫相手が「夫が既婚者であることを知っていたという事実」と「夫と肉体関係があったという事実」を証明できる証拠を、どれだけ集められるかが慰謝料請求のポイントです。 -
(2)書面で慰謝料を請求する
証拠が集まったら、相手に慰謝料請求の意思表示をします。
これは口頭ではなく「内容証明郵便」を使って行なうと良いでしょう。
内容証明郵便というのは郵便局が第三者として郵送の事実と内容を証明してくれる特殊な郵便です。不倫相手に慰謝料の請求をした際、「届いていない」「そんなことは書いてなかった」といった言い逃れを防げるため、弁護士もよく利用しています。
また相手が内容証明郵便に慣れていなければ、手紙が届くだけで精神的なプレッシャーを与えることもできます。普通の手紙は簡単に無視できても、内容証明郵便はなかなか無視しにくいものです(もちろん人によりますが…)。
この時点で相手が請求内容を認めれば、これで決着に向かうでしょう。ただし、後から「言った、言わない」というトラブルにならないよう、示談書はしっかり作成するようにしましょう。 -
(3)調停や裁判を申し立てる(相手が応じない場合)
内容証明郵便を送った相手が請求を無視したり、減額を要求したりして金額が折り合わない場合などは、調停や裁判の手続きを行ないます。
・ 調停について
調停というのは、調停委員が間に入った話し合いです。
話し合いがまとまれば調停調書(判決と同じ強い効力があります)が作成されます。
調停の手続きには特に専門知識などは必要ないため、弁護士に依頼しなくても請求者が自分で行ないやすい(そのぶん費用を節約できる)のがメリットです。
ただ、弁護士に依頼した場合と比べて交渉力は弱まるのが普通ですし、いくら第三者が間に入るとはいえ、そもそも相手がまったく話し合いに応じようとしない場合は調停での解決はあまり期待できないのも事実です。
・ 裁判について
裁判では、当事者の主張や提出された証拠をもとに、裁判官が「判決」という形で慰謝料の有無やその金額を決定します。
裁判の過程では離婚の証拠が「公開」されますし、親族や職場など身近な人たちに不倫の事実を知られる可能性もあるため、相手に与えるプレッシャーは相当なものです。
また判決が出れば、相手の意思にかかわらず預金口座や給料の差し押さえによって、強制的に慰謝料を支払わせることも可能です。
ただし裁判は示談と比べて時間がかかりますし、裁判官の心証によって結論が変わり、最終的な慰謝料金額を予測しにくいというデメリットもあります。
このため実際の慰謝料請求の現場では、「裁判を起こす」という構えをちらつかせながら、示談交渉を有利に進めるための方便として使われることも少なくありません。
・ 裁判を起こす場合には、時効に注意
不倫慰謝料請求には、不倫の事実と相手を知ったときから3年という時効があります。
不倫されてから5年やそれ以上の期間が経過していても、不倫の事実と相手を知ったときから3年以内であれば慰謝料請求は可能です。
また、不倫慰謝料請求の時効には、「中断」という制度があります。
時効が中断されると、それまで進行してきた時効期間がなかったことになり、時効がある程度進行していてもまた新たに3年が経過しない限り、時効が完成しなくなります。
ただし、不貞行為があったときから20年が経過してしまったら、不倫の慰謝料請求の権利消滅を防ぐ手立てはなくなります。とはいえ、最大20年までは慰謝料請求期間を延ばせるため、時効の中断は非常に有効な手段と言えます。
もし裁判による解決も考えているのであれば、あらかじめ時効のことも計算に入れた交渉をするようにしましょう。
4、離婚しない場合、慰謝料の相場はどれくらい?
不倫の慰謝料の金額には特に決まりがありませんが、過去の様々な判例をもとに、おおよその相場は存在します。もちろん、もし示談でお互いに同意できるなら100万円でも1000万円でも構いません。
しかし、示談金額が折り合わない場合や、相手が慰謝料の支払い自体を認めようとしない場合は、裁判の判決によって相場の金額に落ち着くことが多いでしょう。
一般に、離婚しない場合の慰謝料の相場は「50万円〜100万円程度」です。具体的な金額は当事者の様々な事情を考慮して決定されます。
例えば、不倫期間が長期間に渡っているとか、妊娠していたなどの事情があれば、慰謝料額は高くなる傾向にあります。
また、当事者や被害者の資産状況や収入、当事者の社会的地位、被害者の受けた精神的苦痛なども影響します。
ちなみに不倫が原因で離婚する場合は、慰謝料の相場は100万円〜500万円と大幅に高くなります。
5、離婚しないで慰謝料請求するメリット・デメリット
離婚しないで夫の不倫相手に慰謝料を請求する目的は、主に相手に「思い知らせる」といった懲罰的なものでしょう。
メリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 相手に金銭的・精神的なダメージを与える
- 夫と不倫相手の繋がりを切る
- 関係が再発しないように牽制できる
一方で、以下のようなデメリットも挙げられます。
- 不倫相手と接触しなければならない
- 夫と不倫相手が同じ職場にいる場合、以後の仕事がやりにくくなる
- 夫の支払い義務を免除したとしても夫が不倫相手から求償される(夫の負担分を請求される)可能性は残る
現実には「夫の共同負担分」を考慮しながら相手への請求額を調整するのが一般的ですが、慰謝料請求によって夫にも負担がかかり、余計に夫婦仲がぎくしゃくする可能性もあるため、配慮しながら交渉を進める必要があります。
6、不倫相手への慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
不倫の被害者である妻にとって、不倫をした夫とその不倫相手を許せないというのは当然の気持ちです。
様々な事情で離婚できない場合でも、夫の不倫相手への慰謝料請求という手段で少しでも気持ちを和らげることができるなら、行動する価値は十分にあるでしょう。
しかし、1人で不倫相手に慰謝料請求をしても、証拠集めや交渉が難航したり、相手が言い逃れをしたりしてなかなか慰謝料請求の手続きが進まないということも考えられます。
また、当事者同士が直接交渉すると、お互いに感情的になってしまい、さらに話がこじれてしまう可能性もありますし、何より自分1人で直接不倫相手と戦うことは、精神的にも非常に負担が大きいでしょう。
「自分1人だけで不倫相手と交渉するのは不安…」と感じましたら、今後の方針について離婚・男女問題に詳しい福岡オフィスの弁護士へご相談ください。
離婚・男女問題について経験豊富な弁護士が、証拠の集め方から不倫相手への効果的な慰謝料の請求手続きまで、しっかりとサポートいたします。
弁護士が慰謝料請求の交渉・手続きを行ないますので、不倫相手と直接対面したり、交渉したりする必要もありませんので精神的な負担も軽く済みます。
調停・裁判になった場合でも、法律のプロが有利な条件で解決できるように、尽力いたします。
「不倫相手から何としても慰謝料を勝ち取りたい!」と思ったら、弁護士へご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています