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ストックオプション制度とは? 企業が導入する前に知っておくべきこと

2021年10月28日
  • 一般企業法務
  • ストックオプション制度
ストックオプション制度とは? 企業が導入する前に知っておくべきこと

福岡市は、開業率日本一を誇る市です。起業したばかりの会社は少しでも優秀な社員や社外行動人材を獲得する必要があるケースが少なくありません。

そのため、ストックオプション制度の導入を検討されている企業は少なくないようです。しかし、ストックオプション制度の導入には会社法をはじめとするさまざまな法的知見が必要であり、専門家の知見を得ながら進めることが一般的です。

そこで本コラムでは、ストックオプション制度の概要と導入に向けたステップについて、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「福岡市経済の概況」令和2年9月)

1、ストックオプション制度とは

まずは、ストックオプション制度の基礎について解説します。

  1. (1)ストックオプション制度とは?

    ストックオプションとは、将来の一定期間内にあらかじめ定められた一定の価格(権利行使価額)で、一定数の自社株式(あるいは親会社株式)を購入することが可能な、会社法第2条21号に規定する「新株予約権」の一形態です

    一般的にストックオプションとは、「役員や従業員に会社の業績を伸ばすこと、すなわち株価を上げるための努力へのインセンティブとともに、人材の採用や社外流出防止策として活用するために、自社の株式権利を無償で与える新株予約権のことをいいます。

    ストックオプションを付与された役員および従業員は、将来株価が上昇した時点で権利行使をし、会社の株式を取得したうえで売却することにより、株価上昇分の利益を得ることができます。たとえば、権利行使価額100円のストックオプションを付与されて現時点の株価が500円であれば、権利を行使して500円で売却することにより、差額の400円をキャピタルゲインによる利益として得ることができるのです。

    近年は、権利行使価格を「1円」とするストックオプションもあり、これは事実上の株式を無償支給または譲渡制限付株式を支給するのと同様の効果があります。

  2. (2)ストックオプション制度が向いている会社とは?

    ストックオプションを付与された役員または従業員にとって、権利行使により確実に利益を得るために重要なことは株式に流動性があること、つまり権利行使をして取得した株式をいつでも売却できるということです。

    この観点から、ストックオプション制度の導入が向いている会社は上場企業、あるいは近々上場を予定している会社といえます。

2、ストックオプションの種類

ストックオプションには、主に「株式報酬型ストックオプション」、「業績連動型ストックオプション」、「有償新株予約権」の3種類があります。以下でその概要をご説明します。

  1. (1)株式報酬型ストックオプション

    株式報酬型ストックオプションとは、文字通り株式を報酬とするストックオプションのことです。

    新株予約権の権利行使価額を低価格(1円が一般的)に設定することで、株式そのものを報酬として付与することと同じ経済効果を付与者に与えるものを指します。ストックオプション制度のは権利行使価額である1円と付与時点の株価との差額について、ストックオプションを付与された時点において報酬として受け取ったと考えることができるのです。

    しかし、権利行使時点までの株価の上昇や下落が受け取る報酬に直接反映されることになります。

  2. (2)業績連動型ストックオプション

    業績連動型ストックオプションは、以前から広く用いられているストックオプションです。通常は税制適格要件を満たす形で発行されることが多く、税制適格ストックオプションとも呼ばれています。

    業績連動型ストックオプションは、権利行使価額を付与時点の株価以上に設定し、権利行使時点までに付与時点よりも株価が上昇した場合のみ、権利行使時の株価と権利行使価額との差額を報酬として受け取ることができます

  3. (3)有償新株予約権

    新株予約権を役員や従業員に対し有償で発行する方法です。新株予約権は時価で発行されるため、新株予約権を報酬として発行するストックオプションとは厳密には異なるかもしれません。しかし、付与後の株価の上昇が付与者にとって利益となる意味では、役員や従業員に対するインセンティブプランの一環であると考えられます。

3、ストックオプション制度のメリット・デメリット

ストックオプション制度の導入にはメリットもあれば、デメリットもあります。以下ではストックオプション制度のメリット・デメリットについて解説します。

  1. (1)ストックオプション制度のメリット

    ● インセンティブ効果……ストックオプションが付与された人の利益は、自社の株価上昇と直接連動します。このため、会社業績向上に努めるというインセンティブ(動機付け)の効果が期待できます。

    ● 資金面の効果(報酬コストの低減)……ストックオプション報酬は、会社自身が付与対象者に直接現金を支払う必要がありません。したがって、株価を活用するストックオプション制度は、会社の資金負担を抑えた成功報酬制度とも言えるでしょう。

    ● 人材確保・流出防止効果……株価が上昇することにより、付与対象者に多額の報酬を獲得させることが可能です。これにより、優秀な人材の確保が期待できます。また、ストックオプション制度は一般的に権利確定期間があるため権利行使まで期間的な制約があることから、優秀な人材の流出を防止する効果を期待されています。

    ● アナウンスメント効果……ストックオプション制度を導入することによって、会社が自社の株価や業績を意識しているという経営姿勢をマーケットにアピールすることができます。これにより、個人株主だけではなく機関投資家による自社の株式への投資が期待できるでしょう。

  2. (2)ストックオプション制度のデメリット

    ● 従業員インセンティブ低下をもたらす可能性……社内規則などでストックオプションを付与される従業員の基準は適切に行う必要があります。これが曖昧となっていると、権利を付与されない従業員から不満の声が出る可能性があるためです。また、いつまでも権利行使ができない状態が続くと、ストックオプションを付与された従業員からの失望感を招く可能性があります。

    ● 株式価値の希薄化……時価より低い権利行使価格で新しい株式を発行することが、役員や従業員などの権利行使となります。これによって浮動株が増えるため、自社の株式時価総額が希薄化することになります

    ● 費用化による会計への影響……新しく発行するストックオプションは会社のキャッシュアウトフローをもたらすものではありません。しかし、ストックオプション制度を導入する会社には、その公正な価値を算定したうえで損益計算書に費用計上することが義務付けられています。これにより、自社の利益を圧迫することにつながります。

4、ストックオプション制度を導入する方法・手順

本項では、ストックオプション制度を導入するための方法および手順についてご説明します。

  1. (1)ストックオプション制度のスキームを構築する

    まずは、導入するストックオプション制度のスキームを構築します。ストックオプション制度は一度導入するとスキームの修正が難しいことも多いため、スキーム構築は外部の専門家などを交えながら慎重に行う必要があります

    スキームの構築にあたっては、今後の資本政策を十分に考慮しながら発行価額・発行済み株式総数に対する発行株数の比率・付与対象者・権利行使可能になるまでの期間などを検討することになります。

  2. (2)募集事項の決定

    会社法第238条第1項の規定により、ストックオプション制度を導入する企業は、発行される新株予約権の募集事項を決定するものとされます。

    決定が必要とされる募集事項は、以下のとおりです。

    • 新株予約権の内容および数量
    • 金銭の払い込みを要しない場合は、その旨
    • 新株予約権の算定方法および払込金額
    • 新株予約権の割当日および払込期日


    また、会社は原則として以下の区分により、募集要項の決定をしなければなりません。

    • 公開会社の場合……取締役会決議(会社法第240条第1項)
    • 公開会社で有利発行する場合……株主総会の特別決議(同238条第2項、240条第1項、309条第2項6号)
    • 非公開会社の場合……株主総会の特別決議(同238条第2項、309条第2項6号)
  3. (3)募集事項の通知・公告

    ストックオプションの募集事項を公開会社が決定し、取締役会決議で定めた場合、会社法第240条第2項および第3項の規定により、割当日の2週間前までに既存株主に対して募集事項を通知または公告をする必要があります。ただし、割当日の2週間前までに有価証券届出書や臨時報告書を提出している場合はこの限りではありません。

    また、会社法第240条第1項および会社法施行規則第54条の規定により、ストックオプションの申し込み予定者に対して会社は募集事項の通知が必要です。

  4. (4)引き受けの申し込み・割り当て・払い込み

    会社法第242条第2項の規定により、ストックオプションの引き受けの申し込みをする役員や従業員は、会社に対して氏名・住所・引き受けようとするストックオプションの数を記載した書面を提出します。

    そして、同法第243条第1項の規定により、会社は申し込みのなかからストックオプションの割り当てを受ける者および割り当てるストックオプションの数を決定し、申込者に通知します。

    有償発行の場合、会社の決定によりストックオプションの割り当てを受ける者は、同法第246条第1項の規定によりあらかじめ決められた払込期日または行使期間の初日の前日までに払込金額の全額を払い込まなくてはなりません

  5. (5)新株予約権の登記

    会社は、ストックオプションによる新株予約権の発行・行使・消却をした場合は、以下の期日までにその旨を登記しなければなりません。

    • 新株予約権の発行……割当日から2週間以内
    • 新株予約権の行使……行使があった日の属する月の末日から2週間以内
    • 新株予約権の消却……消却の効力が生じた日から2週間以内
  6. (6)新株予約権原簿の作成

    会社法第249条の規定により、会社は新株予約権の発行後遅滞なく、新株予約権原簿を作成しなくてはなりません。新株予約権原簿には、新株予約権の番号、内容および数、新株予約権者の氏名および住所が記載されます。

5、ストックオプションの「税制優遇措置」について

租税特別措置法第29条の2および租税特別措置法施行令第19条の3の規定により、以下の要件を満たしたストックオプションは「税制適格ストックオプション」とされます。

したがって、以下のケースでは、権利行使し取得した株式の売却時点まで課税を繰り延べることができます

  • 無償発行であること
  • 付与対象者は会社および子会社の取締役または使用人である個人、またはこれらの相続人であること
  • 権利行使期間は付与決議後、2年を経過した日から10年を経過する日まで
  • 権利行使者の権利行使価額年間合計額が1200万円以下であること
  • 1株あたりの権利行使価額が、ストックオプション付与契約時の株式時価以上であること
  • 当該ストックオプションに譲渡禁止規定が付与されていること
  • 権利行使により取得した株式が証券会社などに保管委託されること
  • 会社が新株予約権の付与に関する調書を、その付与をした翌年1月31日までに本店所在地の所轄税務署長あてに提出していること


また、ストックオプションが業績連動型であり、かつ本店所在地の所轄税務署長あてに「事前確定届出給与」の届け出を行うことによって、会社もストックオプションに関する費用の一部または全部を損金算入することができます。

6、まとめ

円滑にストックオプション制度を導入するためには法的な知見を持つ弁護士、また、会計・税務の専門家である公認会計士や税理士のサポートを得ることが重要です。

ベリーベスト法律事務所では、法務的なアドバイスだけではなく公認会計士や税理士とのネットワークを活かし、ストックオプション制度を導入するためのサポートをワンストップでご提供することが可能です。

ストックオプション制度の導入をご検討の際は、ベリーベスト法律事務所 福岡オフィスまでご相談ください。あなたの会社のために、ベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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